「愛しのアイリーン」、新井英樹氏「若い女の子に見てほしい」 大森靖子とトーク
2018年9月7日 14:00
「ワールド・イズ・マイン」「宮本から君へ」など、社会の不条理をえぐる作品で知られる新井氏が、40代まで恋愛を知らずに生きてきた農村育ちの主人公が300万円という貯金をはたいてフィリピンから嫁を迎え、家族内や地域で巻き起こる騒動を描いた。安田が主人公の岩男を演じる。
互いの作品のファンだという新井氏と大森氏は、「表現をやってると、売れたいとかじゃなくて、届いてほしい人に届くと満足する」と、表現者としての観点で共感し合う。新井氏は「漫画家なんて人生経験がないような人たち。影響を受けたものや、好きなものをこねくり回して作っている。でも、コンプレックスから舐められちゃだめ。自分もかなり尖ろうとしていたと思う。若いうちは尖ったほうがいいと思うし、尖った後は、潰れた方が良いと思う」とキャリアを振り返り、「描いた本人はあれだけど、自分が生み出した人間は好き」「『宮本』でサラリーマンを描いて、難しい部分もあったので、『アイリーン』では好きな人間だけ出そうと思った」と、自身の作品に登場する、人間味のあるキャラクターについて言及する。
「愛しのアイリーン」では、とりわけ岩男を取り巻く女性キャラクターへの思い入れが深かったそうで、「女の人が描きたくて、自分が女の人がむちゃくちゃ好きなのがわかった。良江さんも大好きだし、つるは例外だけど、出てくる女性とはみんなとやれる」と登場人物への愛を公言し、「打算でくっついたところで、恋愛関係が生まれるかどうか。何にも没頭できないときに、夢中になれるもの、これでいいのだという幻想が、愛とかいうもの。幻想だから素晴らしい」と作品のテーマを語る。大森氏は、「イケメンがああなっっちゃうくらい、愛って情けないんだ。安田さんファンは、ああいう安田さんを見られてもっとうれしくなるのでは」と、主演の安田の熱演を絶賛していた。
新井氏を“神”と崇める吉田監督は、20年前から本作の映画化を熱望していたそうで、「ぶっ飛んでるけど、ちゃんといい話。安定した分かりやすい映画が好まれる時代になってるけれど、民放では流れない刺激を求めて劇場に行く人に向けて、熱意を持った人たちが集まった」と念願かなっての完成を喜び、「俺が一番見てほしいのは新井さん。お客さんより、新井さん。でも、それより俺が俺を喜ばせたかった。俺が面白いと感じられたから良かった。世の中的には賛否両論あっても、撮っているときから手ごたえがあった」と自信を見せる。
新井氏は「俺が書いてる漫画のなかでも一番映像化が厳しいんじゃないかと思ったけれど、映画を見たときに、吉田監督からのラブレターみたいに感じた」と感想を述べ、「本当にすごい。ぜひぜひ、若い女の子に見てほしい」と呼びかけた。
「愛しのアイリーン」は、9月14日から全国公開。