【独占手記其の三】塚本晋也監督、トロントで亡き石川忠さんに思い馳せる
2018年9月14日 12:00

[映画.com ニュース] 塚本晋也の最新作「斬、」が、第75回ベネチア国際映画祭コンペティション部門に続き、カナダで開催中の第43回トロント国際映画祭マスターズ部門に正式出品され、お披露目された。北米プレミアとなった今回のトロントでは、意外な出会いに恵まれるとともに、ティーチインでは30年来の付き合いとなり盟友ともいえる故石川忠さんに関する質問が挙がった。
カナダ、トロント映画祭は、初期のころからよく参加させていただいた。ミッドナイトマッドネスというジャンル映画を真夜中の12時から上映するセクションは当時から熱狂的で、自分の映画はよくそこで上映していただいた。一時期の作品を除いて、ほとんどの作品を上映していただいている。初期のころは観光も貪り、当時は世界一高かったCNタワーのグラスフロアの上で震えたり、ナイアガラの滝を、滝の裏側から、船に乗って表側から、ヘリコプターで上からと全方向一気に見た。
今回の「斬、」ではベニスでのワールドプレミアに続き、北米プレミアとなる。マスターズ部門という歳月を感じさせる部門への参加。自分はベニスから直行、到着の翌日はたくさんのインタビューを受けたあと、国際交流基金などが主催するジャパンフィルムナイトというパーティに。日本からの監督とも合流。「私は『鉄男』が好きです。ゴブリンというバンドをやっています。『サスペリア』という映画にも曲を作りました」と丁寧に挨拶に来てくださる方が。耳を疑ったが後で確認すると間違いなくゴブリンの一員、マウリツィオ・グアリーニさんだった。大好きなダリオ・アルジェントの話もしてくださった。映画祭は思いがけない方に突然会えるのが魅力なのだ。

11日。TFFベルライトボックスシネマは満席。「斬、」は上映された。大きな画面と音響でとても醍醐味があり、満足な上映となった。ベニスでの多少緊張感の伴う上映とは異なり、笑ったり息を飲んだりとビビッドな反応が得られた。
映画祭デイレクター、ジョバンナさんの進行で質疑応答。ほとんどのお客さんが遅い時間にも関わらず残ってくださり、熱心に質問し耳を傾けてくださった。最初の質問が、石川忠さんとのコラボレーションについてだった。「石川さんとは、『鉄男』からおよそ30年のつき合いになります。今回も石川さんに音楽をお頼みしていましたが、残念ながら去年の暮れに亡くなってしまいました。その死が受け入れられず、僕の映画のために作った曲、それから、石川さんのお宅に眠っていた曲までを全部聴き、天国の石川さんと会話しながら編集に貼っていきました。とても満足なでき上がりになりました」
会場から拍手が。石川さん、今回もここまで来ましたよ。
トロントは今年はとても寒く、身が引き締まる。「斬、」は、こうして腰を上げて走り出したのだった。
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