「ラッカは静かに虐殺されている」監督、現地ジャーナリストとISの実態に肉薄「現実や恐怖や危険を伝える」
2018年4月13日 14:00
[映画.com ニュース]イスラム国(IS)が制圧し、5年間での死亡者が43万人にものぼる戦後史上最悪の人道危機と言われるシリア内戦に肉薄したドキュメンタリー「ラッカは静かに虐殺されている」が4月14日公開される。匿名の市民によって結成されたジャーナリスト集団「RBSS」(Raqqa is Being Slaughtered Silently=ラッカは静かに虐殺されている)によるSNSを駆使した発信力とISの実態についてマシュー・ハイネマン監督が語った。
「前作の『カルテル・ランド』で旅をしていたころ、ISのことがニュースの一面を飾るようになってきて、この組織の記事をむさぼり読むようになりました。何が起きているかを理解しようとしたんです。理解するにつれ、私もひどく心をかき乱されましたがそれと同時に映画として撮ってみたいとも思ったんです。そうしているうちにニューヨーカー誌に掲載されたRBSSに関する記事に巡り合ったんです。彼らは自分たちの故郷ラッカを占領したISの非道を国際社会に告発するために組織されたグループです。これこそ自分が取り上げるべきことだと記事を読み思ったんです。すぐにジャーナリスト保護委員会(CPJ)を通じて、このグループにコンタクトを取り、約1週間後には撮影を始めました」
「あまり私自身のことは話したくないんです。というのも彼らの経験とは比較にはなりませんからね。『カルテル・ランド』の時は、確かに危険と隣り合わせでした。でも今回は危険の質が違います。彼らはアサド政権からの弾圧を受け、投獄されました。そして今度はISからの弾圧を受け、投獄されたんです。同僚や友人や家族も失いました。私がコンタクトを取った時、彼らは亡命を決断するか否かの緊迫した状況でした。彼らがシリアから国外へ亡命する時も、隠れ家から隠れ家へと逃亡する時も一緒だったため、ISが至るところにいるように感じていましたが、目撃したことは一度もありません。常に見えない恐怖と闘っているようでした」
「この映画の全てのコマ、全てのシーン、全てのコメントにおいて、幾度も編集室で議論を重ねた上での結果です。でも我々は、暴力から目をそらしたくなかった。最も重要なのは、ラッカの市民が日々感じている現実や恐怖や危険を作品を通して伝えることです。観客に彼らが感じている同じ恐怖や憎悪を感じてほしかったんです。それと同時に、見る人たちには映画館から逃げ出したり、テレビのスイッチを切ってほしくはなかったんです。しかしながら見てもらうためにはバランスが非常に大事なわけで、その結果として、ぼかした部分があります。我々がほどよいバランスで完成させることができたかどうかは、みなさんに判断してもらえばいいと思っています。
「常に我々は彼らの安全には細心の注意を払っていました。彼らがシリアから国外に出ても――トルコやヨーロッパにいる時も――、映画をご覧になれば分かるように、彼らは非常に危険な状態なんです。ですから彼らと連絡を取り合う時は、必ず暗号を使っていました。彼らはIS の脅威に常にさらされているんです。映画の中でも言っていますが、彼らはこれ以上ソーシャルメディア
の影に隠れていたくないと思ったんです。自分たちは実在する人間であり、ラッカの出身者だと世界に示したかったんです。オンライン上の匿名性を隠れ蓑にしていたくなかったんです。これは非常に勇気がいることです。我が身を危険に晒しかねないのに、影から出て自分たちが何者か公表するのは。彼らはそのリスクを背負い込むことを、敢えて選んだのです」
「ラッカは静かに虐殺されている」は、4月14日から東京・アップリンク渋谷、ポレポレ東中野ほか全国順次公開。
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