天才シンガー現る!「リメンバー・ミー」藤木直人が見た、石橋陽彩という才能
2018年3月17日 16:00
[映画.com ニュース] 「彗星のごとく」という惹句が、よく似合う。そんな天才シンガーの誕生を、ディズニー/ピクサー「リメンバー・ミー」で目撃した。日本版声優を務めた石橋陽彩(ひいろ)、13歳。まだ中学生の彼の歌声は、まるで色がついているかのように豊かで美しい。同じく声優として参加した俳優・藤木直人は、そのポテンシャルを前に「自分が足を引っ張らないようにしないと」とさえ感じたそうだ。末恐ろしい、その一言に尽きる。(取材・文・写真/編集部)
「モンスターズ・インク」「トイ・ストーリー3」のリー・アンクリッチ監督が、メキシコの祝日“死者の日”を題材にした、笑いと感動のファンタジーアドベンチャー。主人公は、家族の掟で大好きな音楽を禁止されたギターの天才少年・ミゲルだ。あこがれのミュージシャンのギターを弾いたことをきっかけに、まるでテーマパークのようににぎやかな“死者の国”に迷い込み、家族がいる“生者の国”に戻るため冒険を繰り広げる。
石橋はミゲル役を担当し、声優初挑戦ながら、子どもゆえの純真と無鉄砲、抑圧ゆえの恐れと不満を、場面に応じて器用に表現してのけた。インタビュー自体もほぼ初体験で、「緊張しながらしゃべってます」と苦笑したものの、口ぶりは堂々たるもの。コメントもプロ顔負け、13歳ながら積んできた経験値の高さを感じさせる。
石橋「演じていくうちにミゲルの気持ちに近づけて出来たと思います。アフレコでは『小学校5年生くらいの高い声で』と指示されていて、ちょうど声変わりの時期と重なっていたので、高い声を出すことが一番難しかったです」
一方で多彩な表現力を持つ藤木は、ミゲルが死者の国で出会うガイコツ、ヘクターに息吹を注ぎ込んだ。言動も外見も胡散臭いが、胸には「家族に会いたい」という悲痛な思いを秘めた重要キャラ。当初はミゲルを利用し、強引に生者の国に渡ろうとしていたが、互いの境遇を知るうちに特別な絆を育んでいく。
藤木「ヘクターの陽気さと胡散臭さは、どちらも僕にはない要素です(笑)。ただ、ヘクターは『家族に会いたい』という思いを抱えている。それは、僕も家庭を持って、子どもが生まれてすごく共感できる。そこの落差のため、一生懸命胡散臭く演じました(笑)」
そして藤木は、石橋に対して「なんと言っても圧倒的な歌唱力。聞く度に感動していました。エンタテインメントの世界は結局、年齢は関係ないじゃないですか。すでに(表現者として)僕らと同じ立場にいるわけで、陽彩くんは素晴らしいものを持っている。僕は負けないように必死にくらいついて、どの部分で補おうかと考えていました」と称賛を惜しまない。
藤木の言葉通り、石橋の歌唱力には驚かされっぱなしだ。伸びやかで爽快感のある声質、声に思いを込める表現力、繊細な音程の上げ下げを自在に操る歌唱力。どれをとっても一級品、「ジャクソン5」のころのマイケル・ジャクソンをほうふつとさせる。石橋の歌声は、後のキング・オブ・ポップが世に現れた当時、観客はこんな感覚を味わったのだろうと想像させる、そんなインパクトがある。
劇中では、ひとときの惜別と永遠の記憶をつづりアカデミー賞の主題歌賞に輝いた“リメンバー・ミー(Remember Me)”などを歌った。「最初に歌ったとき、(日本版の)音楽演出の方にダメ出しされてしまったんです。普段の歌い方だとミゲルのイメージと違う方向になってしまう、と。技術的な表現は削いで、すごく高い音程で歌うことは難しかったです。普段より、優しい感じで歌っていました」(石橋)。
インタビューを通じて、ミゲルとヘクターの顔に、石橋と藤木の顔の面影を見て取れるようになった。2人も慈しみに満ちた親近感を、キャラクターに抱いていた。
石橋「ミゲルも僕も音楽が大好きで、2人とも歌手になりたい。そこの気持ちが一緒だったからこそ、自分なりのミゲルが出せたんです。自分が歌手を目指していなかったら、演じられなかったと思います」
藤木「自分も高校2年生でギターを持って、音楽をやっていきたい、ギタリストになりたい、そんな思いがありました。ミゲルを見守る気持ちはすごく理解できます。役もそうですが、僕たち自身も“相棒”ですね(笑)」
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