鬼才ポン・ジュノが語る、2017年最大の“問題作”の運命と「映画」への思い
2017年6月29日 12:00
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映画は、韓国の山奥で育った少女ミジャが、多国籍企業に連れ去られた巨大生物“オクジャ”を取り戻すために、韓国からアメリカへと旅するアドベンチャー。「グエムル 漢江の怪物」や「スノーピアサー」で知られるジュノ監督は、「私にとって初めての“ラブストーリー”」と相好を崩すが、「後半にいけばいくほど、私たちが生きているこの世の中の残酷な現実が浮き彫りになっていく」と一筋縄ではいかないことをにおわせる。
温厚なカバのような不思議な生物“オクジャ”の正体は、地球の食糧危機を救うべく開発された“スーパーピッグ”。たどり着く場所は食肉処理場だ。そこでは、現代社会に暮らす人間の目から巧妙に隠されている残忍な現実が観客に突きつけられる。遺伝子組み換え食品や食肉産業にまつわる問題を直視した結果、本作は数奇な運命へと導かれていく。
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「リアルなCGの豚が登場するし、韓国だけでなく、アメリカのニューヨークまで行って撮影するので予算の規模が大きくなりました。製作費が500億ウォン(約50億円)を越えるため、自然と韓国やアジアではなく、アメリカの映画スタジオを念頭において製作準備を進めたわけです」
「ハリウッドのメジャースタジオのほとんどは、『食肉処理場の場面は本当に撮影するのか?』と気きまずそうな反応で、『この場面を削除するんだったら、一緒につくりたい』というアプローチでした。一方、Netflixは、最終の編集権は監督にある、シナリオは変更しなくていい、予算は全面的にサポートするなど明確でした。ですから、必然的にNetflixと仕事をすることになったんです。この映画が必要とする会社だったと考えています」
本作は第70回カンヌ国際映画祭でコンペティション部門に入選するも、フランスでの劇場公開を予定していなかったため、仏興行界が猛反発。開幕の時点で受賞の可能性を否定され、来年からは仏国内での劇場公開がコンペ入選の条件となった。ジュノ監督はこれほどまでの議論になるとは予想していなかったという。
「そもそも映画祭というのは、話題や論争を求める傾向にあります。最初の雰囲気を盛り上げる意趣を探しているのだと思うのですが、今回『オクジャ Okja』がその役割を担ったのであれば、すごくうれしいことですし、またこの映画が背負っている運命だったのではないかとも思います」
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Netflixの「劇場公開とオンライン配信の同日スタート」という方針は、「映画=映画館で見る」という前提を大きく揺るがしている。映画の鑑賞スタイルは今後さらに多様化すると考えられるが、ジュノ監督の姿勢は揺るがない。
「私の場合、何かを決めるときにテクノロジーや鑑賞方法を基準にしたことはありません。いつだって“物語”の優先順位が最も高く、その物語に適した映画づくりをしてきました。『物語をどうしても伝えたい』という押さえきれない気持ちがあったとき、その思いで映画をつくってきました。ですから、新しいメディアや技術の登場によって、私の映画づくりが変わることはないでしょう」
一方で、現在13歳ながら10年の芸歴を誇るソヒョンは、「行く先々でいろんな論争が生まれていたので、ちょっと戸惑ったりもしました」と告白しながらも、「どんな方法で映画を見るにしても、美しい物語を見せられればいいなと思いますし、人々に見てもらいたい内容が伝わればどんな映画でも撮られるべきだと思います」と頼もしい答え。テレビと映画が共存できたように、ネット配信が劇場上映を滅ぼすことはないと持論を展開したジュノ監督同様、映画の未来を信じているようだ。
記者会見では、「韓国では100館以上で公開されるし、世界各地の映画祭での上映も続々と決まっている」「Netflixでは、創作の自由があると同時に、劇場公開に関する希望もある程度満たされる」とプラスの面を強調したジュノ監督だが、インタビューの最後の最後に「スマートフォンで見るのは遠慮してもらいたいなあ。タブレットがギリギリかな(笑)」と本音をポロリ。鑑賞スタイル、ひいては映画のビジネスモデルをめぐる論争はまだまだ尾を引きそうだ。
「オクジャ Okja」は6月29日からNetflixで全世界オンライン配信。
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