河瀬直美監督は呪術師?森山未來らが奈良・吉野での撮影に思いめぐらす
2018年5月17日 23:45

[映画.com ニュース] ジュリエット・ビノシュ、永瀬正敏がダブル主演した河瀬直美監督の長編第10作の映画「Vision」の完成披露イベントが5月17日、東京・丸の内ピカデリーで行われ、永瀬ら出演者、河瀬監督が舞台挨拶に立った。
フランスからやってきたエッセイストのジャンヌ(ビノシュ)が幻の薬草“Vision”を探すうちに、そこで20年間暮らす山守の男・智(永瀬)らと出会う姿を描いている。
この日は一般のファンに披露する初めての上映会。若い女性で埋まった客席を見た河瀬監督は「普段、私の映画を見ているシニア層がおらず、どういう反応になるのか、ドキドキ、ワクワクしています。謎がたくさんある映画です。関係者の中でも神話ファンタジーだという人もいますし、永瀬君でさえ、見て、『えっ?』といったくらい。みなさんに何が届くのか分からない。旅の途中は何を得たのか分からないかもしれないですが、帰ってきた時は何かを得ているはずです」と手応えを口にした。
撮影の2週間前から山守として生活した永瀬は「あそこで生活していると、いろんな不思議なことを目の当たりにするんです。例えば、『雨が降るよ』というシーンでは、本当に雨が降ってきた。監督は魔法を使えるんです」というと、猟師の岳を演じた森山未來は「(吉野町の)森は密度が濃く、妖気がにじみ出ている気がした。監督は呪術師か、何かなんだと思う。たった3日間の撮影でしたが、催眠術で幻覚を見せられた気がした」と河瀬組初体験の感想を述べた。
自然と共存する老女アキを演じた夏木マリは「また人ではない役をやらせていただきました。奈良の山には1000年の歴史があるとすると、1000年生きている存在で、山そのものです。私は都会の女ですから、山は怖いし、ありがたくもあり、美しかった」と感想。智が出会う山守の青年・鈴を演じた岩田剛典は「特殊伐採を生業としている人物だったんですけども、ロープ一本で登って切り落とす場面も吹き替えなしで演じました。数日間でなじんできたので、意外と向いているかもしれない。転職するなら、山守になりたい」と明かした。
ビノシュのアシスタント兼通訳の花役を演じた日仏のハーフの美波は「河瀬監督の作品はフランスでも反響が素晴らしい。日本人にしか理解されないような言い回しもあるのに、わびさびが伝わっている。フランス語も日本語も得意ではないので、即興で翻訳するのは大変で、ときどき適当に言っていた」と笑わせた。
出演者から「呪術師」のような扱いを受けた河瀬監督は最後に男性出演者に「(ビノシュ演じる)ジャンヌの何に惹かれたのか?」と質問。「獣同士の直感的な出会いだったのでは」(森山)、「目ですね。初めて会った気がしない」(岩田)、「ハートの先を見てくれたこと。智が抱えていたものを見てくれていた」(永瀬)と、それぞれが回答すると、河瀬監督は「その答えは、自分が思う理想の女性像かもしれないですね」とポツリ。試写会でも、男性陣を“幻惑”させていた。
「Vision」は6月8日から公開。
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