国際結婚騒動描いた大ヒット仏コメディ監督「メッセージを伝える最良の武器は笑い」
2016年3月18日 06:00
[映画.com ニュース]移民政策により、フランスは多種多様な人々で構成されている――そんな社会情勢を背景に、国際結婚カップルとその家族が繰り広げるドタバタ騒動を描いたコメディ「最高の花婿」が、3月19日に劇場公開される。本国フランスで観客動員1200万人の大ヒット作を生み出したフィリップ・ドゥ・ショーブロン監督が、同作について語った。
フランスは古くから植民地政策、同化政策を行っていた歴史があり、第1次世界大戦以降は移民を受け入れてきた。「20、30年前はフランス社会でもこういった結婚はあまりありませんでしたが、今では4人にひとりが異人種・異宗教間結婚というくらい普通」だという現状をベースに、結婚と家族愛をコミカルに紡ぐ。
敬虔なカトリック教徒のヴェルヌイユ夫妻。3人の娘がユダヤ人、アラブ人、中国人に嫁ぎ落胆していたふたりは、末娘の婚約者がカトリック教徒だと聞いて大喜びする。しかし、婚約者がコートジボワール出身の黒人青年だったことから、両家で騒動が巻き起こる。
娘の幸せのため婿たちを理解しようと奮闘する夫婦の姿は、非常にユーモラスだ。ショーブロン監督は「慣れ」こそが他者を受け入れるコツだと語り、「この夫婦の世代はそれほど異文化・異人種が社会に慣れていないフランスで育っていますが、子どもたちの世代では異文化、異人種の子どもたちと同じように学校に通っているから、なんの違和感もなく恋に落ちるんです。もちろん、理想的なことばかりではなく緊張感が生まれることもあります」。
実際にキャスト陣も国際恋愛や国際結婚をしており、エミリー・カーン(三女役)とアリ・アビタン(次女の夫ダヴィド役)は、現在は破局してしまったものの、本作で意気投合し交際に発展したという。ショーブロン監督もアフリカ系女性との入籍を控えており、「牢屋(結婚)に入らなければいけない時期が来る(笑)」と冗談めかしながら、「結婚に反対しているわけではなくて、みんな好きにすればいいんです。でも、カップルの生活も独身の生活もそれぞれに大変。自分で自分を受け入れるだけでも地獄なのに、もうひとり別の人格を許容し、妥協しなければならない。人間は複雑だから、ふたりになるとより難しいのです」と話す。
クリスチャン・クラビエ、シャンタル・ロビーが演じたヴェルヌイユ夫妻はもちろん、パスカル・ンゾンジ、サリマタ・カマテ扮する婚約者の両親コフィ夫妻も強烈なキャラクターだ。両親、4人の花婿はあて書きで脚本を執筆するなど、「キャスティングがすべてを決定するところがあるのですが、最初に自分が思ったキャスティングを実現することが大事なんです」。現在、同キャストによる続編企画が指導しているそうで、「まだシナリオは書いていないんですが、アイデアはすでにあって、ヴェルヌイユ夫婦が世界一周旅行で婿たちの国を訪れるという話で始めようと思っています。今すぐ着手する企画ではなく、あと2年くらいでしょうか」と構想を明かした。
異なる宗教観、価値観を持つ人々。劇中、何度か家族で食卓を囲むシーンが登場し、最初はトラブルへと発展していた食事中の談話も、次第に家族がひとつになる重要なものとなる。「問題がある時は、あまり突き詰めない方がいいんです(笑)。政治の話もあまり扱わない方がいい。でも、食事をともにするということは、同胞意識が生まれるのでとても大切なコミュニケーションなのです」。きずなが生まれるまでの家族内の異文化ギャップには、誰もが笑ってしまうだろう。
「私は今まで喜劇を撮ってきたので喜劇しかできないと思っているのですが、メッセージを伝える最良の武器は笑いだと思っています。同じテーマをシリアスなタッチで描いていたら、すごく重いものになったでしょうし、観客がうまく消化しきれないこともあると思います。ただ笑いというものが人を結び付けるんです。今回、(どの国の観客も)同じところで笑ってくれているのを見ると、笑いは人種、文化、宗教が違う人もつなぐことができるのだなと再認識しました」と笑いの力を感じた。
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