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試写会ギリギリまで編集作業を敢行 是枝監督を駆り立てた「海街diary」の可能性

2015年12月17日 12:00

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作品への愛着を語る是枝裕和監督
作品への愛着を語る是枝裕和監督

[映画.com ニュース] 第68回カンヌ映画祭コンペティション部門に選出された「海街diary」の是枝裕和監督が、同作のブルーレイ&DVDの発売を前にインタビューに応じた。

吉田秋生氏の同名コミックを、綾瀬はるか長澤まさみ夏帆広瀬すずといった女優陣の共演で映画化。父が浮気をして家を去り、母も再婚して遠方に嫁いだため、鎌倉の生家で姉妹だけで暮らす3人。父の死をきっかけに異母妹・すず(広瀬)と出会った3姉妹はすずを迎え入れ、共同生活をスタート。やがて4人が絆を育んでいくさまを、鎌倉の四季とともに描く。

連載中の原作を映画化する上で、是枝監督を悩ませたのが脚本だった。「原作は完成されているし、吉田さん自身も当初は考えていなかったであろう物語の広がりが面白い。ただ、映画も外側に広げていっちゃうと散漫になるから、どう家族の中に落とし込んでいくかという意識を持ちました。何が(映画版の)縦軸になるかといえば、(長女の)幸(綾瀬)の中の父の記憶が、すずを引き取ることによってどう書き換えられていくかだと思うし、本作は、すずが『ここにいていいんだ』と思えるまでの話なんです」。

「内面の葛藤を1番強く抱えている」という2人を主軸にしたストーリーを決断した是枝監督だが、「冬のシーンのボリュームが1分変わるだけでもまるで違う。編集も最後の最後まで悩みましたね。試写会の午前中まで延々と」と最後の最後まで考えあぐねたと明かす。「最終的に(現在の形に)着地したときに、音楽の菅野(よう子)さんから『ようやく是枝さんの作品になりましたね』とビシッとしたメールが来て。菅野さんは(楽曲製作にあたり)『生と死のバランスをどのくらいにしましょうか。52:48で作ってみます』というお話をされていた。音楽を入れてみて初めて見えてくるところもあり、今回は周りのスタッフに助けられましたね」と振り返った。

誰も知らない」(2004)から「そして父になる」(13)、本作にいたるまで、さまざまな形の“家族”を描いてきた是枝監督は「回想で過去を説明するのではなくて、今撮っている時間の中に過去の余韻と未来の予兆を重ねる。それをいつも考えています」と自身の作品作りに言及。「本作では、1人の女性をどう多面的に描けるかということをやりたかった。ホームドラマは本来非常に省エネで、関わる人間を替えるだけで人間が立体的になっていく。とても効率がよく、人間を描くのに適した場です」。

その最たる例は長女・幸とのことで「幸は家の中で妹たちと接するときは母であり姉で、母(大竹しのぶ)が来ると娘、(恋人の)椎名(堤真一)の前では女になる。幸が、椎名と電話しながらピアスを耳に当てて鏡を見ているカットは、鏡に映る綾瀬さんがとても色っぽくて、妹には見せない顔になっています。現場で堤さんも『いい顔をしているじゃないか』と驚いていました」とお気に入りのシーンの1つを回想。綾瀬をはじめ女優陣の仲の良さを語った是枝監督は「僕はこの作品を見ていると幸せになる。またあの4人に会いたくなるし、(ブルーレイ&DVDが発売したら)折にふれて自分でも見返すと思います」とほほえんだ。

海街diary」ブルーレイ&DVDは発売中&レンタル中。

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