ロン・ハワード、スター・ウォーズ銀河の開拓とハン・ソロの定義を説く
2018年7月1日 11:00
[映画.com ニュース] 「スター・ウォーズ」シリーズの人気キャラクター、ハン・ソロの知られざる過去を描いたアクションアドベンチャー「ハン・ソロ スター・ウォーズ・ストーリー」(現在公開中)。本作でスター・ウォーズ銀河の開拓に挑んだロン・ハワード監督が6月中旬に来日し、伝説のアウトローの定義を説いた。
物語の舞台は、シリーズ第1弾「スター・ウォーズ 新たなる希望」の10年前。若き日のハン・ソロと生涯の相棒チューバッカとの出会いや、愛機ミレニアム・ファルコン号を入手したエピソードをひも解きながら、後に銀河の命運を握るアウトローの誕生秘話をアクション満載で描く。
当初、「LEGO(R) ムービー」のフィル・ロード&クリストファー・ミラーの監督コンビのメガホンでスタートした本作だが、「クリエイティブ面での相違」を理由に撮影途中で降板。異例の交代劇でメガホンを託されたのは、2度のオスカー受賞を誇り、同シリーズの生みの親ジョージ・ルーカスが「スター・ウォーズ エピソード1 ファントム・メナス」の監督をオファーしたことでも知られる名匠ハワード監督だった。
ルーカスからの助言は、「12歳だった頃の自分や、いま12歳の子どもたちがワクワクするような映画をつくること」。ハワード監督自身が撮影現で一番ワクワクしたのは、ハンたちがあるミッションのために向かった惑星ケッセルから脱出するときに、ランド・カルリジアンたちと一丸となって戦いながらミレニアム・ファルコン号へ駆け込みながら追っ手と一戦交えるシーン。さらに、名コンビ誕生の瞬間を、童心に返ったかのように嬉々として振り返る。
「ハンがはじめてミレニアム・ファルコンのコックピットに入って、操縦席にすべりこむ場面。危険がいっぱいで緊迫したシーンなんだけど、彼は自分の運命を自分で切り開く。楽しい瞬間だったね。そして、チューバッカが副操縦席に座って、いろいろと操作を始める。それを見ただけで、最高のコンビだって思わせてくれるんだ」
本作はスカイウォーカー家のサーガから離れた“アナザーストーリー”という位置づけにある。スター・ウォーズ銀河を特徴づける“フォース”は影を潜め、善と悪の対立構造というシリーズの伝統からも逸脱した。
「今回の実験のひとつは新鮮味。フォースに依存していないし、壮大な戦争の話でもない。個人の自由への闘争なんだ。ハンの葛藤だけでなく、キーラやチューバッカは抑圧された状況から逃げようとしている。自由を求める反逆心あふれる戦いには、若々しいエネルギーがあふれているからワクワクした。それが、他の作品と違うところだね」
ハン・ソロがアウトローに成長していく過程を、裏切りや試練が待ち受けるひねりの効いたストーリーで描くことで、エピソード4以降でなぜシニカルな面があるのか見せた。そして、このキャラクターの人物像を語るうえで避けては通れない「Han Shot First(ハンが先に撃った)」というファンの間では有名な論争にも、ひとつの答えを提示した。
「(『ハンが先に撃った』を)常に意識していた。何パターンか撮ってみたけど、僕たちがイメージしたとおりのパーフェクトなものを選んだ。ハンは、勇気だけでなく行動力があり、知性と感受性、自分が正しいことをしているという確信も持っている。だからあの瞬間の彼は、無鉄砲なんかじゃない。人間的な温かい心を持っているけど、戦士としての鋭い本能も同時に持っているのがわかる、ハン・ソロらしい逆説的な瞬間なんだ」
本作に携わったことで、「スター・ウォーズ」シリーズを「よりリスペクトするようになった」と語る。「複雑なマトリックスで観客を楽しませていると実感した。様々なジャンルや方法論のマトリックスが、同時に成り立っているんだ。これを実現するのは3Dのチェスみたいに難しい。一見すると簡単そうだけど、ユーモアやアクション、ドラマを同時に成立させるのはやすやすと成し遂げられることではないんだ」。ベテランのフィルムメーカーらしい洞察に、壮大な銀河での冒険に憧れる少年のような熱狂がほとばしった。
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