宮崎駿監督、高畑勲監督との別れに涙「ありがとう」「忘れない」関係者1200人が見送る
2018年5月15日 14:45

[映画.com ニュース] 4月5日に死去した高畑勲監督(享年82歳)の「お別れの会」が5月15日、 東京・三鷹の森ジブリ美術館で営まれた。午前の部には、宮崎駿監督、鈴木敏夫プロデューサーら関係者約1200人が参会し、高畑監督に最後の別れを告げた。
「お別れの会」は、宮崎監督と鈴木氏の「ジブリとして盛大なお別れの会で見送りたい」という言葉を受け、高畑監督が愛したジブリ美術館で行われることになった。祭壇も、宮崎監督の「高畑勲監督を野に咲く花たちで囲みたい。高畑監督の作品にあるどれかでもなく『祭壇風』でもない。ただ温かみのある草花たちで包み込みたい」という思いを反映。美術館内の階段が無数の花で彩られ、その中央に穏やかな笑みを浮かべる高畑監督の写真が遺影として飾られた。
開会の辞を務めたのは、高畑監督の東映動画(現・東映アニメーション)時代からの盟友である宮崎監督。「パクさんは95歳まで生きると思いこんでいた。そのパクさんが亡くなってしまった。自分にもあまり時間がないんだなと思う」と話し、「1963年。パクさんが27歳、僕が22歳の時、僕らは初めて出会いました。初めて言葉を交わした日のことは、僕は今でもよく覚えています。黄昏時のバス停で、僕は練馬行きのバスを待っていた。雨上がりの水たまりの残る通りを、1人の青年が近づいてきた。穏やかで賢そうな青年の顔が目の前にあった。それが高畑勲ことパクさんに初めてあった瞬間だった。55年前のことなのに……なんてはっきり覚えているのだろう」と言葉を詰まらせながら、2人の出会いを振り返る。
さらに、同僚として仕事をともにした当時の心境を「僕は『得がたい人にめぐり合えた』と嬉しかった」と噛み締める。演出・高畑&原画・宮崎のタッグで製作された「太陽の王子 ホルスの大冒険」の製作時の苦難を述懐し、「パクさん、僕らは精一杯あの時生きたんだ」「ありがとうパクさん」と涙ながらに呼びかける。声をふるわせながら「55年前、あの雨上がりのバス停で声をかけてくれたパクさんのことを忘れない」と言葉を絞り出した。

高畑監督作「かぐや姫の物語」など多数のジブリ作品の音楽を手がけた久石譲は、「一緒に仕事をしてきたことを誇りに思っています」と感謝。「僕は悩んだ時は、『宮崎さんだったらどうするだろう。鈴木さんだったらどうするかな。養老孟司先生ならどうするだろう』といろいろ考えます。最後には、やはり『高畑さんならどうするだろう』と。そうすると高畑さんの笑顔が浮かんで、希望が持てる。だから、そういう意味では高畑さんは僕の中では生きています」と涙をこぼし、「お別れは言いません。心からご冥福をお祈りしますが、またいつかどこかで会いましょう」と語りかけた。
プロデューサーとして、長年にわたって高畑監督と仕事をともにした鈴木氏は「高畑さんと会って話をする時は、いつも緊張感がありました。40年間それは続きました。最後まで僕と高畑さんは、監督とプロデューサー、そういう関係だったと思います」と告白。閉会後に取材に応じると、「さみしくなる? そんなことないんですよね(笑)」とこぼし、自身の体に手をあて「まだ残っている。この辺に住みついている。自分の体にいろんな亡くなった人がいるんです。(高畑監督と一緒にいる時の)この緊張はずっと続く、多分ほっとすることはないでしょうね」と穏やかな笑みを浮かべた。
また、宮崎監督の弔辞については「あの弔辞は1カ月くらいかけたんですよ。練習している時から泣いていたんです」「宮さんは『俺みっともなかった』と言っていたけど、そんなことないと思いますよ。ある種、あれが今日の雰囲気を作った」と告白。「宮さんにとって高畑さんは、師匠であり、先輩であり、友人であり、ライバル。そういう関係だった」と感慨深げに明かした。
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