サイモン・ペッグが説く「スタトレ」ファミリーの絆とシリーズが示す理想像
2016年10月26日 16:45
[映画.com ニュース] 人気SFシリーズの劇場版最新作「スター・トレック BEYOND」を引っさげ、共同脚本と出演を兼ねたサイモン・ペッグが来日した。オリジナルのテレビドラマ「宇宙大作戦」の誕生から50年という節目の年を飾った本作に二足のわらじで挑んだペッグが、「スタトレ」ファミリーの絆、そしてシリーズが示す理想像を説いた。
前2作に続きエンタープライズ号の主任機関士スコッティを演じたペッグは、ポップカルチャーに造詣が深く、これまでも自身の主演作でオマージュをちりばめながら、独自の声を持った脚本を生み出してきた。今回、満を持して長寿シリーズの新章をつづることになったが、「50年の歴史に見合う優れた作品を作り上げなければ」というプレッシャーは大きかった。さらに「脚本家は製作スタッフ側だから、キャストの仲間ではなくなってしまうのではないか」という不安にも襲われた。しかし、「ふたを開けてみれば、キャスト代表みたいな立場で脚本に取り組めた。みんなは質問や要望があると、ぼくのところに話しに来てくれたから、その意見をまとめながらうまい具合に執筆できたよ」と、9年来の付き合いになる“ファミリー”の絆を明かす。
おなじみの面々が再集結した一方で、監督は前2作のJ・J・エイブラムスから「ワイルド・スピード」シリーズのジャスティン・リンにバトンタッチ。「ジャスティンはすばらしいアクションが構成できるだけでなく、インディペンデント映画出身だからこじんまりした人間ドラマも語れる。ぼくとダグ(・ユング)は常にキャラクター描写を大切にしていた。ジャスティンは、見事なアクションシーンを構成してくれたし、人間的でパーソナルな要素を物語の中で維持しようとしたぼくらのことも信頼してくれたよ」。リン監督のダイナミックさと、ペッグ&ユングの繊細さがより合わさったのだが、実は本作の肝である“エンタープライズ号大破”をめぐり「白熱した議論、というか言い争い」があったという。
「『スター・トレック3 ミスター・スポックを探せ』や、『ジェネレーションズ』ですでにエンタープライズ号を破壊しているから、ジャスティンはやりたがったけど、ぼくは承服できなかった。でも、説明を聞いていいアイデアだと納得したよ。クルーを実際に物理的に結び付けている宇宙船が突然、それも乱暴に奪い取られた時、彼らはどうなるのか? 家族同然のクルーたちは、バラバラになっても再びひとつに戻れるのか? それこそがジャスティンの描きたいことだったんだ」
宇宙船救出ミッションの最中に敵襲に遭い、未知の惑星で散り散りになったクルーたちは、2人1組となって再会を目指す。船長のカークと最年少クルーのチェコフ、論理を重んずるスポックと感情的なボーンズ、いままでやりとりが描かれることの少なかったウフーラとスールー、そしてスコッティと新キャラクターの異星人ジェイラ。意外な組み合わせは、各々の個性を引き出すとともに、大ピンチでも揺るがない強い信頼を浮かび上がらせる。「団結や協調の長所、個人でいるより束になって協力し合えばずっと実りが多くなるし、進歩できるという事実をこの映画で伝えている。それは現代社会にも通ずることさ」
ド派手なアクションに織り込まれたのは、シリーズの生みの親ジーン・ロッデンベリーが“宇宙開拓”のアドベンチャーを通して発信してきた、“多様性”や“共存”、そして“平和”の理念だ。そのスピリットを新たな物語に落とし込んだペッグは、「現在の社会がロッデンベリーの理想に近づいていたらどんなにいいだろう」と嘆き、イギリスのEU離脱やアメリカのドナルド・トランプを例に、「人々を分断させる壁を建設しようとか、『スター・トレック』の理想に逆行するような感情が世界中に渦巻いているように感じる」と言う。
「このシリーズで描かれる、人々が協力し合うユニバースは、僕たちがいまなお心から願っている未来像だと思う。現時点では、たったひとつの惑星のなかでさえいがみ合ったり、いざこざを起したりしている。アジアがEU離脱のような深刻な社会問題に直面しているはわからないけど、不和や憎悪をこれでもかというほど目にすると悲しくなるんだ。現在のこうした状況が、『スター・トレック』のような未来へたどり着くための最後の葛藤(かっとう)であってほしいね。ぼくたちはよりよい人間になれるって大いに期待しているよ。善人はみんなそう望むにきまっているから、まずは悪いやつらを追っ払わないとだな(笑)」
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トニー・レオンとアンディ・ラウが「インファナル・アフェア」シリーズ以来、およそ20年ぶりに共演した作品で、1980年代の香港バブル経済時代を舞台に巨額の金融詐欺事件を描いた。 イギリスによる植民地支配の終焉が近づいた1980年代の香港。海外でビジネスに失敗し、身ひとつで香港にやってきた野心家のチン・ヤッインは、悪質な違法取引を通じて香港に足場を築く。チンは80年代株式市場ブームの波に乗り、無一文から資産100億ドルの嘉文世紀グループを立ち上げ、一躍時代の寵児となる。そんなチンの陰謀に狙いを定めた汚職対策独立委員会(ICAC)のエリート捜査官ラウ・カイユンは、15年間の時間をかけ、粘り強くチンの捜査を進めていた。 凄腕詐欺師チン・ヤッイン役をトニー・レオンが、執念の捜査官ラウ・カイユン役をアンディ・ラウがそれぞれ演じる。監督、脚本を「インファナル・アフェア」3部作の脚本を手がけたフェリックス・チョンが務めた。香港で興行ランキング5週連続1位となるなど大ヒットを記録し、香港のアカデミー賞と言われる第42回香港電影金像奨で12部門にノミネートされ、トニー・レオンの主演男優賞など6部門を受賞した。
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