コラムニスト山崎まどか、「裸足の季節」に“We are not things.”と同調!
2016年6月20日 17:00

[映画.com ニュース] 第88回アカデミー賞の外国語映画賞候補に選出され、新感覚のガールズムービーとして注目を集めている「裸足の季節」(公開中)のトークイベントが6月19日、都内で開催され、コラムニストの山崎まどかと少女漫画研究家のトミヤマユキコが参加した。
トルコ出身の女性監督デニズ・ガムゼ・エルギュベンの長編デビュー作。首都から遠く離れた小村にある祖母の家で暮らす5姉妹は、学校帰りに男子と遊んだことをきっかけに、封建的な思想のもとで外出を禁じられ、次々と縁談をまとめられてしまう。そんななか、末妹のラーレ(ギュネシ・シェンソイ)は自由を取り戻すためにある計画を実行する。
日本ではなじみのないトルコの田舎の現状を描いた本作だが、山崎は「トルコの切実な“いま”の話であると同時に、私たちにとっても普遍的な物語」と語る。トミヤマも「異国の話だし、私は1人っ子だし抑圧されて育ったわけでもないけど、ものすごく共鳴する瞬間がある。どこかで女として生きていくしんどさがあって、それが増幅されるんだと思います」とうなずく。
姉たちが次々と祖母が決めた相手に嫁がされていくなか、13歳の少女ラーレは自由な世界への脱出を試みるが、トミヤマは「彼女は古い因習の中にあって、同時に学習していく。勉強し、ここにいたら女として“モノ”として扱われることもわかっていて、すごく頭がいい」と称賛。一方、山崎は「ほかの姉たちも決して戦っていないわけじゃない。制度が覆せないときにどうするか? それぞれの戦い方、身の処し方がある」と語り、本作を「マッドマックス 怒りのデス・ロード」(2015)にもたとえ「“We are not things.”――私たちはモノじゃないと戦う物語」とも。
トミヤマは「女の子が自分の場所を探す」「自立」という点に触れ、自身の研究分野である少女漫画と通じるものを感じたという。名作「はいからさんが通る」を挙げ、すでに70年代に日本でこうした物語が描かれていたとし「女の子が連帯し、苦境を切り抜けていくという点で、この映画は日本の少女漫画的」と分析。この映画を気に入った観客におすすめの同時代の少女漫画家として「おんなのいえ」などの作品で知られる鳥飼茜氏を挙げた。
山崎は「とはいえ、この映画は決して“男VS女”ではなく、この難しい時代に行き届いた表現がされている」とこれが長編デビューとなるエルギュベン監督の才能を絶賛。次回作ではハル・ベリーを主演にロサンゼルス暴動をテーマにした作品を制作することが決まっており「これまでロサンゼルス暴動を女の視点で描くってことはあまりなかった」と今後の活躍に期待を寄せた。
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