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中村義洋監督が明かす映画製作のポリシー

2015年10月28日 20:20

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中村義洋監督
中村義洋監督

[映画.com ニュース] 自分の部屋で響く奇妙な音について投書してきた女子大生と小説家の“私”が調査をはじめると、その地をめぐるおぞましい因縁に行き着く――。小野不由美が第26回山本周五郎賞を受賞したホラー小説「残穢」を、「予告犯」や「白ゆき姫殺人事件」などで知られる中村義洋監督が完全映画化。じわじわとサスペンスが盛り上がる、リアルな恐怖世界が綴られる。中村監督にとっては初めての東京国際映画祭コンペティション部門参加となった。

東京国際映画祭は初めての参加ですね。

中村監督(以下中村):海外の映画祭の経験はいくつかあります。ふだんは日本の劇場で上映されることをイメージしながら製作していますが、海外での上映で、前のめりで見てくれる観客の姿を目の当たりにすると、もうひとつ製作のイメージが増えた気がしました。もっとも、東京国際映画祭は日本のお客さんが大半だから、劇場公開と変わらない気持ちですが、選ばれたことにびっくりしました。

監督は「残穢【ざんえ】-住んではいけない部屋-」を“ひさびさの直球のホラーで勝負した”とコメントされていましたが、この原作に特別な思いはあったのですか。

中村:なにより原作が怖かったのです。私は本来、怖い作品は撮れません。十数年前に2、3年間、ホラーしか仕事が来なかった時期を経験しました。怖がりに来ているお客さんに失礼だと考えて、他のジャンルの話は断って、1、2年ほど仕事のない状態もありました。原作者の小野さんがホラーをやっていた時期の作品を見ていて、もし映像化するのなら中村監督にと言ってくれました。見てくれていたのが嬉しかったですね。

謎解き的な面白さで引っ張り、最後はホラーとして終わるという、中村監督の個性が感じられました。そのあたりは意識していたのでしょうか。

中村:普段は、役者さんにお芝居をお任せして採用することもありますが、ホラーは監督のコントロールが全面的に必要になります。だから、脚本の段階や撮影のさじ加減にかなり頭を使いました。小野さんには製作の途中でお話しする機会があって、その時に「幽霊ですからね。出ちゃったら怖くないのよね。出るまでよね」といわれたのです。その言葉がいちばん心に響きました。

竹内結子橋本愛という人気女優ふたりの主演が話題ですが、いかがでしたか。

中村:この作品は今までの映画と違って役者さんに任せられないので、失礼とは思いながらも、普段は言わないような細かい指示を出しました。リアルな演技ばかりでなく嘘も必要な世界なので。その辺のところを汲んでもらいながら、それでも気持ちでお芝居ができるおふたりで、本当に満足しています。

映画製作のうえでポリシーにされていることはありますか。

中村:スタッフの存在が見えないようにするということですかね。わかりやすくいうと、映画を見ていて合成がダメだと、合成を担当した人を考えて、作品から意識が離れてしまいます。演出にしろカメラワークにしろ、作り手の存在を感じさせたら作品には入っていけません。なるべく消すようにしています。

バラエティに富んだ作品を撮り続けている印象ですが、監督は自分が面白がれる題材を選んでいるのですか。

中村:小説家や漫画家の言いたいことがあって映画に変えるにあたっても、芯の部分は外さないようにしています。言葉を変えれば、その芯の部分、作品のいいたいことに納得しているから引き受けているのです。幸いなことに映画化するために、変えたところを理解してくれる原作者の方々と仕事ができていますね。

原作の持っている面白さを映像化することによって監督らしさを表現するのですね。

中村:意識して監督らしさは出しません。原作が面白いので、芯の部分がより伝わるように工夫はします。真面目な問題を真面目に描いても観客に伝わらないと思ったら、コメディに見せるなど本当に伝えたいことの大事な部分を伝えるために、エンタテインメントに仕立てていきます。その部分に、監督の味が出ていると言われれば嬉しいですね。

素材をいかに料理するかということに醍醐味を感じているのですね。

中村:そうですね。いちばん面白いのはエンタテインメントにして伝えることですね。「ジェネラル・ルージュの凱旋」(09)は好きで、救命救急のものの“社会派”をやろうかとも思いましたが、あくまでエンタテインメントのかたちでつくり、結果として感じていただく。これが好きですね。

(取材/構成 稲田隆起 日本映画ペンクラブ)

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