黒沢清、教え子・廣原暁監督作「ポンチョ」は「前半は70年代東映映画、後半は相米慎二」
2017年8月12日 19:30

[映画.com ニュース] 新鋭・廣原暁監督が早見和真氏の青春小説を映画化した「ポンチョに夜明けの風はらませて」のトークイベントが8月12日、東京・新宿シネマカリテで行われ、廣原監督と恩師である黒沢清監督が出席した。
処女作「世界グッドモーニング!!」がポン・ジュノやジャ・ジャンクーら名だたる巨匠から激賞を受け、長編デビュー作「HOMESICK」も高い評価を受けた廣原監督による青春ロードムービー。太賀、中村蒼、矢本悠馬、染谷将太ら実力派若手俳優が共演し、卒業を目前にした男子高校生が旅のなかでさまざまな人と出会い、それぞれの生き方を発見していく姿を描く。
廣原監督にとって、黒沢監督は東京藝術大学大学院時代の師匠に当たる。この日が2度目の鑑賞だという黒沢監督は、「だいぶ違う印象だった」と語り、「1回目は程々にすればいいのにバカなことをやり通し、行き着くところまで行く典型的な青春映画という印象だった。しかし今回は、青春映画でもないという気がしてきた。青春映画風だが、最初からこの人たちには帰る場所がない。社会からドロップアウトしていく、ニヒリスティックな、不吉な人生のある一時期の気配がした」と述べた。
そう感じた最大の理由は、キャスティングにあるという。黒沢監督は「1人も高校生(の年齢の俳優)がいないから。実はいい年した大人が一度だけ高校生の気分に戻り、結局社会を背にしてどこかに突っ走っていくという、悲壮な、だからこそただならぬ緊張感があるように思えた」と分析。配役の狙いを問われた廣原監督は、「最初からリアルな高校生を使うつもりはなかった」と明かし、「リアルな高校生だとナチュラルな映画や演出になってしまう。端からナチュラルには興味がなく、自然さなどとは別のフィクショナルなものをやりたかったんです」と答えた。
さらに黒沢監督は、「中盤、(主人公たちが)海にたどり着くシーンからガラリと雰囲気が変わった。前半と後半でタッチが違う」と評し、「前半は1970年代の東映映画」「後半はだんだん相米慎二監督の匂いもしてきた」とキーワードを挙げる。「前半は東映マーク(東映ビデオ)から始まって。70年代の東映映画には、青春ものの名を借りて大人が滅茶苦茶やってやろうという時期があった。鈴木則文さんや『不良番長』シリーズみたいに、山城新伍さんらが平気で高校生役をやったりする。そういう意識はあった?」「滅茶苦茶という点で言うと、後半は相米タッチだった」と詳述すると、廣原監督は「脚本段階で意識はありました。鈴木則文さんの『トラック野郎』とかの、ぶっ飛んだ印象です」といい、「狙ったつもりはないんですが、撮影の時に薄々(相米タッチに)なる気はしていました。太賀くんが焚き火で歌うシーンは、『台風クラブ』の“あのシーン“へ向かっていきましたね。現場で見て『台風クラブ』みたいだと思いました」と話していた。
「ポンチョに夜明けの風はらませて」は、10月28日から東京・新宿武蔵野館ほかで公開。また黒沢監督の「散歩する侵略者」は、9月9日から公開される。
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