中国新世代の“最初で最期の最高傑作”「象は静かに座っている」予告完成 タル・ベーラらのコメントも
2019年8月21日 08:00

[映画.com ニュース] 第68回ベルリン国際映画祭国際批評家連盟賞、最優秀新人監督賞スペシャルメンションを獲得した中国映画「象は静かに座っている」の日本公開日が11月2日に決定し、ビジュアルと予告編がお披露目された。あわせて、音楽家・坂本龍一、タル・ベーラ監督、「東京フィルメックス」ディレクター・市山尚三氏の応援コメントも到着した。
中国、炭鉱が廃れ世間に見放された小さな田舎町を舞台に、年齢、性別の違う4人のある1日を描く。作家としての顔を持つ29歳の新鋭フー・ボーが、自身の著書「大裂」の中でも最も気に入っているという短編「象は静かに座っている」を映画化。本作完成後、フー・ボーは自ら命を絶ち、生涯ただひとつの“命を懸けた”最初で最期の最高傑作となった。
意味深なタイトルが大胆にあしらわれたビジュアルは「29歳で命を絶った若き才能、デビュー作にして遺作。世界を熱狂させた魂の234分」というコピー、交わらない方向へ視線を投げる登場人物たちを活写。予告編は、中国の人気バンド「ホァ・ルン」の音楽に呼応するように、ある想いを抱えたブー、リン、チェン、ジンを順に映し出す。また、規格外の長尺、挑戦的な長回し、日中の自然光にこだわったライティングなど、細部に渡るこだわりを垣間見ることができる。
フー・ボーが師と仰いだベーラ監督は「私の生徒であり、私の友、私の家族である君がいないことを残念に思う。何百人もの中国人監督が私と働きたいと出願してきたが、彼に会い、すぐに心が決まった。一切の迷いもなく! 彼は気品に溢れ、共に素晴らしい仕事をすることができた。彼の目には並々ならぬ、強い個性が表れていた。クソ! 彼をちゃんと守れなかったことに、私は責任を感じている。残念でならない」と胸中を吐露。「彼は、両方の端から彼というろうそくを燃やしていたのだ。今ここにあるすべてを手に入れようとした。私たちは彼を失ったが、彼の映画は永遠に私たちと共にある」と語っている。
「この映画のペースが好きだ。4時間近くと長い映画だが、無駄なショットがあった記憶はない。昨今、目にすることの多い、金満で IT先進国で資本主義的な中国とは全く違った日常が映し出される。その暗いけれど、甘く懐かしいトーンが好きだ」と絶賛する坂本は、劇中の音楽に関して「歪んだギターを中心に、昔聴いたことのあるチープなシンセのシンプルな絡み。20歳台の若い監督が作ったのに、とてもノスタルジックだ。好きな映画だ」と話す。一方、市山氏は「これほどの才能ある監督の新作をもはや見ることができないという事実は悲劇でしかない が、一つ一つのショットに刻み込まれた魂の記録とも言うべき本作に心揺さぶられないものはいないだろう」とコメントを寄せている。
「象は静かに座っている」は、11月2日から東京のシアター・イメージフォーラムで公開。
(C)Ms. CHU Yanhua and Mr. HU Yongzhen
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