「あの頃エッフェル塔の下で」アルノー・デプレシャンが若者の恋愛を今描く理由
2015年12月18日 19:30

[映画.com ニュース]フランスの名匠アルノー・デプレシャンの最新作「あの頃エッフェル塔の下で」が、12月19日に公開される。1996年に発表した「そして僕は恋をする」から20年、ポールとエステルというカップルを改めて違った年代、違った作品として描いた今作をデプレシャンが語った。
今作は「そして僕は恋をする」の主人公と同名のポール・デダリュスが主人公。人生も半ばを過ぎた外交官のポールが、長い海外生活を終えて故郷フランスへ帰国し、10代後半で経験した生涯で一度の大きな恋と青春を追憶する物語。
1980年代、パリの大学生だったポールと北フランスの田舎町の高校に通うエステルは、遠距離恋愛で互いの思いを手紙で伝え合う。80年代の地方に住む若者の恋愛を、21世紀の今描いた理由をこう語る。
「私は自分の作品がジャンルに属する作品だと考えています。私は、映画におけるリアリズムを信じていません。この映画は私にとっては、ティーンエイジ映画というジャンルに属するものです。このジャンルには独特のメランコリーがはじめからあり、私はこの作品の脚本執筆中に、フランシス・フォード・コッポラの『アウトサイダー』を思い出しました。なぜならば、このジャンルは、若さが失われてから初めて若さを描くものだから。それは、失われてしまった時代を忘却の底から救い出すためなのです」
(C)JEAN-CLAUDE LOTHER - WHY NOT PRODUCTIONS現在のポールを演じたのはマチュー・アマルリック、そして若き日の主人公ポールとエステルには、存在感あふれる新人俳優カンタン・ドルメールとルー・ロワ=ルコリネを抜てき。オーディションで数多くの若者に会うなかで、ふたりと運命的な出会いを果たした。80年代を描く映画のなかで、21世紀の若者として生きるふたりのそのままの存在感が必要だった。「撮影を通じて、彼らが私にもたらしたものは、それは私の言葉、私の作ったストーリー、私の思い出の断片を通じて、彼ら自身の若さを語ることです。私がほしかったのは、80年代のようなふりをする彼らではなく、2015年の彼らが持っている若さやセクシュアリティです。私たちの出会いによって、私の言葉を用いて、それに成功したと思います」
本作で、現在のポールは外交官を生業とする設定だ。過去作「魂を救え!」(92)でも外交官を主人公にしている。「実は私の弟が外交官なんです。兄弟姉妹は、とても高学歴で、私は映画しかやっていませんので、弟の職業に魅了されるのは当然です。外交官は世界中をたずねて歩くよい仕事だと思います。そうした特殊性を物語に持ち込んだのは、ポールは社会に関心はないが、世界に関心があるということを描くためです。世界に対して好奇心を持つことは素晴らしいことではないでしょうか」
人間の感情の奥深さと複雑さ、そして良心を描きつづけるデプレシャン監督。20年以上のキャリアの中で映画に対する姿勢に変化はあったのだろうか、それとも、何かひとつの信念を持ち続けているのだろうか。
「両方だと思います。自分で試しているというわけではないのですが、当然ながら自分自身に忠実であり続けたいと思っています。自分に影響を与え、自分をつくってくれた映画作品に対して忠実にありたい。10代の時に感じた映画への欲求を持ち続けたいと思っています。また、それと同時に絶えず自分を新たに作り出して、変わって生きたいという希望もあります。今回、20歳以下の登場人物を描けるようになるまでに、長い時間がかかりました。自分が若いときは、30代という老けた若者の映画を撮っていました。今回は10代の俳優たちとともに、新しいやり方を作り出すことができたと思います」
「あの頃エッフェル塔の下で」は12月19日から東京・Bunkamuraル・シネマほか全国で順次公開。
(C)JEAN-CLAUDE LOTHER - WHY NOT PRODUCTIONS
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