仏女優ジュリー・ガイエ、アニエス・バルダは「市場に媚びることのない映画作りを教えてくれた」
2018年9月14日 14:00

[映画.com ニュース]第70回カンヌ国際映画祭で最優秀ドキュメンタリー賞受賞作で、名匠アニエス・バルダと若手アーティストのJRが共同監督を務めた「顔たち、ところどころ」が9月15日から公開する。プロデューサーを務めた女優のジュリー・ガイエが作品を語った。
10代から女優を目指し、同時に人道的活動も行っているガイエ。現在は主に仏国内の映画・TVドラマの双方で活躍している。1994年に、映画生誕100周年を記念し、バルダがフィクションとドキュメンタリーを融合させた異色コメディ映画「百一夜」に出演したことが、最初の出会いだ。
「彼女との出会いによって、私はプロデューサーの仕事にも興味を持ちました。アニエスは、私にとって家族、おばあちゃんのような存在。彼女が市場に媚びることのない映画作りへの闘いというものを教えてくれました。それは、昔も今も変わりません。今回の映画から、監督自身の世界が現れてくるだろうと思ったのです」
映画は、88歳のバルダと、34歳のアーティストのJRという親子ほども年の離れた2人がフランスの田舎をトラックで巡りながら、市井の人々と接し、作品をともに作り、残していく旅の様子を記録したロードムービースタイルのドキュメンタリー。編集が肝だったと振り返る。

「ふたりに年齢差があるので、孫とおばあちゃんという関係で、“継承”というテーマを持った映画だと思うのです。私も70年代の女性の精神を彼女から受け継いだと思っています。もしこれが3時間だったら、退屈な作品になっていたと思います。編集は、監督の目とは別の、外部からの視点を映画に与えるという意味で重要です。プロデューサーの仕事も女優の仕事と同じで、監督の頭の中に入っていくこと。監督が何をやりたいと思っているかを通訳するのです。プロデューサーというと、資金集めを思い浮かべられると思いますが、それだけではなく、その人を導くというような、信頼関係を築くことも仕事なのです」
そして、フェミニストとして、60年代から女性の権利を主張してきたバルダの魅力をこう語る。「ひとりの女性であり、母親であるという主張をずっと持ち続けている人。撮影現場に小さな息子を連れてくることもありました。その時に、『私の子どもは私の人生なので、ここにいるのが当たり前』だとはっきり主張していましたし、その姿を見た時に、彼女は、自分の人生を最優先にする人なのだとわかったのです。それが、仕事にも反映されていて、プライベートをも、映画の中に取り込んでしまうのです。ある意味自分の人生を利用していくのです。そして、彼女はユーモアに溢れた人。人生の中で、いろんなことが起こっても、ユーモアを持って受け止めて、再生していくのがアニエスなのです」
「顔たち、ところどころ」は、9月15日から全国で公開。
(C)Agnes Varda-JR-Cine-Tamaris, Social Animals 2016
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