ゆうばり国際映画祭2018、グランプリは西口洸監督の性春映画「ED」!
2018年3月18日 23:10
[映画.com ニュース] 「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2018」のクロージングセレモニーが3月18日、北海道・夕張市の合宿の宿ひまわりで行われ、西口洸監督による性春映画「ED あるいは (君がもたらす予期せぬ勃起)」がファンタスティック・オフシアター・コンペティション部門のグランプリに輝いたことが発表された。
母親の裸を見て勃起したことをきっかけに、ED(勃起不全)になってしまった男子高校生の性春物語。審査委員長の瀬々敬久監督は、「自分に向き合い、センスの良い独特の切り口で人間を描いていく。弱者への目配りや、優しさが伝わってきた」と講評を述べ、総括として「印象的だったのは、昨日の夜、『スロータージャップ』の阪元裕吾さんチームが来て、『僕は映画を変える』と言っていた。僕も17歳の時に映画が良いなと思ったのは、当時、大森一樹さんや、長谷川和彦さんら若い監督が、既存の撮影システムや、徒弟制度を飛び越えて自主映画を作っていくんだ、という姿にあこがれていました」「変えたいと思う気持ちは大切。僕自身も、ここにいる皆さんも映画に立ち向かっていただけたらと思います」と真っ直ぐに呼びかけてた。
さらにコンペ部門の審査員特別賞は、鳴瀬聖人監督による「温泉しかばね芸者」が受賞。西口監督と鳴瀬監督はともに大阪芸術大学出身なだけに、壇上でがっちり握手を交わすひと幕も見られた。批評家が選ぶシネガーアワードと、北海道知事賞は大庭功睦監督作「キュクロプス」がダブル受賞。大庭監督と、コンペ部門審査員を務めた入江悠監督は師弟関係に当たるだけに、入江監督は「助監督をやってくれていた。(授与は)忖度じゃないですから」と笑い、副賞に米10キロを得た大庭監督は「いま、4カ月の子どもがいまして、家計が苦しくて。10キロの北海道のお米を頂いて、嫁も喜ぶと思います」と破顔した。
続けて入江監督は、「『SR サイタマノラッパー』がゆうばりでグランプリをとって、商業デビューしたとよく言われますが、その前の20代前半、大学生の時に2回参加し、ノミネートしてもらった」としみじみ振り返る。しかし「2回ともボロクソに言われ、当時の審査員長に公衆の面前で罵倒され、涙目で帰ったことがある」といい、「悔しさを20代の時に抱え、いつかあの審査委員長を越してやると思っていた。その経験がずっと生きているし、映画が自分から離れていってしまう気がして、不安で眠れない日々があった、その10年間の蓄積がある。受賞を逃した方には、悔しさを持ち帰って欲しい。またゆうばりでお会いできることを願っています」とスピーチした。
またインターナショナル・ショートフィルム・コンペティション部門のグランプリは、パン屋を舞台にしたブラックコメディ「ぱん。」の手に。発表の瞬間、スタッフ・キャストたちは爆発的な絶叫を上げ、監督の阪元裕吾は全身でガッツポーズ、同じく監督の辻凪子は涙を流して喜びを露わにした。阪元監督は「人に笑ってもらいたいという思いで作った作品。劇場を沸かせられたことは誇りで、本当に嬉しいです」と満面の笑みで話し、辻は「去年、パン屋をクビになったことをきっかけに製作しました。店長に『クビにしてくれてありがとう』と伝えたい。そして昨日、卒業式をゆうばりで迎えました。京都(造形芸術大学)の卒業式を蹴って、ゆうばりに来ました。私ごとですが、日本を代表するコメディアンになりたいです」と決意を述べていた。
恒例の“雪上フォトセッション”も行われ、ゲストや審査員の面々が一堂に会したが、例年よりも約1カ月遅い開催だったため、残念ながら雪の上での写真撮影とならなかった。なおセレモニー終了段階での来場者数は8830人で、昨年から横ばい傾向と発表。本映画祭プロデューサーの深津修一氏は、バスなどのインフラが弱っていく一方の夕張で映画祭を続けていくため、抜本的な対策を立ていくと明かしていた。
受賞結果は、以下の通り。
審査員特別賞:「温泉しかばね芸者」(鳴瀬聖人監督)
北海道知事賞:「キュクロプス」(大庭功睦監督)
シネガーアワード(批評家賞):「キュクロプス」(大庭功睦監督)
スポンサー特別賞(急きょ増設):「アスファルトにも咲き誇る花」(鈴木伸嘉監督)
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