M・ウィンターボトム監督、英国人留学生殺人事件描く新作「天使が消えた街」を語る

2015年9月4日 14:30


マイケル・ウィンターボトム監督
マイケル・ウィンターボトム監督

[映画.com ニュース]イタリアで実際に起きた英国人留学生殺人事件を題材にしたマイケル・ウィンターボトム監督の最新作「天使が消えた街」が9月5日に公開される。美しい容疑者の奔放な私生活など、本質とは異なる部分で国際的に注目を集めた事件の闇を、ダニエル・ブリュール演じる主人公の映画監督が被害者に寄り添う視点で描いたドラマだ。ウィンターボトム監督が作品や、本作で本格的に女優業に挑戦した人気モデル、カーラ・デルビーニュの起用について語った。

殺人事件を単なる犯人探しではなく、主人公が被害者を尊重し、自身の私生活とも重ねながら人間の愛や尊厳を描いた。「最初に、法廷シーンや、捜査や、裁判を見て、普通の刑事映画のような、“犯人は誰だ”的なワクワク感と面白さを感じてほしい。でも最後には、そういうシーンよりもっと面白くて、もっと重要で、もっと感情に訴えるのは、殺された少女や、命を失った人のことを想像することだと感じてほしかった。愛するものを失った家族はどうなのか。実際、これらのとてもシンプルなことが、殺人事件の核心であるべきで、裁判の詳細以上に重要なことなんだ」と作品に込めた思いを明かす。

ブリュールが演じる、主人公の映画監督トーマス役についてこう説明する。「トーマスは物語を通して、観客のガイドを務めるんだ。だから彼は、ほかの人たちに反応したり、脚本を書くことに苦労したりといった状況に陥る。彼のすることはあまりドラマチックではないが、彼の内面はもっとドラマチックだ。ダニエルは、演技し過ぎることなく、彼の頭の中で起こっていることを観客に伝えることのできる俳優だ」

トーマスは、偶然出会った英国人留学生メラニーにシエナを案内するガイド役を頼む。メラニーは「若さ、エネルギー、熱意、無邪気さ、自然体、その全てがトーマスに人生のポジティブな事柄を気付かせる」という設定で作り上げたキャラクターだ。

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キャスティングを始めるまで人気モデルとしてのデルビーニュの存在を知らなかったそうだが、知人の紹介で対面しメラニー役に抜てきした。「人生の喜びを体現できる女優が必要だった。エネルギーに満ちあふれ、楽天的で、あらゆる経験を楽しめる人。それを演技するのは難しい。そういう性質がないとダメだ。カーラに会ってすぐにこの役にぴったりだとわかったんだ」

「彼女はとても勉強熱心で、女優業を真剣に捉えている。本当に女優になりたいと思っていると同時に、セットではできる限りリラックスして大らかさを保っている。ホテルから出てセットに向かうたびに、カーラは100人近い10代の少女たちに囲まれていたけれど、とても寛大に時間を割き、和やかだったよ」と撮影を振り返った。

中世の面影を残したシエナを作品の舞台に選んだ理由は「ある種、暗く閉ざされた街。屋上からは美しいイタリアの田園風景が見えるが、いったん夜の路地に降りると、かなり閉塞的で暗い。この映画では、トーマスは脚本を書き、裁判に基づく映画を作るためにそこに向かうため、明らかに暗い側面をもつ街が必要だった。中心に暗さがあると同時に、外側は魅力的に見える街がほしかったんだ」と明かした。

天使が消えた街」は9月5日、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国で順次公開。

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