田中麗奈が体現してみせた、なまめかしささえ漂わせる強烈な印象
2017年8月25日 18:00

[映画.com ニュース] 女優の田中麗奈が、8月26日公開の「幼な子われらに生まれ」で、2人の娘を連れてバツイチ同士で再婚し、新しい夫との間に新たな命を宿している専業主婦という難役に挑んだ。昨年、死刑囚と獄中結婚する女性を演じた「葛城事件」を見てオファーした三島有紀子監督のラブコールに、いかなる方法論で臨んだのか。
「すごく意外でしたけれど、全然違う役をやらせたらどうなるだろうと興味を持っていただけたことがうれしかったですね。監督は『葛城事件』より多分難しいとおっしゃっていて、自分でもそう思いました。今回の奈苗は、たとえば意思がしっかりとあって目的を達成するために前に進むというような分かりやすい役ではないので」
奈苗は良き父親になろうとする信に依存し、弱さもさらけ出すような女性。田中も母親役の経験はあるが“3人”というのは初めてだった。
「ちょうど3人目を妊娠している友人がいたので、どう日常を過ごしているかを聞きました。ゆっくりとひょこひょこ歩くイメージがあったんですけれど、上が2人いるとそんなにのんびりもしていられない。意外とてきぱきしていて、腰が痛くなる、座る時に足が開いちゃうといったことを教えてもらいました。あとは、リハーサルで自分の居心地のいい場所を探っていった感じです」
重松清氏が1996年に発表した原作小説、荒井晴彦氏の脚本とも、男性目線で描かれている趣が強く、奈苗のバックボーンなどは離婚の原因が前夫のDVであること以外、詳述されていない。そこは同性である三島監督の存在が心強かった。
「脚本には女性のちょっとイヤなところが出ている部分もありましたが、三島監督は女性は女性でストレスをためているけれどわざと表に見せないだけ、のらりくらりとしているようで実は賢いといった、奈苗の良さ、素敵さをすごく探してくれようとしたので、融合してでき上がった役のような気がします」

信役の浅野忠信とは初共演。信は子会社に出向になったことや前妻と会ったことなどを言い出せずにいる。一方の奈苗は、感情の赴くままに言葉を連ねる。いびつな家族の形にお互いがストレスを募らせながらも、互いの家族観が垣間見えるやりとりに引き付けられる。
「以前から浅野さんの作品を見て映画っていいなあと思った世代なので、共演が決まった時はうれしかったですね。描いているのはすれ違いだったりで、もしかしたらよくある夫婦の関係なのかもしれないけれど、2人のどちらかがボールを投げ、どちらかが受け止めるという分かりやすい感じではなかったですよね」
さらに、お互いの前配偶者らの思いも絡まり2人は家族、親子、夫婦、幸せとは何かを問われていく。そして、ひとつの帰結を迎えるが、奈苗は体温が伝わるほどの生々しさで、時になまめかしささえ漂わせる強烈な印象を残した。「葛城事件」に続き大きなハードルを乗り越えた充足感からか、田中も「ひとつの作品を終えたいい疲労感とちょっとした寂しさ、幸せ感がすべて重なった感じ」と声を弾ませる。
「連れ子がいて再婚する夫婦の現実を、すごくリアルに描いているんですよね。想像でしかなかった世界を、全員の気持ちに寄り添ってセリフや視覚で残しているんです。どのように受け止めていただけるか興味がありますし、『あっ、これ見たかった。聞いておきたかった』という方に届けばと思っています」
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