岩合光昭、人間ドラマ初監督作品で猫35匹が出演! 撮影の秘訣は“猫のための一週間”
2019年2月24日 12:00
[映画.com ニュース] NHKBSプレミアム「岩合光昭の世界ネコ歩き」や全国をめぐる写真展などで、日本中の猫好きから「岩合さん」と親しまれている動物写真家の岩合光昭が、監督を務めた映画「ねことじいちゃん」が2月22日に公開される。過去にドキュメンタリー映画「劇場版 岩合光昭の世界ネコ歩き コトラ家族と世界のいいコたち」も製作されたが、人間ドラマでメガホンを取るのは初めて。そんな岩合監督に、撮影のこだわりや猫の演出方法などを聞いた。(取材・文・写真/ナカムラヨシノーブ)
ねこまき(ミューズワーク)氏によるコミックを実写映画化した本作は、妻に先だたれ、猫のタマとつつましく暮らすおじいちゃん・大吉と、島の人々との生活を描いた人間ドラマ。落語家の立川志の輔が初主演で大吉を、柴咲コウが都会から移住してきたヒロイン・美智子を演じ、ゆっくりとした時間のなかで、友人の死や病気と向き合いながら暮らしていく姿を描いている。
世界的に有名なナショナルジオグラフィック誌の表紙を日本人で初めて2度飾るなど、動物写真家として海外でも知られている岩合監督。撮影現場には「俳優さんを演出するのはすごく難しかったです」と振り返るも、「でも、みなさん名優ぞろいで役作りもしっかりとされてこられて、僕がどうのこうのという感じではないくらいでした。初日はやはり緊張していたと思います。でも、撮影は40日間びっしりスケジュールが組んであったので、仕事に集中する意識の方が緊張よりも高かったです」と回顧する。
最初はつい猫の写真を撮ったりしていたそうで、「撮って写真展をやろうかと思っていたら、スタッフに『モニターやってください! 戻ってください!』と怒られ、慌てて戻ったこともありました。監督って忙しいのだなと」と笑いながら失敗談も語り、「とにかくチームワークが良かったです。スタッフ・キャストが一丸となるとてもいい現場で、クランクアップ前には志の輔さんがみんなの前で挨拶をされて、『君たちと別れるのがつらいよ』と号泣されました。それを見て僕ももらい泣きしました」と目を細めた。
キャストは俳優陣のほかに、プロダクションに所属している俳優猫が実に33匹という大所帯。ロケ地の愛知県・佐久島は地域猫が多く「アートと猫の島」としても知られているが、出演した島の猫は1匹だけだったという(子猫時代のタマ役を合わせて全35匹)。「島の猫ですと、猫探しから始めなければならなくなります。時間の制約もあり、60人のスタッフが動いていますので、プロの猫に出てもらうしかないと。その中で、砂浜でおばあちゃんと一緒にいるのが唯一島の猫です。毎朝散歩されている島民の方で、以前その姿を撮らせていただいていた事があり、今回も出会った時にその場でお願いして出ていただきました。本当に島の人たちには助けていただきました」。
劇中の猫たちは実際に島で暮らしているかのような自然な姿を見せているが、「キャストの方が入られる8日前から猫だけのパートを先に撮りました。猫に環境に慣れてもらいたかったのと、スタッフにも猫の映画だと分かってもらい、その環境に慣れてもらいたかったからです。それが撮れた段階でキャストをお迎えして、猫と一緒の撮影に入りました。その作戦はうまくいったと思います」と岩合監督ならではの工夫があった。
猫たちの場面では「岩合光昭の世界ネコ歩き」などでおなじみのローアングルも健在で、「カメラマンには『カメラアングルが高いよ。猫目線に合わせて』とずっと言っていたような気がします。あと、背景に溶け込まず立体的になるよう、照明スタッフに猫用の照明も作ってもらいました。だから、この映画では猫の存在感も際立っているのではないかと思います」とこだわりも語ってくれた。
そんな岩合監督に人間ドラマと動物ドラマとの共通点を聞くと、「人間も猫も自然の一部であって、島の自然環境に沿って生きている事を大前提にしています。島で生まれ育って果てていくという大きなテーマがこの映画の隠し味になっているのではないかと思います」と答えが返ってきた。
「家族でも恋人同士でも、先輩・後輩でも楽しんでいただける映画になっていると思います。猫好きはもちろん、猫に興味がない方も、猫好きにひっぱられて見ていただけたら猫に興味を持っていただけるような映画になっているのではないかと思いますので、ぜひ劇場で見ていただけたらと思います」と穏やかにアピールに努めた。
さらに、タマが満開の桜の中たたずむかわいらしいシーンに触れ「あれは僕がお願して撮影しました。脚本にはないので『どこに入れるんですか?』と散々言われましたけど(笑)」と裏話も。「絶対これは必要だよ」との思いで撮影したそうなので、どこで映るのか、ぜひ探してみてほしい。
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