是枝裕和監督、少年時代は「子どもらしさに欠けていた」 樹木希林が大ウケ
2016年6月2日 14:00
[映画.com ニュース] 是枝裕和監督の最新作「海よりもまだ深く」(公開中)のトークイベントが6月1日、東京・新宿ピカデリーで行われ、是枝監督と劇中音楽を手がけた「ハナレグミ」の永積崇が出席。観客のティーチインに応じ、自身の少年時代や発想の秘けつを語った。
妻子に愛想を尽かされた作家崩れの主人公・良多の姿を通じ、“なりたい大人になれなかった大人”の悲喜こもごもを描く。自身の少年時代への質問が飛ぶと、是枝監督は「この間、(出演の)樹木希林さんに『どんな子どもだったの?』と聞かれ、通信簿に『子どもらしい伸びやかさに欠ける』と書かれていたと言いました」と回答。樹木はこれに大ウケだったそうで、「それから事あるごとに、樹木さんに『監督、なんて書かれていたんだっけ? 面白いわね』とツッコまれています」と明かし、「やんちゃなことができる友だちが羨ましかった。今やったら大変だけど、スカートめくりとかね。映画に出てくる真悟くんが大人びていて、周りの大人をよく見ている感じがちょっと近いかもしれないです」と目を細めていた。
是枝監督が思いついたことをノートにまとめ、脚本執筆時の参考にすることは有名だが、今作は仏壇の掃除をしている時に着想を得たという。「カップ麺に付いていたお箸で燃え残った線香を分けていたら、父親の葬式のお骨上げを思い出しちゃったんですよ。そのことだけメモして、夜中に主人公が父親の仏壇の掃除をするシーンを最初に書きました」と振り返り、「ストーリーを考える前にタイトルもつけました。そこに向かってシーン1を書くというやり方を、今回はしています」と告白した。
永積は「メモは書いていますが、後で見返して形になったことは少ないですね」と驚き、「メロディーは曲を作ると決まった段で初めて作ります。事前にメロディーを作るということはあまりしないです」と語る。一方で是枝監督は、演出時は俳優に説明し過ぎないようにしているようで、「(キャラクターの)気持ちを説明するのは、あまり好きじゃないんですよ。聞かれたら答えますけどね」と笑っていた。
さらに主題歌「深呼吸」も担当した永積は、楽曲について「映画の最後に良多が硯をする際、背を伸ばしたのを見たんです。人は変わろうとした時に深く呼吸するんだなと思い、『深呼吸』というタイトルを思いつきました」と説明。永積とのタッグを熱望していた是枝監督は、「背中を丸めて生きている男が、一瞬だけ背筋を伸ばすまでの話だと考えていました。映画全体の構造をつかんでいたことに感動しました」と絶賛し、「とても良いシーンになっていますし、良いコラボレーションが出来たと思います」と自信をのぞかせていた。
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