「寝ても覚めても」は「日常の中の非日常性を突きつける作品」 玄理と中井圭氏がトーク
2018年8月28日 09:30

[映画.com ニュース]濱口竜介監督が東出昌大を主演に迎え、芥川賞作家・柴崎友香による同名恋愛小説を映画化した「寝ても覚めても」の試写会イベントが8月27日都内であり、女優の玄理と映画解説者の中井圭氏がトークを行った。
第71回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に正式出品された本作は、ミステリアスな自由人・麦(バク)と、柔和で誠実なサラリーマン・亮平という、同じ顔をした2人の男と、その間で揺れ動く女性・朝子の8年間を描く。
濱口監督の短編作品に出演経験のある玄理は、「他の監督とは演出が全然違っていた。みんなで頭を寄せ合って、棒読みで読みあってセリフを覚えていくんです。最初から固まった脚本があるのではなく、監督が役者にインタビュー形式で質問していって、その回答を録音したものを文字に起こし、キャラクターの深みをつけて、セリフに直している。そして別の日には、役として質問して、脚本を作っていくので、どのくらい本人を混ぜて、役にしているかわからない。東出君はこれを濱口メソッドと呼んでいて、同じことを『寝ても覚めても』でもやったそうです」と独自の演出方法を明かす。

さらに、「震災前と後の日本は違うし、映画の見方も変わると監督がおっしゃっていた。震災があったことを取り込んだ映画って少ない。こういう風に震災のことを入れ込んでくるんだなって驚いたしやっと見れたなって。朝子の行動をいやだと思う人もいるとおもうけれど、私は出てくるキャラクターがみんな好き」と感想を語った。
自身の「今年のベストテンに確実に入る」と断言する中井氏は、「こんな形で恋愛を描いている作品はない。目が覚めました」と絶賛。「おとなしい感じの朝子の日常が崩れ、日常の中の非日常性が発生している。もちろん震災も、麦のことも。震災のドキュメンタリーも撮っている濱口監督は、みんな変わらない明日が来ると思っているけれど、何があるか分からないということを提示している。そういった日常の中の非日常性を突きつける作品になっている」と分析した。そして、濱口監督がジョン・カサベテスに大きな影響を受けていると紹介し、「人間をきちんと撮っていて、どんな映画を見てきたか、恋愛をしてきたか、見る人の人生が照射される映画」とまとめた。
「寝ても覚めても」9月1日から全国公開される。
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