「さよなら、人類」ロイ・アンダーソン監督に影響を与えた画家は?
2015年8月7日 16:50

[映画.com ニュース]スウェーデンの異才ロイ・アンダーソン監督の最新作で、第71回ベネチア国際映画祭で金獅子賞(最高賞)を受賞した「さよなら、人類」が、8月8日から公開される。巨大なスタジオにセットを組み、構図、配置、配色と徹底した美術を背景に全39シーンを1シーン1カットで4年をかけて撮影された本作は、驚くべき創造性にあふれている。前2作との関連性と共に、自身の映画製作に影響を与えた画家などをアンダーソン監督が語った。
ブラックユーモアとローテク映像で人間について考察した異色作「散歩する惑星」「愛おしき隣人」に続く“リビング・トリロジー3部作”の最終章。面白グッズを売り歩く冴えないセールスマンコンビが、何をやっても上手くいかない人たちの人生を目撃する模様を、シュールで不条理な39のシーンで映し出す。
アンダーソン監督の名を映画界に知らしめたリビング・トリロジー3部作は、どのようにつながり、また違いがあるのだろうか。「どんな映画も、どんな時にもその作品自体で見られるものであり、そうあるべきだと考えています。個々の映画の中で、各シーンは実際に独立して見られます。『さよなら、人類』には39シーンあり、どのシーンも観客に美術的な経験をもたらす意図があるのです。全体として『リビング・トリロジー』は見る者の存在について考察してもらおうという試みです。『私たちは何をしているのだろう? 私たちはどこへ行くのだろう?』と問いかけ、自分たちの存在について、悲喜劇を用いて、“生きる喜び”と、人間の存在に対する根源的な敬意への省察と熟考を促そうとしています」
「リビング・トリロジー」は人類が終末に向かっている可能性を示していますが、その結果が我々の掌中にあることも表します。『散歩する惑星』では、集合的な罪と人間の脆さが作品のテーマ。『愛おしき隣人』は夢の中への大胆な旅立ちを描いています。私にとって、全く新しい分野への可能性が開けた作品です。『さよなら、人類』のシーンは、シンプルに夢のようで、それ以上の説明はない。前2作よりも思わせぶりで、登場人物たちが、悲しみに暮れ、苦しんでいても圧倒的に“生きる喜び”に満ちています」

映画製作に影響を与えた画家には、ルネサンス期の画家、新即物主義の作家、また、エドワード・ホッパーらを挙げている。「さよなら、人類」で最も重要な画家についてこう語る。「ブリューゲル(父)もインスピレーションとなりました。ルネサンス期の傑作で、雪に覆われた丘の上からフランドル地方の小さな村を見下ろし、谷底で村人達が凍結した湖の上でスケートをしているのが見える『雪中の狩人』という非常に美しい風景画があります。ブリューゲルは農民のいる細かな風景画を得意とし、しばしば社会や人間の存在を鳥瞰的に描き、彼の全作品には、人間の悪徳や愚行を伝える幻想的な寓意も含まれています。完璧な風刺で、人間の悲劇的な矛盾を描くのです」
「自然主義的な画家、イリヤ・レーピンの名も挙げましょう。『トルコのスルタンへ手紙を書くザポロージャ・コサック』という優れた絵画がありますが、これは11年かけて描いたもので、ラフやスケッチを元にした非常に巨大な作品です。11年経って、彼はやっとその絵に満足し、今日では世界遺産の一部となっています。世界遺産を目指すなんてうぬぼれているようにも見えるが、アーティストとして、自らの表現を限界まで突き詰めるということでもあるのです。残念ながら、映画製作においては、財政的な面や、フィルムメーカーの姿勢や才能などの課題があり、限界を目指すのは難しいこと。ビジネスマンが映画の表現を奪ってしまったのです」
「リビング・トリロジー」は完結したが、既に新作に取り掛かっていることを明かす。「『さよなら、人類』にもあるけれど、次回作はワイルドさを突き詰めます。もっとワイルドで、魔法のような魅力のある作品になる予定です。私の映画製作はある種の実用主義と様式化されたリアリズムにこだわらなければならないのです」
「さよなら、人類」は8月8日からYEBISU GARDEN CINEMAほか全国で公開。
(C)Roy Andersson Filmproduktion AB
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