コムアイ、「ビール・ストリートの恋人たち」バリー・ジェンキンス監督に公開インタビュー

2019年2月13日 23:26


バリー・ジェンキンスに特製チョコレートを渡したコムアイ
バリー・ジェンキンスに特製チョコレートを渡したコムアイ

[映画.com ニュース]「ムーンライト」のバリー・ジェンキンス監督最新作「ビール・ストリートの恋人たち」の公開記念トークイベントが2月13日、東京・TOHOシネマズシャンテで開催された。初来日のジェンキンス監督に、「水曜日のカンパネラ」のボーカルのコムアイが対面し、公開インタビューを行った。

幼い頃から共に育ち、強いきずなで結ばれた19歳のティッシュ(キキ・レイン)と22歳の恋人ファニー(ステファン・ジェームズ)。幸せな日々を送っていたある日、ファニーが無実の罪で逮捕されてしまう。ティッシュと家族がファニーを助け出そうと奔走するさまと若い2人の愛を描く。第91回アカデミー賞では、レジーナ・キングが助演女優賞にノミネートしたほか、脚色賞、作曲賞の計3部門の候補となっている。

ジェンキンス監督は「日本を楽しんでいるよ。美しくて、飛行機で入ってきた風景がとてもきれいで。それがどんな風景だったかは明日ツイッターに投稿するよ」と初めての日本を堪能しているよう。第91回アカデミー賞授賞式を前に「とてもワクワクしています。過去にいろいろあったから、ちょっとPTSDを抱えながら望みます」と、第89回アカデミー賞で前作「ムーンライト」が作品賞を受賞したものの、発表前に封筒を取り違えられたハプニングを引き合いに出し、笑いを誘った。

ムーンライト」に続き「ビール・ストリートの恋人たち」にも感動したというコムアイは、「2つの気持ちがミルフィーユみたいにどんどん伝わってくる。二人に降りかかる当時の出来事の厳しさ、それをものともせず立ち向かう愛と生命力があって、ゴムが引っ張られるように交互に強くなっていく」と感想を述べると、ジェンキンス監督は「プロの映画評論家より素敵なコメント」と喜び、「原作は原作者の視点だけれど、映画はティッシュの視点でかつ化学的なアプローチをしました。愛と社会的な不公平さがフィフティーフィフティーで描かれなくてもいいのです。それは愛のほうが密度が高いから。映画の中で恋愛を描くとき、愛やロマンスだけが描かれ、社会的、政治的な文脈が消されてしまうことが多い。我々も社会の一員として、お互いに属する階級、セクシャリティの違いなど、さまざまな文脈に付随して描かれるべき。このように、社会的、人種差別的な問題が描かれているラブストーリーだから原作に惹かれたのです」と映画化の理由を明かした。

コムアイは「最初のシーンを見ただけで、音楽を大事にされていると思った。原作とは違う音楽を取り入れるのに迷いはなかったですか?」と、アーティストならではの視点での質問を投げかける。それを受けた監督は「原作はたくさんの楽曲が描かれているけど、自分で違う方法をとりました。これまで6カ月取材を受けていますが、このことを指摘してくれたのは彼女が初めてです」とコムアイの鋭い指摘を褒め称えた。

そして、「視点を変えたときに、原作の音楽の制限から開放されたのです。最初は全部ジャズでと思っていましたが、ティッシュの感情はチェロが表現しています。ホーンで作った曲を弦で演奏してみたらぴったりだったのです。映画音楽は観客に感情を押し付けるような作り方がよくあるけれど、今回はキャラクターが何を考えているかを伝えよう、それを増幅させるよう、作ってくれた。子供の誕生、愛、憎しみ、生きることと苦しみを音楽を通して伝えることが出来たと思っています」と音楽へのこだわりを語った。

また、コムアイが今作で参考にした作品をたずねると、ジェンキンス監督は「映画よりも、70年代のハーレムで撮られた写真や写真家です」といい、さらに「あとは小津安二郎の『東京物語』のように、観客に目を合わせるような手法です」と回答。「日本文化はあまりアイコンタクトをしないと聞いています。文学に比べると映画は受身の受け取り方になりますが、キャラクターと目を合わせることができれば、能動的な体験になり、感情の交換が観客とできると思うのです。私は、映画を通してアメリカ以外の文化を体験できました。日本では黒人は数多くないでしょうし、目を合わせるという体験がないかもしれません。映画の中では目を合わせることができるので、僕たちアフリカ系アメリカ人(の文化)を味わっていただければ、これが映画のギフト。皆さんを招待しているのです」と観客に呼びかけた。

ビール・ストリートの恋人たち」は、2月22日から全国公開。

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マイアミを舞台に自分の居場所とアイデンティティを模索する少年の成長を、少年期、ティーンエイジャー期、成人期の3つの時代構成で描き、第89回アカデミー賞で作品賞ほか、脚色賞、助演男優賞の3部門を受賞したヒューマンドラマ。
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「お茶漬の味」以来一年ぶりの小津安二郎監督作品で、脚本は小津安二郎と「落葉日記」の野田高梧の協同執筆、撮影も常に同監督とコンビをなす厚田雄春(陽気な天使)、音楽は斎藤高順。

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