苦楽を共にした菅田将暉&ヤン・イクチュンが垣間見せた、揺るぎないつながり
2017年10月8日 12:00
[映画.com ニュース] 寺山修司の唯一の長編小説を映画化した「あゝ、荒野」で菅田将暉とヤン・イクチュンは孤独と闘い、自身の存在価値を見いだすためにボクシングに打ち込んだ。鍛え上げられたしなやかな筋肉が躍動し、互いの思いが交錯する2人の戦いは凄絶で切なく、そして美しい。
菅田は当然、リアルタイムでは寺山修司にふれていないが、蜷川幸雄氏が2011年に「あゝ、荒野」を「嵐」の松本潤、小出恵介主演で舞台化。自身も2014年に蜷川氏の舞台「ロミオとジュリエット」に主演しただけに、オファーには運命的なものを感じずにはいられない。
「今思えば、蜷川さんのことを思い出しましたね。見てほしかったなあという気持ちもありつつ、どこかで届けという思いもあったのかなと」
少年院から出たばかりで家も職もなく行き場のない怒りに身を任せて生きる沢村新次と、きつ音と対人恐怖症に悩み自我を解放させたいと願う二木建二。2人は元ボクサーの堀口の誘いでボクシングと出合い、プロを目指していく。
09年に監督・主演の「息もできない」で世界に衝撃を与えたヤンは、同作を配給したスターサンズの社長で今回の企画・製作を務める河村光庸氏が韓国まで持ってきた企画書に心動かされた。
「すごく肉体的で本能的な作品になるんじゃないかと。最近の映画は派手なものが多いけれど、これはちょっと原始的な匂いもする。年齢的にも40歳くらいだったのでなかなかできる役ではない。すぐにやりたいという気持ちになりました」
菅田も「息もできない」をはじめ、日本映画の「かぞくのくに」などヤンの出演作を見ており、その存在に背中を押され大きなモチベーションになったと明かす。
「『息もできない』はパワーと狂気的なもの、怖さが画面から伝わってきた。何本も映画をやっていると、自分が出ていても出ていなくてもどこか客観視することが増えてしまう。でも、『息もできない』はただの観客にさせてもらえた。そのヤンさんとできるのは、純粋に幸せだなと思いました」
一方のヤンも、菅田の存在は知らなかったものの、初対面で新次のキャラクターに通じる野獣性、激情を感じ取っていたようだ。
「急にどこからかオオカミが1匹現れたような気持ちになったんです。映画界にいればだいたい飼い慣らされた動物のようになっていく人が多い中で、全く訓練されていない野生動物がやって来た。脚本や映画を撮る環境といった鎖につないでおかないと大変なことになると思わされました」
2人は撮影の数か月前からプロボクサーとしての体づくりをそれぞれの国で開始。階級を合わせるために菅田は増量、ヤンは減量を求められた。
菅田「もう、ボクシングをいっぱいしました。とりあえずはいっぱい食べて体を大きくして、そこから炭水化物をだんだんカットしていく。試合(の撮影)前日までずっと抑えて、当日に食べると何を食べてもエネルギーに変えられる状態になるんです」
ヤン「僕は『春の夢』という映画の現場で、つま先立ちをしながら歩くことをずっとやって、その後は1日に7~8キロくらい走っては歩いてを繰り返し、腕立て伏せや腹筋をして、日本に来る前にある程度減量はできました」
だが2人にはプロとして戦うため、建二のデビュー戦の相手としても出演しているボクシング指導のトレーナー・松浦慎一郎による、さらなる過酷なトレーニングが待ち受けていた。
関連ニュース
映画.com注目特集をチェック
ホワイトバード はじまりのワンダー NEW
いじめで退学になった少年。6年後、何をしてる――?【ラスト5分、確実に泣く“珠玉の感動作”】
提供:キノフィルムズ
映画料金が500円になるヤバい裏ワザ NEW
【12月“めちゃ観たい”映画が公開しすぎ問題】全部観たら破産確定→ヤバい安くなる裏ワザ伝授します
提供:KDDI
【推しの子】 The Final Act
【社会現象、進行中】鬼滅の刃、地面師たちに匹敵する“歴史的人気作”…今こそ目撃せよ。
提供:東映
モアナと伝説の海2
【「モアナの音楽が歴代No.1」の“私”が観たら…】最高を更新する“神曲”ぞろいで超刺さった!
提供:ディズニー
失神者続出の超過激ホラー
【どれくらいヤバいか観てみた】「ムリだよ(真顔)」「超楽しい(笑顔)」感想真っ二つだった話
提供:プルーク、エクストリームフィルム
食らってほしい、オススメの衝撃作
“犯罪が起きない町”だったのに…殺人事件が起きた…人間の闇が明らかになる、まさかの展開に驚愕必至
提供:hulu
関連コンテンツをチェック
シネマ映画.comで今すぐ見る
父親と2人で過ごした夏休みを、20年後、その時の父親と同じ年齢になった娘の視点からつづり、当時は知らなかった父親の新たな一面を見いだしていく姿を描いたヒューマンドラマ。 11歳の夏休み、思春期のソフィは、離れて暮らす31歳の父親カラムとともにトルコのひなびたリゾート地にやってきた。まぶしい太陽の下、カラムが入手したビデオカメラを互いに向け合い、2人は親密な時間を過ごす。20年後、当時のカラムと同じ年齢になったソフィは、その時に撮影した懐かしい映像を振り返り、大好きだった父との記憶をよみがえらてゆく。 テレビドラマ「ノーマル・ピープル」でブレイクしたポール・メスカルが愛情深くも繊細な父親カラムを演じ、第95回アカデミー主演男優賞にノミネート。ソフィ役はオーディションで選ばれた新人フランキー・コリオ。監督・脚本はこれが長編デビューとなる、スコットランド出身の新星シャーロット・ウェルズ。
ギリシャ・クレタ島のリゾート地を舞台に、10代の少女たちの友情や恋愛やセックスが絡み合う夏休みをいきいきと描いた青春ドラマ。 タラ、スカイ、エムの親友3人組は卒業旅行の締めくくりとして、パーティが盛んなクレタ島のリゾート地マリアへやって来る。3人の中で自分だけがバージンのタラはこの地で初体験を果たすべく焦りを募らせるが、スカイとエムはお節介な混乱を招いてばかり。バーやナイトクラブが立ち並ぶ雑踏を、酒に酔ってひとりさまようタラ。やがて彼女はホテルの隣室の青年たちと出会い、思い出に残る夏の日々への期待を抱くが……。 主人公タラ役に、ドラマ「ヴァンパイア・アカデミー」のミア・マッケンナ=ブルース。「SCRAPPER スクラッパー」などの作品で撮影監督として活躍してきたモリー・マニング・ウォーカーが長編初監督・脚本を手がけ、2023年・第76回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門グランプリをはじめ世界各地の映画祭で高く評価された。
「苦役列車」「まなみ100%」の脚本や「れいこいるか」などの監督作で知られるいまおかしんじ監督が、突然体が入れ替わってしまった男女を主人公に、セックスもジェンダーも超えた恋の形をユーモラスにつづった奇想天外なラブストーリー。 39歳の小説家・辺見たかしと24歳の美容師・横澤サトミは、街で衝突して一緒に階段から転げ落ちたことをきっかけに、体が入れ替わってしまう。お互いになりきってそれぞれの生活を送り始める2人だったが、たかしの妻・由莉奈には別の男の影があり、レズビアンのサトミは同棲中の真紀から男の恋人ができたことを理由に別れを告げられる。たかしとサトミはお互いの人生を好転させるため、周囲の人々を巻き込みながら奮闘を続けるが……。 小説家たかしを小出恵介、たかしと体が入れ替わってしまう美容師サトミをグラビアアイドルの風吹ケイ、たかしの妻・由莉奈を新藤まなみ、たかしとサトミを見守るゲイのバー店主を田中幸太朗が演じた。
奔放な美少女に翻弄される男の姿をつづった谷崎潤一郎の長編小説「痴人の愛」を、現代に舞台を置き換えて主人公ふたりの性別を逆転させるなど大胆なアレンジを加えて映画化。 教師のなおみは、捨て猫のように道端に座り込んでいた青年ゆずるを放っておくことができず、広い家に引っ越して一緒に暮らし始める。ゆずるとの間に体の関係はなく、なおみは彼の成長を見守るだけのはずだった。しかし、ゆずるの自由奔放な行動に振り回されるうちに、その蠱惑的な魅力の虜になっていき……。 2022年の映画「鍵」でも谷崎作品のヒロインを務めた桝田幸希が主人公なおみ、「ロストサマー」「ブルーイマジン」の林裕太がゆずるを演じ、「青春ジャック 止められるか、俺たちを2」の碧木愛莉、「きのう生まれたわけじゃない」の守屋文雄が共演。「家政夫のミタゾノ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭が監督・脚本を担当。
文豪・谷崎潤一郎が同性愛や不倫に溺れる男女の破滅的な情愛を赤裸々につづった長編小説「卍」を、現代に舞台を置き換えて登場人物の性別を逆にするなど大胆なアレンジを加えて映画化。 画家になる夢を諦めきれず、サラリーマンを辞めて美術学校に通う園田。家庭では弁護士の妻・弥生が生計を支えていた。そんな中、園田は学校で見かけた美しい青年・光を目で追うようになり、デッサンのモデルとして自宅に招く。園田と光は自然に体を重ね、その後も逢瀬を繰り返していく。弥生からの誘いを断って光との情事に溺れる園田だったが、光には香織という婚約者がいることが発覚し……。 「クロガラス0」の中﨑絵梨奈が弥生役を体当たりで演じ、「ヘタな二人の恋の話」の鈴木志遠、「モダンかアナーキー」の門間航が共演。監督・脚本は「家政夫のミタゾノ」「孤独のグルメ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭。
文豪・田山花袋が明治40年に発表した代表作で、日本の私小説の出発点とも言われる「蒲団」を原案に描いた人間ドラマ。物語の舞台を明治から現代の令和に、主人公を小説家から脚本家に置き換えて映画化した。 仕事への情熱を失い、妻のまどかとの関係も冷え切っていた脚本家の竹中時雄は、彼の作品のファンで脚本家を目指しているという若い女性・横山芳美に弟子入りを懇願され、彼女と師弟関係を結ぶ。一緒に仕事をするうちに芳美に物書きとしてのセンスを認め、同時に彼女に対して恋愛感情を抱くようになる時雄。芳美とともにいることで自身も納得する文章が書けるようになり、公私ともに充実していくが、芳美の恋人が上京してくるという話を聞き、嫉妬心と焦燥感に駆られる。 監督は「テイクオーバーゾーン」の山嵜晋平、脚本は「戦争と一人の女」「花腐し」などで共同脚本を手がけた中野太。主人公の時雄役を斉藤陽一郎が務め、芳子役は「ベイビーわるきゅーれ」の秋谷百音、まどか役は片岡礼子がそれぞれ演じた。