高良健吾、30代最初の主演作で体得した収穫と課題 “活動屋”の魂を追い求めて…

2019年4月10日 16:00

取材に応じた高良健吾
取材に応じた高良健吾

[映画.com ニュース] 「久しぶりに、ちゃんばら映画を撮りたいと思っているんだ。目力のある、若手の俳優が主演のね……」。2014年9月、京都某所で煙草をくゆらせながら、名匠・中島貞夫監督が筆者にこぼした一言である。あれから4年半、84歳になった“活動屋(映画人の意)”が万難を排し、実に20年ぶりの新作として完成させた「多十郎殉愛記」が封切られる。主演として中島組の愛情を一心に浴び、現場に居続けた高良健吾に話を聞いた。(取材・文/編集部、写真/根田拓也)

過去5年間の出演映画は15本(アニメ映画の声優も含む)、銀幕デビューからだと優に50本を超えるキャリアを誇る高良だが、現在をもってしても一切の慢心はない。それどころか、演じることにどこまでも貪欲で「もっともっとよくなりたいんです。僕はその事ばかり考えて生きているし、演じるということを忘れることができないし、どうしたらよくなるかを常に考えています」と真摯な眼差(まなざ)しを注ぐ。さらに、「何がよいのか知りたい。それって役によって違うだろうし、現場によっても違うだろうし、年齢によっても変わってくると思います。これからもずーっと探し続けるんでしょうね。技術的なものだと思う瞬間もあるし、そうじゃないと思う瞬間もある。ただ、自分で一度その道を通ってみたいんですよ」と胸中を明かす。

「木枯らし紋次郎」シリーズ、「まむしの兄弟」「真田幸村の謀略」など64本の劇映画を撮り続けてきた中島監督だが、「極道の妻たち 決着」(1998)以降は、京都で後進の育成に尽力してきた。そんな中島監督を突き動かしたのが、冒頭の言葉にあるように「京都撮影所の伝統であるちゃんばらを、次世代に伝えたい」という熱い思いだった。

高良も、その思いに呼応するかのように出演を決意し、多忙なスケジュールを調整しながらクランクイン2カ月前に京都入り。連日の猛特訓に励み、マンツーマンの稽古に飽き足らず、エキストラの稽古にも参加し、中島監督を感動させたという。

「僕はラッキーです。監督の現場に参加できたわけですから。監督の作品は見ていましたが、もう一度勉強しようと見直しました。著書である『遊撃の美学 映画監督中島貞夫』を読むことで、京都・東映・太秦の歴史を学ぶこともできました。これは大きかったんです、実は。ここで生きてきた人たちのことを知ることができたわけで、考えていた以上のことを学べました」

映画は、幕末の京都を舞台に、長州を脱藩して小料理屋・満つやの用心棒をする清川多十郎(高良)、好意を寄せる満つや女将のおとよ(多部未華子)、腹違いの弟(木村了)が三者三様の思いを胸に、多十郎の捕縛に動き出す京都見廻組と死闘を繰り広げる姿を描く。

30代に入って最初の主演作となった高良が得た役どころは、鬼神のような強さを持て余し、大義も夢もなく無為に過ごしている脱藩浪士。時代劇の経験はあったが、今作を経て課題に気づかされたようだ。

「時代劇って、やればやるほど多くのことを感じてしまいますね。言い訳するわけではないんですが、僕は時代劇初心者。どれだけ時代劇を見ていても、現場に立てば初心者なんです。だからこそ今作を見たとき、自分自身に伸び代を感じたんです。当時は本当に一生懸命にやって、これ以上のことはできないくらいの気持ちだったけれど、こういう画になるんだなと。ある意味で、自分に伸び代を感じられたという事に喜びを得られました。でも、やっぱり悔しいですね。なんであの時にできなかったんだろうという思いは正直ありますね」

そしてまた、これまでとは全く異なる思いが芽生えた。「僕は、中島監督に喜んでほしいという思いが全面に出ました。今回は、とにかくこれでいいと思っているんです。これまで、廣木隆一監督に『おまえ、俺に褒められるために芝居をしているのか?』と言われたこともありました。けど今回は中島監督に喜んでほしい、いや、中島監督に褒められたい……かもしれない。いろいろ経験してきて、邪魔じゃないレベルの話で、自分の気持ちの多くを占めていた気がします。不思議ですよ、持ってはいけない気持ちだと感じていたのですから」

高良の胸中をここまで揺れ動かしたのは、活動屋として酸いも甘いも知り尽くした中島監督の存在によるものだろう。中島監督は、3月25日に都内で行われた完成報告会見で、「活動屋の魂」について言及している。高良も、撮影時にこの言葉の真意を目の当たりにしたという。

「84歳まで映画で生きているというのがすごいですよね。聞いた話ですが、監督は撮影する数年前のほうが元気がなかったらしいんです。ただ、映画というものが監督の魂をもう一度奮い立たせた。それが『活動屋の魂』なんだと思います。答えなんてないし、ずっと人に評価される仕事じゃないですか。それを84歳まで続けるって並大抵なことではない。ましてや先生として教える立場にもあって、熊切和嘉さんや近藤龍人さんが生まれてきたわけですから。本当にすごいことです」

30代最初の主演作ということもあり、「どの作品でも気負いも気合もあるんですが、明らかに違うものがあった」と並々ならぬ思いで撮入した高良。映画だけでなく、山崎豊子の名作をドラマ化した「二つの祖国」では、小栗旬新田真剣佑と日系2世の兄弟に扮し、日本の大学在学中に徴兵され第2次世界大戦を日本兵として戦うという難役を見事に演じきった。決して器用なタイプではない。だが、人の心を鷲づかみにする屈託のない笑顔と勤勉な人柄は、多くの映画人から愛されている。高良は今後、どこへ向かっていくのだろうか。穏やかな面持ちで、静かにこう語った。

「徹底して思うのは、役としてその場にいたいです。いろいろなことを経験して、40代で感じること、50代で感じることは違うかもしれませんが、言葉としては変わらない、変えられない。役としてその場にいたい。どの作品でも、変わらずそう思います」

(映画.com速報)

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