「私の映画は普通の人々の話を語る」フィリピンの鬼才メンドーサがカンヌ受賞作語る
2017年7月28日 16:00
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[映画.com ニュース] フィリピンの鬼才ブリランテ・メンドーサ監督最新作「ローサは密告された」が7月29日公開する。同国の麻薬、貧困問題を描き、主演のジャクリン・ホセが第69回カンヌ国際映画祭で主演女優賞を受賞した作品だ。45歳で映画監督デビューし、「第3黄金期」と呼ばれる現在のフィリピン映画シーンを牽引するメンドーサ監督が自身のキャリアと作品について語った。
「マイク・デ・レオン監督です。彼の「KISAPMATA」(81)に最も影響を受けました。リノ・ブロッカ監督も好きですし、イシュマエル・バーナル監督も観ています。フィリピンで彼らの映画の洗礼を受けていない映画監督はいないでしょうね。世界的な監督の作品に接する機会が長らく我々の国にはありませんでした。そんな中でダルデンヌ兄弟の作品には影響を受けました。また、フランソワ・トリュフォーの初期作品も好きですね」
「自分たちの時代を物語る、フィリピン人の物語だと思います。いま何が起きているかを反映させるというのは前の世代と同じです。いまの私たちはより自由に物語を語ることができます。第3黄金期と言われる私たちの世代は、“現実を映す物語”を語るのにより積極的です」
「私は実際に起きていること、現実を見せたいといつも思っています。同時にそこには物語、創作もあります。フィクションであっても、そのシーンが演出されたものであっても、誠実に表現すれば、それは真実味のある、現実であると信じられるものになります。カメラを固定するなど、ありきたりな映画制作方法では、真実を語れません。私の映画では、手持ちカメラを使います。それによってカメラが狭い通路でも歩けて、その場所の中でしっかりと人との関係性を築くことができるのです」
「私はそのキャラクターの人物を知る前に、その人間性(人間らしさ)を見たいと思っています。一般的に人は“良い人”“悪い人”と分けて考えます。どんな国でも、“良い人”と“悪い人”がいて、ある人は良いことができて、ある人は悪いと決めつけます。私が着目するのは、フィリピン人かどうか、金持ちか貧乏かに関わらず、まず人間であるということです」
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「舞台は実際のマニラの中心部の一角です。その土地を非難したいわけでないので、具体的な場所は申し上げられません。この物語は大都市であればどこででも起こりうる物語なのです。この一家は、現在のフィリピンの80%と言われる貧困家庭です。彼らは中の下クラスに入りたいと願っていますが、子供たちの中には教育を受けている者もいるので、それは叶うかもしれません。でも、ローサたちの店は非常に小規模で、稼ぎは一日10ドル足らずです。それっぽっちのお金でどうやって生きていけばいいのか。私は、フィリピンの80%に関わる物語を描くことが、この国全体を語ることになると思っています。20%の裕福な階級はこの国の代表ではないのです」
「芸術家とは現在起こっていることを反映するものです。画家であれ、音楽家であれ、作家であれ、インスピレーションは身近な環境から生まれるのです。この映画を作ることは私にとって必要なことでした。この物語は語らねばならない。しかし、ルポルタージュはジャーナリストの仕事です。そうではなく、人々を教育し、人々に知らせるためです。楽しませるためでもありません。現在、映画界を支配している映画は人々におべっかを使う、嘘っぱちの物語で、私たちの周囲にある世界を反映したものではありません。私の映画は、ポルノのように貧しさを見世物にすることはしない。普通の人々の話を語るのです」
「私が監督になったのは非常に遅く、45歳くらいの時で、主に広告の世界で働いてからでした。私は流派に属しません。できるだけリアルでいたいと思いますし、ドキュメンタリーとフィクションの境目は曖昧であってほしいと思います。もちろんこの作品はフィクションです。俳優がいて、舞台があって、作られたシナリオがありますが、ドキュメンタリーの形式をとっています。現実に近づけば近づくほど、映画に真実が宿り、本物の生活を反映するのです。セリフや衣装や状況は最大限本当らしくなければなりません。もちろんこれは人に衝撃を与えるやり方で、真実を見たくない観客もいるでしょう。というのも映画が真実を見せることは稀だからです。でも私の映画の観客は勇敢で、世界について知りたいと願っているのです」
「ローサは密告された」は、7月29日から、シアター・イメージフォーラムほか全国順次公開。
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