「日本のいちばん長い日」原田眞人監督、こだわり抜いた「人間・昭和天皇」の人物描写
2015年8月7日 08:30

[映画.com ニュース] 終戦間際の1945年8月14日から15日にかけてのポツダム宣言受諾をめぐる攻防、その裏にあった陸軍将校による反乱未遂事件の史実をサスペンスタッチで描いた「日本のいちばん長い日」のメガホンを取った原田眞人監督が、インタビューに応じた。
昭和史研究の第一人者・半藤一利による傑作ルポルタージュが原作だが、67年に岡本喜八監督、三船敏郎主演で1度、映画化されている。終戦から20年以上を経た当時でも踏み込んで描けない部分も多く、18歳だった原田監督は「(陸軍大臣の)阿南さんの魂の相剋(そうこく)の描写も物足りなかったし、軍人は坊主でもなく不満を感じた。完全な映画化とは言えなかった」と語る。本作が大きく違うのは、昭和天皇を真正面から描いた点だが、原田監督は、アレクサンドル・ソクーロフ監督による「太陽」(05)でイッセー尾形が昭和天皇を演じたのを機に「流れが変わった」と感じたという。「立憲君主制の中で自由もなく、まさに『耐えがたきを耐え』てきた昭和天皇が、ここで止めないと日本という国がなくなるという思いで聖断を下すさま、苦悩を含めた“人間”としての昭和天皇・裕仁を描きたかった」と、キャラクターにかけた思いを明かした。
昭和天皇を中心に据えた原田監督は、“家族”をキーワードに物語を構築したと続ける。「原作やその他の資料を読んで、鈴木貫太郎首相を父、阿南さんを長男、昭和天皇を次男とする疑似家族の話でもあると感じました。回想シーンにある、阿南さんが侍従武官だった頃、儀式で天皇の軍服にしわが寄っていたのを、阿南さんが前に進み出て直したというエピソード、御前会議で耳が遠くて天皇の言葉を聞き取れない鈴木首相を阿南さんが介添えするところなどは彼らの関係を示しているし、これを映画にしたいと思いました」と、思い入れのあるシーンを振り返った。
本作の主軸を「阿南さんも言う『軍をなくして国を残した』という事実」だとする原田監督は、「今、戦争につながりかねない法案が審議されるなかでもう一度、歴史を見直してほしい。45年8月のあの日に何があったのか? そこから歩み始めた日本とは何なのか? 歴史はちゃんと理解しないと恐ろしいものだけど、同時に楽しいものでもある」と訴える。とはいえ、本作はあくまで「極限状態に追い詰められた人間の面白さを描いた」人間ドラマであるとの姿勢を示し、「そうじゃなきゃ人間を描いた大人の映画とは言えない。人間は白か黒かではなくグレーゾーンにいるもので、その中にもグラデーションがあるから面白いというのを感じてほしいです」と力を込めた。
「日本のいちばん長い日」は、8月8日から全国公開。阿南陸軍大臣を役所広司、昭和天皇を本木雅弘、鈴木首相を山崎努がそれぞれ演じる。松坂桃李、堤真一らが脇を固める。
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