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蜷川実花、藤原竜也&玉城ティナと挑んだのは初の男性主演作「挑戦する面白さ」

2019年7月6日 12:00

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“殺し屋専用のダイナー”を舞台にした異色サスペンス
“殺し屋専用のダイナー”を舞台にした異色サスペンス

藤原竜也蜷川実花監督が初タッグを組み、平山夢明の小説を映画化した「Diner ダイナー」が公開された。“殺し屋専用のダイナー”を舞台にした異色サスペンスで、元殺し屋の天才シェフ役で藤原が主演、ウェイトレスのカナコを玉城ティナが演じる。グロテスクな殺人ダイナーで巻き起こる、阿鼻叫喚、見世物小屋的な“殺しのゲーム”が描かれた原作を、蜷川監督ならではの映像表現で、キッチュで美しい極上のエンターテインメントに仕上げた。自身にとって初の男性主演作に「今までと違うものに挑戦する面白さがあった」と話す蜷川監督と、藤原、玉城が撮影を振り返った。(取材・文/編集部、写真/松蔭浩之

元殺し屋の天才シェフ、ボンベロが店主をつとめる殺し屋専用の食堂「ダイナー」。日給30万円の怪しいアルバイトに手を出したばかりに闇の組織に身売りされてしまった少女オオバカナコは、ウェイトレスとして働くことに。ダイナーには、ひと癖もふた癖もある殺し屋たちが次々とやって来る。

--「さくらん」(07)「ヘルタースケルター」(12)と前2作はたくましく生きる女性の物語でした。今作は元殺し屋の男性が主人公で、物語も現実離れしたグロテスクなおとぎ話のようです。
蜷川「これまでは私が映像化したいと希望したのですが、今回はプロデューサーの方にオファーをいただきました。自分ではたどり着けなかった作品だと思います。ちょうど自分の得意なジャンル以外のものをやってみたいと思っていた時期だったこともあり、今までのものとあまりにも違うから、これは逆に面白いのかも、と思えて。原作からかなり変えている部分もありますが、男性主演で今までと違うものに挑戦する面白さがありました」
「原作に力があるので、私がやったらどうなるのか、果たしてできるのか、と心配な部分もありましたが、ボンベロを竜也が演じてくれるとなって、これならできるという確信に変わりました」
--藤原竜也さんはお父様の蜷川幸雄さんとゆかりのある俳優さんですね。
蜷川「父との関係がある中で、竜也と仕事するのって、ある種の緊張感があるんです。絶対に下手なことはできない。一緒に組む限りは、最高のものを作りたい。私にとって竜也と何かを一緒にやるということは、スペシャルな意味を持つので、ものすごくプレッシャーにはなりました。一方、絶対良いものにしなくちゃいけないという緊張感がいい意味で作用したと思います」
--藤原さんにとって、映像作品で実花さんと仕事をすることは、どのような経験になりましたか?
藤原「感慨深いというか、縁を感じると言うか。僕は、実花さんに『竜也一緒にやろう』と言われたら断る理由がありません。実花さんと一緒に仕事をすることに意義があるんです。演劇で蜷川(幸雄)さんとやらせていただいていた時に、写真を撮ってもらったことはありますが、一緒に作品を作り上げたことはなかったので、面白いタイミングで声を掛けてくださったな、と。そうして本を読んでみたら、ハチャメチャな話。もう、現場に入ってみないとわからないなという感じで撮影に臨みました」
「しかし、正直なところ、本当にこのボンベロという役がわからなくて。これは、やっちまったな……とも思ったんですが。だからこそ、真面目に本と向き合って集中力を継続していかないと、太刀打ちできない現場だなと思いました。スタッフも一流の人たちが揃っているのに、主演の僕がボンベロがわからない。そうしたら、実花さんが初日に『私もわからないところがあるから、いろいろ試してみない? 5回でも10回でも撮ってみて、最後に編集で繋ぐこともあり?』と提案されたので、何通りも撮らせてもらったんです。それが、救われましたし、楽しかった。そういうやり方をしたのが、今回は正解だったのではないかなと思います」
蜷川「そう、ボンベロは結構受けの芝居が多いから。『俺はここの王だ!』って言うシーンを、初日に撮ったんです。何パターンも撮って、いちばん振り切ったものを使いました。正直私もどこが正解かわからない役だったので、素直に何度もやってみたスタートでしたね」
--豪華なセットや役者陣の特殊メイクなど、視覚的に凝った映像の中で、藤原さんのアクションシーンでガラリと空気が変わりますね。
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藤原 「僕の集中力すごかったでしょう(笑)。12時間雨に打たれたりもしているんです。真矢ミキさんと真琴つばささんと対峙して、怪我させちゃいけないという緊張感もあって。ああいうアクションも初めてで。あのひと月は本当に大変な現場でした。撮影自体はいいスタッフさんが揃って楽しかったのですが、テンションのキープだとか撮影中は苦しさの方が多かった。実花さんは大変な状況でも顔に出さないで進めていくので、自分もちょっと突っ込みどころがあっても、ぐっと飲んで何も言わずに最後までやろう。と。だから、大変でしたね……。出てくる役者もスタッフもいい意味でバカばっかで(笑)。メチャクチャで突き抜けてる現場でした」
蜷川「そうそう、ゲストの人たちが、『オラー!やるぞー!』って思う存分やり散らかしていくから。『普段こんなことできないから楽しい!』って皆、最後さわやかな顔で去っていきましたね(笑)」
--玉城さんは、ここまで出ずっぱりの映画作品は初めてですね。どのような気持ちで撮影に臨みましたか?
玉城「そうですね、撮影に入る前にカナコのキャラクターを監督と一緒に作り上げていったんですけれど、役の心境と私自身の心境が妙にリンクすることもあったので、難しすぎることはありませんでした。最初は、ものすごくキャリアの長い役者さんの中に放り込まれて、どういう風に、負けないように、闘わなきゃという気持ちでいたのですが、撮影が始まってからは、常に受身受身でどれだけ素直な気持ちで受けられるかという気持ちで臨んでいました」
蜷川「ドキュメンタリーのように順を追って撮れたので、カナコがダイナーに放り込まれたのと同じように、ティナがキャラの濃い役者陣に揉まれていく、すごくその感じが出ていたと思います。絶対に彼女だったらできるとわかっていたので、プロデューサー陣に『玉城ティナと心中させてください』と言って、カナコ役を彼女に決めさせてもらいました。それが見事に、いろんな人に引っ張ってもらえて。竜也と対峙しているところも素晴らしい。ティナがいろんな人の力を借りながら花開いて、2人でちゃんとそこにたどり着けたのがよかったなと、思います」
--玉城さんは、今回の蜷川さんの現場で何を学びましたか?
玉城「1カ月半そこで生きていて、私の日常になっていました。蜷川さんがいちばんの味方でいてくれて、私が落ち込んでいるときも声を掛けてくださった。完成して、蜷川作品のひとつのパーツとしていられたことを誇りに思います。藤原さんからは雰囲気だったり現場での佇まいをこっそり見ながら、色々な事を学ばせていただきました」
--出来上がった作品を見ての感想は?
藤原「実花さんだからこそできた作品。圧倒的に画に力がありますし、編集もカット割りも素晴らしいです。だからこそ、僕が最初読んだだけでは良し悪しが入ってこなかったストーリーに説得力を持たせられていて、すごいなと感じました」
玉城「蜷川さんの『さくらん』『ヘルタースケルター』を好きで見ていたので、蜷川作品のなかに、出ていることにドキドキしながら見ていました。カナコとして、演技ができたことがこれからの人生の糧になると思いました」
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--この「Diner ダイナー」を皮切りに、映像の公開待機作が2作控えています。今作の経験がほか2作で活かせましたか?
蜷川「ずっと映像の仕事やりたいと思っていたら、たまたま3作まとめて話がきたんです。ものすごくキャストにもスタッフにも恵まれた作品が3作続いて、またやりたいという気持ちでいっぱい。『Diner ダイナー』は編集し終わって、“着地してよかった!”という気持ちです。何でもありの現場だったので、よかった、やっとたどり着いたという感じ。いろんなことが奇跡的に上手くいった作品です」
「『Diner ダイナー』は掛け算で作った作品ですが、『人間失格 太宰治と3人の女たち』(9月13日公開)は、反対にしっとりとした日本映画という感じ。Netflixの『FOLLOWERS』はその2作があったので乗り切れて、1作1作が次のステップになっている感じはあります。なにより、『Diner ダイナー』は竜也と仕事ができたのがいちばん大きい。ボンベロは絶対に竜也じゃなきゃできなかったと思うので、本当に私は助けてもらいました。ティナは絶対に守ろうと思っていて、それがきっちり花開いて、皆さんに褒められてうれしい。また2人と面白いものができたらなと思っています」

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