命の尊厳を描く「ハッピーエンドの選び方」に影響を与えた日本映画は?
2015年10月17日 11:30

[映画.com ニュース] 第71回ベネチア国際映画祭で観客賞を受賞したイスラエル映画「ハッピーエンドの選び方」の公開記念イベントが10月16日、都内で開催され、シャロン・マイモン監督とタル・グラニット監督が出席。ゲストとして参加した女優・小山明子とトークセッションを行った。
舞台は、イスラエル・エルサレムの老人ホーム。発明が趣味のヨヘスケル(ゼーブ・リバシュ)は、親友の頼みを聞き、自らスイッチを押して苦しまずに最期を迎える装置を発明する。その発明が話題となり、ヨヘスケルのもとには依頼が殺到。ヨヘスケルが困惑するなか、共にホームで暮らす妻レバーナ(レバーナ・フィンケルシュタイン)に認知症の兆候が表れ、夫婦は人生の岐路に立たされる。
日本映画の大ファンという両監督は、夫である故大島渚監督作の常連女優である小山との対面に感激の様子。「(大島監督の代表作の1つ)『愛のコリーダ』(1976)はイスラエルでもしょっちゅうリバイバル上映されています。愛であり執着であり依存。これらをユニークかつ極端に描くことによって、愛の美しい詩が描かれています」(グラニット監督)と、あふれんばかりの愛を語った。その言葉を受けた小山は「日本よりイスラエルの方が評価が高いですね」と顔をほころばせていた。
自らの意志で延命治療を断る“尊厳死”を提唱する「日本尊厳死協会」に所属している小山は、「よい死を迎えるために、今日1日を悔いなく生きようと考えています。この映画と一緒ですね」と自身のライフスタイルと重ね合わせて鑑賞したと告白。「ご夫婦の愛や友情といった愛をとても感じました。画面も美しく、素敵でした」と作品の魅力を語った。「生きているうちに孫を1人ずつ旅行に連れて行って私との思い出を作る」など、小山の“終活”エピソードに熱心に耳を傾けていたマイモン監督は、「人は誰しも、生死において自由に選ぶ権利を持つべきです」と製作に5年もの歳月をかけたという本作への強い思いを語った。
大島監督をはじめ、黒澤明監督、小津安二郎監督、北野武監督への敬意を語る両監督はさらに、日本映画が本作にインスピレーションを与えたと明かす。「『おくりびと』(08)と『七人の侍』(54)には影響を受けています。『おくりびと』は、どなたかを送り出すたびに新たな家族に出会い、その1人1人にストーリーがある。その部分には、(登場人物それぞれの死との向き合い方をつづる)本作と近しいものを感じます」と語り、日本映画への感謝を述べていた。
「ハッピーエンドの選び方」は、11月28日から全国公開。
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