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「ヘレディタリー」はホラーではなく“嫌な家族映画”!? 町山智浩が別アングルから解説

2018年12月1日 12:00

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Tシャツの柄を指さす町山氏
Tシャツの柄を指さす町山氏

[映画.com ニュース] 批評家たちから絶賛レビューが相次いだ米ホラー映画「ヘレディタリー 継承」(公開中)のトークイベントが11月30日、東京・TOHOシネマズ新宿で行われ、映画評論家の町山智浩氏が出席した。

家長である祖母の死をきっかけに、さまざまな恐怖に見舞われる一家を描く。メガホンをとったアリ・アスター監督にインタビューを行った町山氏は、「監督は『オカルト、ホラーのふりをしているけど、自分としてはそのつもりで作っていない』と言っていた。『家族映画なんだ』と」と切り出し、今作に根底に流れる“血潮”を詳述していった。

同監督が影響を受けた過去作を引き合いに、「まず、ロバート・レッドフォード監督の『普通の人々』に影響を受けたと言っていました」。ある少年が兄の死をきっかけに、母から責められ続ける姿を描いた作品だが、「主人公は責められながらも、『でもやっぱりお母さんは僕を愛しているはずだ』と、母に抱きついてキスする。ですが母は、気持ち悪いという顔で家を出てしまう。恐ろしい映画です。母親が息子を拒否するというのは、映画でもめったに描かれない。アスター監督はそれにショックを受けて、この映画のなかで彼なりに再現している」と語る。

さらに「アスター監督が作った“影響を受けた嫌な家族映画リスト”がある」といい、作品を列挙していく町山氏。「目指している監督はイングマール・ベルイマンだそうです。彼の『叫びとささやき』という、ホラーなのか家族映画なのか分別不能な映画があります」「日本からは溝口健二の『雨月物語』。新藤兼人の『鬼婆』からは、逃げる人を猛然と追いかけるという、全く同じシーンがあります。まだまだあります」と、笑いながら話す。そうしたエピソードを踏まえ、アメリカではホラーやオカルトの文脈で公開された今作を「根底にあるのは、全世界の映画の“家族の嫌な話”の詰め合わせなんです」と解説した。

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また孫のピーター(アレックス・ウルフ)が授業も聞かず、女子のお尻を眺めるシーンにも触れ、「あの授業の内容が、この映画のテーマそのもの。ヘラクレスの話ですね。つらい苦難を自ら選ぶことは『ヘラクレスの選択』といいますが、そのときのヘラクレスには、実は選択肢なんてなく、運命に縛られて逃げ場がなかったと言っている。あれはピーターの運命を先生が(比喩的に)語っているんです」。続けて「エンドクレジットでは、赤い文字が次々と下の人に流れていく。継承を表しています」と掘り下げていき、「映画のような呪いはないかもしれないが、がんなどの病気のように、家族を縛る遺伝的な悲劇があると、監督は言っていました」とインタビューを振り返った。

劇中では精神の治療という重要なモチーフが登場するが、「それがなぜ重要か。この映画自体が、私にとってのセラピーだからだと、監督は言っていました」と核心に迫る町山氏。「『僕の家族にあることが起こった。そのことで傷ついた自分を癒やすために、物語を作っていったんだと思う。弟を大切にしていた……。それ以上は言わせないで』。僕はそれ以上、聞けなかった」とプライバシーに配慮しながら、「おそらくは遺伝的な病気などがあったんだと思いますが、それ以上はわからない。アメリカのマスコミにも、プライバシーを理由にそれ以上の発言は拒否しています」と明かした。

そして「映画というものは、非常にパーソナルなんですね。その部分がないと、映画は切実にならないんだと思います」と大きく頷く。アスター監督の今後については、「すでに2作目を撮影を終えていて、どうもベルイマンの故郷スウェーデンが舞台らしい。芸術映画をホラーの枠組みで作りたいと言っていました。非常に興味深い」と大きな期待を込めていた。

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