社会派知的ミステリー「修道士は沈黙する」監督が語る映画を読み解くヒント
2018年3月16日 17:30
[映画.com ニュース]「ローマに消えた男」ロベルト・アンド監督の最新作「修道士は沈黙する」が3月17日公開する。権力批判を含みながら“物質主義vs精神主義”を題材に、ドイツの高級リゾートホテルで大物政治家たちの集まりに招かれた修道士が思わぬ事件に巻き込まれていく様子を描いた知的ミステリーだ。来日したアンド監督が作品を語った。
バルト海に面したドイツのリゾート地ハイリゲンダムでG8財務相会議が開かれる前夜。国際通貨基金の専務理事ロシェは、各国の財務相およびロックスター、絵本作家、修道士という3人の異色ゲストを招いて自身の誕生日祝いを開催する。会食後、イタリア人修道士サルスはロシェから告解を受けるが、その翌朝、ビニール袋を被ったロシェの死体が発見される。警察の極秘捜査が進められる中、戒律に従ってロシェの告解内容について沈黙を続けるサルスは、各国財務相の政治的駆け引きに翻弄されていく。トニ・セルビッロが、修道士サルスを演じる。
「彼はアクターでありクリエイターです。単純に演技をするということではなく、何かを映画にもたらしてくれます。もちろん舞台で培ってきたものもありますし、映画でも彼なりのスタイルをもたらした人間です。引き算で演技、表現をする力を持っています。謎めいていて言葉に出さずに自分自身のテーマを表現するということに関して一番優れた素晴らしい役者です。以前からセルビッロとダニエル・ロシェ役のダニエル・オートゥイユが共演したがっていることを知っていたので、この映画で彼らを引き合わせることにしました。また、本作でランベール・ウィルソン演じるキス役ですが、当初はロマン・ポランスキーをキャスティングする予定でした」
「一つは、秘密という点で権力の秘密が描かれているし、それから個人の秘密が対照的な意味で使われています。ロシェが告解で言ったことを大臣たちは気にして計画に関わることではと思っているけれども、実際には彼自身の内的な内密な話であって、それは明かすことができないし、死ぬまで修道士が抱えていくものです。カトリックでは死の前に告解をするということは義務付けられています。ロシェはカトリックとして行動してきた人物ではないですが、死を直前にして彼なりに自分にも許しを得る権利があるはずだと考えるわけです」
「舞台は役者と仕事を一緒にすることができて非常に素晴らしいです。映画も役者と仕事をしますが監督は一人なわけで、その点で全然違っています。なので、それぞれを交互にやっていくのは楽しいです。ドキュメンタリーに関してはいま一番自由な場所だということが言えると思います。クリエイティブな仕事であるのは当然ですが、普通の映画と違って一般の人たちと仕事をするのが面白いです」
「修道士という存在に堅いイメージをもってしまうと思いますが、難しいことは何も考えずに観てほしいです。ある孤独な人間が権力にぶつかっていくことを描いたものです。世の中で一番権力を持っている人たちへ挑んでいきます。ある意味西部劇のような感じで見て頂ければいいですね。いい奴と悪い奴が戦うのですが、西部劇だとサルーンに入っていくような感じで修道士がG8のいるところに入っていく。彼はクリント・イーストウッドのようにテンガロンハットをかぶっているわけではないのですが、その代わりに僧衣を着ているのです」
「修道士は沈黙する」は、3月17日からBunkamuraル・シネマほか全国順次公開。