永瀬正敏、河瀬直美監督との再タッグ作「光」に万感「自分の遺作を見た気分」
2017年4月28日 05:00
第70回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門に正式出品が決定している本作は、弱視が進行しているカメラマン・中森雅哉(永瀬)が、バリアフリー映画のモニター会で音声ガイドを作成する尾崎美佐子(水崎)と出会い、衝突しながらも理解を深めていくラブストーリー。
河瀬監督は「難産でした。初号試写を終えた後、立ち上がれずに感謝しました」と万感の思いを告白。「映画は見えなくなってしまった人に無縁のものというイメージがある。(視覚障がい者向けに)映画を見られるようにしている人たちがいると知ったときに、見えなくても感じていることがあるかもしれない、と。人と人の関係性を表現するのに、見える、見えないという分け方じゃなくこの映画が存在できるのではないかと思いました。河瀬直美のすべてを注ぎ込みました。世界で1番素晴らしい映画です」と力強く語った。
カンヌ国際映画祭の正式出品が決まった際には「フランス側のプロデューサーから明け方に電話があって。受けた瞬間にリビングに朝日が昇ってきた」(河瀬監督)といい、号泣しながら永瀬に電話したという。日本人で初めて3年連続で出演作がカンヌ国際映画祭に出品された永瀬は「ありがとうございます、おめでとうございますとしか言えなくて。僕も電話を切った後、号泣しました」と回想。河瀬監督が「朝の6時くらいに電話したのに、ワンコールで出た」と明かすと、会場からは笑い声が上がった。永瀬自身、初号試写を終えた際には「見た後には言葉が出なくなって、1人になりたくて会場の外に出ました。いろんなものを消化したくて。すべてを置いてきた感がありましたね。自分の遺作を見たような気分になったんです」と特別な感情が込み上げてきたと振り返った。永瀬とはデビュー作「ションベン・ライダー」以来の仲となる藤は「育つもんですね。おめでとう」と温かな言葉でねぎらっていた。
永瀬の相手役を務め、カンヌ国際映画祭初参加となる水崎は「皆さんから『おめでとう』と言っていただくなかで少しずつ実感がわいてきた。1つのものに皆さんが本当に愛情を注いできた作品なんだなと思いました。撮影中も孤独な時間が多かったのですが、それぞれが監督を筆頭にみんな愛を注いできました。この作品が世界中から集まった方から見てもらえるかと思うと、本当にうれしい」と目に涙をため、時折声を詰まらせながら喜びを語った。イベントの最後には、観客から「カンヌ、行ってらっしゃい!」と登壇者に向けてエールが贈られ、河瀬監督は顔をほころばせ、永瀬は深々とお辞儀をして感謝を示していた。
「光(河瀬直美監督)」は、5月27日から全国公開。