普通の人々
劇場公開日 1981年3月7日
解説
名優ロバート・レッドフォードの監督デビュー作にして、1980年度アカデミー賞4部門(作品・監督・助演男優・脚色賞)に輝いた傑作ヒューマン・ドラマ。ごく普通の中流家庭であるジャレット一家。お互いに尊重し合い、家族4人で幸せな毎日を送っていた彼らに、長男の事故死と次男の自殺未遂という悲劇が降りかかる。そしてこの出来事をきっかけに、信頼しあっていたはずの家族の歯車が少しずつ狂いはじめるのだった……。
1980年製作/124分/アメリカ
原題:Ordinary People
スタッフ・キャスト
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2022年5月15日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD
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1970年代後半から80年代にかけて、米国は世界の中枢に君臨する強いリーダー国家を自負した。
全てが順風満帆。軍事力、経済力、政治力において、米国が世界を正しい方向へ主導する。
国民の生活は豊かでチャンスに満ち溢れ、誰もが休日はゴルフを楽しめる。
少なくとも、当時小学生から中学生になろうとしていた自分には、アメリカ合衆国という国からそんな明るさを感じていた。
ステレオタイプのこうしたイメージを、実は国民も皆信じようとして、暗い闇の部分から敢えて目を背けていたのかもしれない。
そういう人々が集まって形成された家族に、原作者も、映画の製作者たちも、小さな米国の病理を見ていたのかもしれない。
必死になって「普通」を装うことで、破滅的な現実の到来を少しでも遅らせることができると信じたのだ。
長男の死に涙を見せず、葬儀で着る夫のシャツの色に指図する妻のエピソードは、まさに強さに取り憑かれた米国たる振る舞い打。
苦しむコンラッドを両親に預けてゴルフに興じる場面、ジョギングの間中、同僚と株の売買の話題が続く場面など、ところどころに強い米国の普通が描かれ、そのことに耐えられなくなる一見普通ではない父親が描かれる。
観る側は「どっちが普通?」と問われているのだ。
ティモシー・ハットン、ジャレツド・ハーシユら主要キャストがみな好演。
エリザベス・マクガバンのはちきれそうな顔は当時あまり好道ではなかったが、今見直してみると愛嬌があってチャーミングだ。演技も素晴らしい。
この時代の上流家庭の暮らす街並みは美しい。あの時代がよかったと思ってしまうのは、やはり作り物の普通に騙されていたからなのだろうと思うのは少しばかり悲しかった。
2022年3月30日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD
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■ロバート・レッドフォードの監督デビュー作。
ー 冒頭から、コンラッドは頻繁に悪夢に魘される。それは、時化でヨットが転覆する夢だ。一緒にいたのは、観ていると徐々に分かって来るのだが、母、ベスが溺愛していた兄、バックであった。-
◆感想 <Caution! 内容に触れています。>
・鑑賞していて、辛い気分になる映画である。ヨットの事故を自分の責任であると思い、自殺を図るコンラッド。
- カルヴィンはコンラッドを精神科医のバーガーに週2回、通院させるが・・。-
・ベスはコンラッドに対し、普通に振舞おうとするが、どうしても冷たく、素っ気ない態度になってしまう。
- コンラッドが普通に暮らそうと努力すればするほど、精神的に追い詰められていく姿。-
・父・カルヴィンは、コンラッドとべスの関係を解きほぐそうと苦悩するが…
- 在る夜に、カルヴィンがそれまで抑えていた妻ベスに言ってしまった言葉。ー
<幸せだった4人家族が、予測できない事故、事件により関係性が崩壊して行く様を描いた作品。
ラスト、家を出た母ベスのいない幸せの象徴だった大きな白い家の前で、肩を抱き合って泣くカルヴィンとコンラッド。
誰が悪いわけではないのに・・。何とも、切ない作品である。
カルヴィンとコンラッドが立ち直り、新しい生活を始める事を淡く、期待してしまった作品でもある。>
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もうそんなに経つのか〜
当時は観に行かなかったが、ティモシーハットンの名前を知ったのはこの作品。
最近観た作品に彼の名前を見つけ、懐かしくなりじっくり観てみた。
色褪せない作品だと思う。
着ているものは時代を感じるけど(笑)
恐らく普通の人々が抱えている心の問題が、丁寧に描かれている。
なかなか自分を許せないコンラッド。
病院で知り合ったカレンが亡くなったことをきっかけに、ようやく全てを吐き出すことが出来たのかな。切ないが。
母方の祖母を見ていると、母親の持つ心の闇が見えてくる気がした。
当時アダルトチルドレンという言葉があったかわからないけど。そんなものも見え隠れ。
母親は認めないと思うが、溺愛していた長男を亡くす前からコンラッドをするりするりと避けていたこと。そしてコンラッドはそれをずっと感じていたこと。
子供を同じように愛せない母親はそんなに珍しくないのかもしれないが、それに気づいてしまったら、子供は辛いよね。
そしてそこを突かれそうになると瞬時にキレる母親。演じた人もうまかった。
そうそう、こういう返し方するよね、という感じ。
母親がバーガー医師と会わなかったのは残念。
カウンセリングを受けていたらまた違ったかもしれない。
最初と最後のカノンいいね〜
邦題も原題の訳そのままであるが、内容は「普通」ではなく、かなり重いテーマだ。俳優出身の監督といえばクリントイーストウッドを思い出すが、彼の作品同様に、この映画もいい映画かもしれないが見終わった後の後味が悪い。したがって、個人的には好きになれない映画だった。
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