親が「エル・クラン」“狂気の父”にそっくりだった?放送作家・町山広美、壮絶体験を明かす
2016年8月24日 13:00

[映画.com ニュース] 「オール・アバウト・マイ・マザー」「トーク・トゥ・ハー」などを手がけたスペインの巨匠ペドロ・アルモドバル監督が製作を務め、第72回ベネチア国際映画祭で銀獅子賞(監督賞)を受賞した映画「エル・クラン」のトークイベントが8月23日、都内で行われ、翻訳家の金原瑞人氏と放送作家・映画ライターの町山広美氏が出席した。
誘拐事件を繰り返し、生計を立てていた実在の家族の闇を描く本作。1983年のアルゼンチン、父アルキメデス(ギレルモ・フランチェラ)と母、5人の子どもたちで構成されるプッチオ家は、表面上は幸せに暮らしていたが、アルキメデスは次男アレハンドロ(ピーター・ランザーニ)を巻き込み、自宅の2階に誘拐した人間を監禁するという大胆すぎる犯行を重ねていた。本国アルゼンチンでは300万人を動員するヒットをたたき出したほか、米映画批評サイト「Rotten Tomatoes」では満足度91%という高評価を記録した。
バラエティ番組「マツコの知らない世界」などを手がける町山氏は、本作が実話であることに衝撃を受けたといい「(最後に語られる)お父さんのその後に至っては金づちでガッとやられたよう。試写室ではなるべく声を出さないようにしているんですが、『えー!』と声が出た」と振り返る。フランチェラ演じるアルキメデスの目つきに注目し「鳥みたいな目をしている。うちの母親が25億円の借金をして突然現れたときにああいう目つきをしていた。今ある事実を認められない、私は悪くないと思う人はああいう目つきをする」と自身の体験を踏まえて分析する。
さらに、アルキメデスが秘密警察だった点を踏まえ「家族を養うために人を拉致してごう問していた。同じことをやっているだけで、今まではお給料をもらっていたんです」と罪の意識が薄いゆえんを解説。白昼堂々、通行人を誘拐するアルキメデスの手口に「犯罪としての意識が薄い。本当ゆえの雑さですね」と見解を述べた。
児童文学の翻訳を多数手がける金原氏は「怖い話のわりに皮一枚で怖くない。(誘拐の手法も)リアリティないなと思っていたら、実話と聞いて『え!』となった」と語り、本作の特徴としてプッチオ家の家族像を挙げる。「父の持つ呪縛感、(父親が)家族をしっかり縛って動かしている。(プッチオ家に)家族愛ってあるのか? でも1つにまとまっているから余計に不気味」と二面性がかもし出す得体のしれなさについて語った。
「エル・クラン」は、9月17日から全国公開。
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