仲代達矢、市川崑監督「炎上」秘話語る 市川雷蔵、勝新太郎とのエピソードも
2018年4月21日 16:20
[映画.com ニュース]市川雷蔵が現代劇に初出演し、市川崑監督がメガホンをとった映画「炎上」(1958)が4月21日、東京・角川シネマ新宿で開催中の「大映男優祭」内で上映され、出演した仲代達矢がトークショーに出席した。
三島由紀夫の小説「金閣寺」を映画化した「炎上」は、“驟閣(しゅうかく)”という美に憑かれた男を描いた意欲作。当時は売出し中の若手俳優で、劇中では雷蔵の相手役を務めた仲代は「本日は上映も見ました。私が26歳のときの映画。今は85歳ですから、60年前の映画です。それにしては、すげえ新しい映画に出ていたもんだなと思います」としみじみ語る。“美剣士”と人気を博し時代劇界をけん引し、今作では吃音症の学生を熱演した雷蔵については、「やはりすごい人気でした。ロケーションでは女学生がいっぱい集まって、『雷様はどこ?』と。雷蔵さんは(時代劇では化粧を施すが)すっぴんでやられましたから、素通りされるんです(笑)。なので私が一生懸命、『雷様はここにいるよ』と、紹介役をやっていました」と愉快げに振り返っていた。
さらに仲代は、縁が深かった勝新太郎とのエピソードも披露。「俳優学校時代に銀座のバーに勤めていて、バーテンをしていたら同期生の宇津井健が、色が真っ白な男を連れてきた。俳優になる前に勝さんにお会いしていて、非常に気が合い、よく遊びました」と明かす。続けて黒澤明監督作「影武者」(80)での勝の降板劇に触れ、「監督から電話がかかってきて『代役で悪いけど、やってくれないか』と。私は勝さんと親友ですから、了承を得てからお返事します、と伝えました。さんざん追いかけたんですが(つかまらず)、結局やることになりました。『影武者』が出来上がった後、私の女房が亡くなり、お葬式に勝さんが来られた。それまでお会いしていなかったんですが、抱き合って、悲しんでくれました」と話した。また田宮二郎の話題になると、仲代は「『白い巨塔』に、山崎豊子さんから話があって。もちろん主役は田宮さんですが、『一緒に出ないか』と言われ、ちょうど演劇をやっていましたから、お断りしたんです。残念だったと思います」と告白し、聞き手の春日太一氏を「急にすごい情報が。出る予定だったんですね」と驚かせていた。
かつての映画スターたちとの思い出話に花を咲かせた仲代。一方で現在の映画製作に対し「昔ほどいい環境ではないような気がしています。これから、第2の日本映画の黄金時代が来るとすれば……。役者も技を極め、スタッフと連携し、時間がほしいですね。お金があればいい作品ができるとは限りませんが、ある程度はほしい。この末期高齢者の役者は思いますよ」といい、「時間がないとか、当たるためにはどうすればというのが先行してしまっている。黒澤さんが記者に『今度のテーマはなんですか』と聞かれたときに、『ない。俺の作りたいものを作るんだ』と言っていた。若い役者たちには、頑張って欲しい」とエールを送る。そして「今の映画が悪いということではなく、昔は時間とお金の余裕がありました。これから映画はどうなっていくか。私も演劇をやって85歳ですから、現役が終わるのもそろそろだと思っていますけど」と含みを持たせると、春日氏は「そうおっしゃいながら、来年の舞台の情報も出ていましたけども」とフォローを入れていた。
「大映男優祭」は、「地獄門」「羅生門」「雨月物語」「炎上」など、約30年間で数々の傑作が生まれた大映(現KADOKAWA)作品を特集上映。5月11日まで開催される。
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