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イザベル・ユペール、深田晃司監督「淵に立つ」を「豊かで哲学的な作品」と賞賛

2016年6月26日 07:30

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それぞれの映画哲学を熱く語った
それぞれの映画哲学を熱く語った

[映画.com ニュース]フランス映画祭2016の関連企画、マスタークラス「現代映画における演技と演出」 が、6月25日に東京・御茶ノ水のアテネフランセ文化センターで開催され、「愛と死の谷」主演のイザベル・ユペールギョーム・ニクルー監督、「淵に立つ」で本年度カンヌ映画祭「ある視点」部門審査員賞を受賞した深田晃司監督がそれぞれの作品について語った。

淵に立つ」を鑑賞したユペールは、「とても不安にさせられ、次に何が起こるのかまったく予想ができない状態になります。豊かで哲学的な作品。善と悪、あるいは復讐などの深いテーマと、演出の効果で、サスペンスのような緊張感が漂っています。映画が我々に与えてくれるものを目いっぱい使っている。複雑なテーマについて考えさせる作品だと思います」と賞賛し、観客に判断を委ねるようなラストシーンにした理由を深田監督に質問した。深田監督は「私は映画がひとつの答えを与えてしまうのが好きではありません。結末は観客が100人いたら、100通りの想像力の中で膨らむものを作りたいと思っています」と答えた。

愛と死の谷」はユペールとジェラール・ドパルデューが共演し、離婚した夫婦が自殺した息子からの手紙に導かれ、アメリカで再会する物語。ユペールにとって、ニクルー監督作への出演は「修道女」に続き2本目で、「彼の飾り気のないシンプルな仕事の仕方がとても好き。テイクの数も少なく、その前に議論をすることも少ない。そういったことはモーリス・ピアラ的なところがかなりあると思います」といい、今作「愛と死の谷」の脚本を「まず旅行かばんを引きながら後ろから撮るという人物の紹介の仕方が気に入った」「不思議な疎外感、会話は日常的なのにオリジナルに富んでいる。登場人物たちが下界からは切り離された存在だということを脚本でも、出来上がった作品でも見ることができる」と評した。

俳優の演出方法を問われたニクルー監督は、「沈黙の方が説明をするより、多くを語ると思います。私は映画をどう進めるか事前に考えずに、俳優と一緒に作り上げていくことを大切にしています。映画のパラドックスですが、真摯に嘘をつく作業をし、それが成功したときに何らかの真実が映画に現れてきます。その不確実性を俳優と分かち合うことを好んでいます。私は俳優という存在が好きなのではなく、イザベル・ユペールという人間の中から現れ出てくるものから、一種の錬金術を行うのです。共に作っていく作業が重要であって、それは言葉では言い表せないものなのです」と語った。

「フランス映画祭2016」は6月27日まで、有楽町朝日ホール、TOHOシネマズ日劇で開催。

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