オスカー監督トム・フーパー、「英国王」「レミゼ」「リリーのすべて」は同じ旅路をいく作品
2016年3月14日 12:00
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[映画.com ニュース] 「英国王のスピーチ」(2010)のオスカー監督、トム・フーパーが映画.comのインタビューに応じ、世界初の性別適合手術で女性になった実在の画家アイナー・ベイナーを描いた最新作「リリーのすべて」について語った。
舞台は1926年のデンマーク。アイナー(エディ・レッドメイン)は、肖像画家の妻ゲルダ(アリシア・ビカンダー)に頼まれて女性モデルの代役を務めたことをきっかけに、自らの中に眠る“女性”の存在に気付き、やがて“リリー”という女性として過ごすようになる。ゲルダは苦悩しながらも夫の変化を受け入れ、2人は性別適合手術へと踏み出していく。
フーパー監督は08年の末に本作の脚本に出合い、「脚本を読んで3度泣いた」ほど感銘を受けたという。当時を振り返り、「非常に素晴らしい物語だった。20世紀の一大ラブストーリーだと思うね。ゲルダが夫を愛し、自分自身(の人生)を犠牲にする。そこにプライドを持った生き方を感じたんだ。泣いた部分の1つは、アートギャラリーから帰ってきたゲルダが『自分の夫を返してほしい』とリリーに訴え、リリーが『できないわ』と答えるところだね。すごく感動的だった」と情感たっぷりに語った。
「英国王のスピーチ」「レ・ミゼラブル」、本作と“時代物”が続いているが「私は、舞台が過去であろうと、今の時代を考えるチャンスがある物語が好きなんだ。『レ・ミゼラブル』の製作当時も、現実世界で“アラブの春”(チュニジアを発端とする反政府デモ)やウォール街のデモがあったよね。本作は90年前の話だけれど、現代にも通じる話題でもある。トランスジェンダーというテーマはもしかしたら(縁のない方には)強烈かもしれないけれど、どうか私を信じてほしい。より大きなテーマと、自分自身の真実を見いだすことを描いているんだ」と訴える。
「(メガホンをとった)過去2作は、本作へと続いている旅のひとつなんだ。3作品とも、人生の中で何かを抱えている人々を扱っている。『英国王のスピーチ』だったら吃音(きつおん)、『レ・ミゼラブル』のジャン・バルジャンだったら、19年間も牢獄の中で痛めつけられたという孤独を抱えている。(本作の舞台である)20年代には“トランスジェンダー”という言葉がなく、(リリーのような人々は)監禁されたり放射線治療を受けたり、異常性としてとらえられた時代だった。それが皆、愛によって解放される。本作は(見た者に)愛のきらめきを与える作品だ。日本の方々も、この“旅路”に参加して、新しいものを開拓してほしい」。
作品への熱い思いを語ったフーパー監督は、本作でオスカーノミネートされたレッドメインについて「脚本を読み終えて目を閉じたときに『この役はエディだ』と浮かんだんだ」と述懐する。監督とレッドメインは、05年に製作されたテレビドラマ「エリザベス1世 愛と陰謀の王宮」からの付き合い。「彼にテレビドラマ(ミニシリーズ)の仕事を初めてあげたのが僕なんだよ」と駆け出しの頃から見つめ続けてきたレッドメインの成長ぶりに目を細める。
本作で第88回アカデミー賞助演女優賞に輝いたビカンダーに関しても「エディと対抗できるだけの力がある。彼女を見つけられてよかった」としみじみ。「『ロイヤル・アフェア 愛と欲望の王宮』と『Ex Machina』が本当に素晴らしくて、オーディションに来てもらったんだ。スクリーンテストではヘンリク(ベン・ウィショー)とリリーがキスをした翌朝のシーンをやったんだけど、アリシアの演技を見て私は泣いてしまった。それをエディが見て『(相手役になるのが)誰だかわかっちゃったよ』と言われたよ」と照れ笑いを浮かべた。
「リリーのすべて」は、3月18日から全国公開。
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