武田梨奈、主演作「海すずめ」で噛みしめた“当たり前ではない結果”
2016年7月1日 17:30
[映画.com ニュース]愛媛・宇和島の豊かな風景を活写した映画「海すずめ」が、7月2日から全国で公開される。主演の武田梨奈が映画.comのインタビューに応じ、今作で感じた思いや第88回米アカデミー賞授賞式から得た刺激、そして抱いた夢を語った。
仙台藩祖・伊達政宗の長男・秀宗が宇和島へ入部してから、400年の節目に行われた「宇和島伊達400年祭」を記念し、愛媛出身の大森研一監督がメガホンをとり製作したオリジナル作品。2作目が書けず地元にUターンし、市立図書館自転車課で働くようになった小説家・赤松雀が、400年祭で必要になる図録探しや自転車課存続のため奔走する姿を描く。
武田が演じた雀は、胸の内に様々な感情が渦巻いていながらも、対外的に発散することがない女性。内面の葛藤と曖昧な表情がメインとなるだけに「難しい役でした」と吐露し、「監督からは『白でも黒でもない、グレーを演じて欲しい』と言われていました。雀ちゃんは思い切り笑ったりもしなければ、いつも苦笑いや愛想笑いばかりしていて、しかもすごくつらい顔や泣いたりもしない。やる気のない部分が見える一方で、芯の強さも見えるという、微妙なラインでした」と明かす。
当初は困惑したようだが、父役・内藤剛志との共演シーンが転機となった。「父とうまくいかなかった雀が、中盤で父の思いを知る場面があります。私はカメラテストの時に泣いてしまったんですが、監督からは『この映画では絶対に雀に泣いてほしくない』と。感情が高ぶっているのに、泣いてはいけないという演出が、雀の微妙な感情につながったと思います」。
穏やかな時間が流れる今作では、最も得意とするアクションを封印。しかし、どのような役どころであっても、一挙手一投足にはアクションと同等の配慮が必要になるという。ロケでは空撮のため、ドローンが効果的に使用されたが、武田は「ドローンだと役者の全身が映りますし、だからこそ表現が難しいんです」と話す。さらにブルース・リーの所作を引き合いに、「ブルース・リーは絶対につま先から頭まで映っているんです。(全身を美しくコントロールするのは)本物にしか出来ないと言われていて、倉田保昭さんに『武田梨奈はそうなれ』と言われました。『海すずめ』ではロードバイクに乗っていますが、ペダルをこぐ足をはじめ、全身を意識しました」と振り返った。
今年2月に、WOWOWのレッドカーペット・ナビゲーターとして第88回アカデミー賞授賞式に参加した武田は、現地で計り知れない刺激を受けた。「(主演男優賞の)レオナルド・ディカプリオさんが、『この賞を得たことも、ここにいることも、当たり前だとは思いません』とおっしゃっていました。私のなかにすごく響いています。こうやって取材して頂いていることも当たり前ではないし、主演作が公開されることも当たり前ではないと感じています」と表情を引き締め、「『いつかアカデミー賞のレッドカーペットを歩きたい』とは、簡単に言えることではないです。夢のまた夢と思っていましたが、でも今は、胸を張ってそう言いたいです」と意欲をほとばしらせた。
一躍注目を集めた“瓦割り”から約2年。これまでの道程で「成果は当たり前ではない」ことを痛感した武田は、「海すずめ」では「日々感謝」を胸に刻み続けた。「現場を通して、映画は1人で出来ない、自分は支えられていると改めて感じさせて頂きました」と目を細め、「映画をずっと見ていて、スクリーンに名を刻まれる人になりたいと思っていました。でも主演として最初に名前がくるのは、いまだに夢のようです」と謙虚な姿勢を貫いた。
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