エマ・ストーン×ヨルゴス・ランティモス監督が「哀れなるものたち」を徹底解説【8000字超インタビュー】

2024年1月27日 12:00


(C)2023 20th Century Studios. All Rights Reserved.

第96回アカデミー賞にて作品賞を含む11部門にノミネートを果たした「哀れなるものたち」(公開中)。第80回ベネチア国際映画祭コンペティション部門では最高賞の金獅子賞、第81回ゴールデングローブ賞では作品賞と主演女優賞を受賞した注目作だ。

監督を務めたのは「ロブスター」「女王陛下のお気に入り」のヨルゴス・ランティモス。そして、主演だけでなく、プロデューサーも兼任したエマ・ストーンが、ウィレム・デフォーマーク・ラファロら実力派俳優と“唯一無二の物語”を紡ぎ出している。

映画.comでは、ランティモス監督とストーンが製作の裏側を語り尽くすオフィシャルインタビューを入手。8000字を超える“特大ボリューム”だったが、ひとつひとつの“言葉”が注目に値する内容なので、余すところなくたっぷりとお届けしよう。



【「哀れなるものたち」あらすじ】

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不幸な若い女性ベラ(エマ・ストーン)は自ら命を絶つが、風変わりな天才外科医ゴッドウィン・バクスター(ウィレム・デフォー)によって自らの胎児の脳を移植され、奇跡的に蘇生する。「世界を自分の目で見たい」という強い欲望にかられた彼女は、放蕩者の弁護士ダンカン(マーク・ラファロ)に誘われて大陸横断の旅に出る。大人の体を持ちながら新生児の目線で世界を見つめるベラは時代の偏見から解放され、平等や自由を知り、驚くべき成長を遂げていく。



●原作小説との出合い「なぜ今まで誰も映画化しなかったのだろう」

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――アラスター・グレイ氏の著書「哀れなるものたち」とはどのように出合いましたか? また、グレイ氏とはどのような話し合いをしたのでしょうか?

ヨルゴス・ランティモス監督(以下:ランティモス):彼の本に出合った当時、私は多くの本を読んでおり、彼の他の著書とともにこの本を読むことにしました。「哀れなるものたち」はとても心に残りました。この作品の権利を得ることができるかどうかを確認するため、興奮する気持ちを抱えながら、2011年か2012年にグラスゴーに向かいアラスターに会いました。

彼は「籠の中の乙女」を観て気に入ったと話してくれました。1日を共に過ごした後、「哀れなるものたち」の製作を許可してくれたのです。

そして、私はしばらくこの映画を作ろうと試みていました。他のプロデューサーたちと様々なオプションを検討しましたが、うまく行きませんでした。“その時が来た”と感じたとき、私は再び試み、ようやく実現に至ったのです。

エマ・ストーン(以下:ストーン):私が初めてこの映画について耳にしたのは、2017年にヨルゴスと「女王陛下のお気に入り」の製作を終えた頃でした。製作のとても早い段階です。トニー・マクナマラはこの時点でまだ脚本を執筆中でした。

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――では、原作「哀れなるものたち」のどこに惹かれたのでしょうか?

ランティモス:これまで読んだことのないような作品でした。登場人物、テーマ、ユーモア、そしてその複雑さに惹かれました。さらに視覚的にも惹かれました。アラスターは画家でもあり、本の中で自ら挿絵を描いていたからです。すぐに、この本はとても視覚的で複雑なものだと解釈しました。読んだ直後から興奮し、なぜ今まで誰も映画化しなかったのだろうと考えていました。

――これまで映画化されなかった理由は何だと思いますか?

ランティモス:社会や人間性など、あらゆる側面における女性の自由についての物語は、人々の興味を引くものではありませんでした。ベラのセクシュアリティにまつわる自由さにおいては、少々やりすぎだと感じた人もいたと思います。

子どもの頭脳を持つ大人の女性という設定自体、人々はどう反応していいのかわかりませんでした。私たちは長い道のりを歩み、おそらく人々は特定の物事を違う見方で見るようになり、このような物語を語ることのできる道筋が開けたのだと思います。

この映画を撮ろうとした当初、私は経済的な成功をもたらすような大きな英語映画を製作したことがありませんでした。「女王陛下のお気に入り」の後にその時が訪れ、次の作品を聞かれた際にこの作品を挙げたのです。

また、小説には私たちが探求しているテーマとは別のテーマがたくさんあるため、映画ではより世界に開かれたものにしました。私はベラの物語と彼女の視点に最も興味を持っていました。

●脚本家トニー・マクナマラについて 最大の才能のひとつは“セリフ”

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――ストーンさんにもお聞きします。俳優としてだけでなく、本作のプロデューサーとして、これまでこの作品が映画化されなかった理由、そしてこの映画が“今にぴったりな理由”があると思いますか?

ストーン:この作品が映画化されなかった理由はないと思いますが、ヨルゴスが早い段階でアラスターと会い、彼の賛同を得たことは非常に重要だったと思います。この作品を作れるのはヨルゴスしかいなかったと思います。

もちろん多少の偏見があるとは思いますが、このレベルに達する作品を作れたであろう監督は他にいないと思います。私たちはベラ・バクスターのレンズ(視点)を通してこの物語を脚色しました。小説がそうでなかったからこそ、これはとても大切なことだと思います。

――脚本家のトニー・マクナマラ(本作以外に、ストーンが参加した「女王陛下のお気に入り」「クルエラ」の脚本も執筆)についてお聞かせください。映画化のためにこの脚本を執筆した“彼の仕事”について教えていただけますか?

ランティモス:「女王陛下のお気に入り」でトニーと一緒に仕事をしたことから、彼こそが私たちの登場人物に声を与えるのにふさわしい人物だと感じました。同時に、脚本のスピリットやトーンも、小説に忠実です。すべての側面、レイヤー、視点、物語が含まれているわけではありませんが、トーン、言葉、ユーモア、主な意図という点ではかなり忠実だと思います。

トニーはこの小説が大好きで、彼はとてもユニークな語り口を持っています。この2つは完璧な組み合わせであり、私たちはお互いとてもうまくいっています。脚本を書くのは決して簡単なことではなく、何年もかかりましたが、私たちにとってその過程はとても気楽で楽しいものでした。

ストーン:トニーの最大の才能の一つはセリフで、3作品を通して、“トニーイズム”が繰り返されていることに気がつきました。彼には彼自身が惹かれる言葉やフレーズがあり、そしてとても面白い人です。彼の書き方や、状況からユーモアを引き出す方法は、たとえそれが悲劇的な状況であっても、実にユニークなのです。彼とヨルゴスのつながりはとても大きく、一緒に仕事をしながらアイディアを形にしていくことができます。私はトニーのことが大好きですし、特にセリフに関しては、彼のような人は他にいないと思います。

●「彼女に恋をした」「私の愛する人」主人公ベラ・バクスターの魅力とは?

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――ベラ・バクスターの役柄について。どのような点が興味深かったのでしょうか?

ランティモス:私はただ、彼女に恋をしました。すると、もっと聞きたい、もっと見たいという気持ちが止められないでしょう。

彼女は次に何をするつもりなのか? 彼女が周囲のあらゆるものにどのように反応するのか? 適合しない世界に彼女はどう反応するのか、それがこの映画の軸です。彼女はとにかく魅力的で、彼女をさまざまな状況に置くことで、年上の人、男性、権力を持つ男性など、彼女の周りにいる人たちや彼らとの関係を変えていくことに気づいたのです。彼女の存在と、それに対する彼女の反応によって、すべてが変化しました。それは構成や創作を試みる上で、とても興味深いものでした。

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ストーン:ベラは私の愛する人です。ヨルゴスが製作の初期段階で私に彼女のことを説明してくれた際、私たちはとても似ていると感じました。決して小さくなく、決して脆くもない女性になるという機会はとても刺激的なものでした。

彼女は女性に典型的な制約を強いる社会で育っていないため、自由に世界を探求することができます。現代においても、信仰心があろうとなかろうと、社会に適応することを教え込まれるやり方は私にとって興味深く、ヨルゴスと私は長い間それについて話し合ってきました。ベラという、誕生から成人まで一人の人間であり、ずっとその身体でいられるという機会はとても貴重なものでした。

彼女はセクシュアリティに関してさえも、判断力や羞恥心がまったくありません。彼女が自分の目を通して世界をどのように受け止めているかがすべてであり、人々が彼女にどう反応するかよりも、彼女がそれにどう反応しているかが重要なのです。

社会的に、私たちは周りの人々が自分のことが好きかどうかを考えてしまいますが、彼女はそんなことは考えません。彼女は演じていて最高に楽しい人でした。精神的に幼くても、私がこれまで演じた中で最も進化した女性です。私は常にベラを恋しく思い、彼女ならどうするかを時々考えたりします。彼女は素晴らしい贈り物のような存在でした。

●ベラが“特別な旅”で出会う男たちのバリエーション

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――ベラが“特別な旅”で出会う男性たちは、なぜ彼女を独占したがるのでしょうか?

ランティモス:それにはバリエーションがあるというのが、概ね正しい見方だと思います。

ゴッドウィン・バクスター博士(ウィレム・デフォー)のように、自分自身の旅に出る役柄もいます。というのも、彼は最初、ある意味彼女を所有しようとします。父親を通じて学んだ唯一の方法で彼女を養育しようとするのです。しかし彼女との交流を通じて、彼もまた成熟していくことが分かります。やがて彼女を手放して、世界を経験させる必要があることを彼は理解します。そして最終的に、自分の科学的知見をすべて世に送り出すことで、ある種の遺産を彼女に残すことになります。彼女がそれを引き継ぐことができると考えたのです。

ハリー・アストリー(ジェロッド・カーマイケル)もまた違った存在だと思います。彼は唯一、性的やエロティックな関係ではなく、知的でプラトニックな関係を彼女と持つ人です。彼女とセックスしようとしたり、独占しようとしたりしない男性がいるのはいいことです。

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ダンカン・ウェダバーン(マーク・ラファロ)は、古典的な男性です。必ずしも古典的ではありませんが、要するに独占欲の強い、典型的な自己中心的な男性です。

マックス・マッキャンドレス(ラミー・ユセフ)は、皆と同じ間違いを犯すため、ある意味で別の種類の感性を持っています。それほど強引ではありませんが、彼女がまだ完全に形成されていないことを理解しています。控えめに、微妙なやり方で彼女を手に入れようとしますが、それが間違っていたことも認識するようになり、より成熟した彼女を尊重するようになります。彼女が戻ると、二人は一緒に生活します。

そしてもちろん、ベラの過去もあります。そこには最も純粋な悪のような独占欲を持つ男性がいます。ですから、男性のキャラクターにはバリエーションがあると思います。

●“生まれたての女性”ベラの旅「彼女が出会うすべての環境が、彼女に何かを教えている」


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――ストーンさん、ベラの旅路について少しお話いただけますか?

ストーン:彼女は出会う男性、出会う女性、自分のいる環境、食べるものから様々なものを引き出します。まるでスポンジのようであり、あらゆるものが彼女に情報を与えるのです。幼児期、児童期、あるいは10代の、自分自身や自分が欲しいものについて考えるメンタリティから、どうすれば社会に役立てるのか、どうすれば外の世界のために何かを作り出すことができるのかと考えるメンタリティへと急速に変化していきます。

観客もその旅路を見ていることでしょう。

彼女は社会主義者になり、医者になって人々を助けたいと思うようになります。世界は残酷な場所であることを理解しています。

映画の冒頭ではすべてが純粋な快楽主義であり、楽しみであり、喜びです。やがて中盤になると、彼女は世界には残酷さと痛みがあることに気づきます。彼女が周りの人々から何を学んでいるのかを述べるのは難しいと思います。彼女が出会うすべての環境が、彼女に何かを教えているのです。

●「哀れなるものたち」の“世界”をどうやって創り上げた?

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――本作の“高度に様式化された世界”を創り上げるにあたり、部門責任者たちとどのような対話を持ちましたか?

ランティモス:最初から、彼女の住む世界を創り上げる必要があると感じていました。非常に現実的なものだけではダメでした。小説では、物語は特定の時代を舞台にしていますが、私たちはそれをオープンにし、ある時代を暗示しつつも必ずしもそうとは言えないような要素を入れようと試みました。そうすることで、よりおとぎ話のような、あるいは物事の比喩的な表現が可能になります。

そのためには、ある時代や、ある種の映画やジャンルについて持っている特定の考えにしがみつくことなく、これを体験することを自分に認める必要があります。SF的であったり、時代錯誤的であったり、空想的であったり、様々な要素が絡み合っています。

その上で、それをどのように実現できるかを話し合いました。私は(フェデリコ・)フェリーニや(マイケル・)パウエル、(エメリック・)プレスバーガーがかつて撮っていたような、昔ながらの映画を作りたいと思っていました。彼らの映画を何本か観て、さらにロイ・アンダーソンのような現代的な映画監督の作品も観ました。それらを観ながらも、「哀れなるものたち」の世界はとても広大なので、すべてを作り上げることはできないことも分かっていました。

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LEDスクリーンを使った新しい技術に加えて、ペイントされた背景やプロジェクションのような技術も使い、昔ながらの手法と新しい技術を組み合わせました。幸か不幸か、私たちはパンデミックが起きた時に準備を始めました。最初のリサーチ期間があり、その後一時中断したためすべてが停滞しましたが、再考する時間を持つことができました。再び始動できる時期が来た際、私たちは本当に作りたいもの、心から創り上げたいものについて、より考えを深めることができていました。

プロダクション・デザイナーのショーナ・ヒースジェームズ・プライスはお互いこれまで一緒に仕事をしたことがありませんでしたし、二人は芸術的に異なる視点を持つ人たちでした。しかし私は、この二人の組み合わせがこれまでに見たことのないものを生み出すと感じたのです。彼らは素晴らしいコンビネーションを発揮し、すべてを一緒にデザインしました。これほど多くのドローイングやリファレンスを見たのは初めてでしたし、これまで行った事前準備の中で最も緻密なものでした。

実際の撮影の段階になると、他の映画とほぼ同じように撮影しました。外から照明をあて、部屋の中は俳優、カメラ、音声だけです。クローズド・セットの時には音声もなく、あちこちにマイクをぶら下げていました。過去にやったのと同じようなプロセスを維持しようと心がけましたが、窓の外を見ると、そこは多くの人がいる、巨大な照明のある巨大なセットでした。それでもシーンを撮影する時には、その場にいる少人数だけのように感じました。役者たちが自由にシーンを作り上げられるように皆が協力してくれるのは素晴らしいことでした。

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――ブダペストに組まれた素晴らしいセットでの経験はいかがでしたか?

ストーン:リスボンのセットには驚きました。全体を歩くのに30分もかかるのですから。レストランやホテルがあり、まるで街全体を作り上げたかのようでした。当時のヨーロッパで最大のセットでした。すベてが驚くほど美しく、細部まで作り込まれていました。

バクスターの家に初めて行き、完全に建てられた家の中にあるベラの寝室を見た時は、信じられませんでした。今になってみれば、あれが一番のお気に入りです。ゼロから作り上げられ、家として建てられたのですから。美しかったです。

●「私が人生で着た衣裳の中で最も美しい」衣裳デザイナーの功績

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――衣裳デザイナーのホリー・ワディントンとの仕事はどうでしたか?

ストーン:ホリーはとても素晴らしい人です。彼女が思いつくアイデアは、特にクレイジーな期間の中で実行するのは非常に困難でした。彼女とチームにとって、大変な仕事だったと思います。

映画の終盤に登場するウェディング・ドレスは、私が人生で着た衣裳の中で最も美しいものでした。彼女はディテールの名手ですから、細部まで作り込まれていても驚きません。ベラがパリで着用するケープはラテックス製で、カラーパレットや素材はすべて深く考え抜かれたもので、ベラが経験したことや成長していくさまにインスピレーションを受けています。見事な出来栄えでした。映画の衣裳はとにかく豪華で、この映画の他のすべてのものと同じように、とても特別なのです。

ランティモス:ホリーと話した際、私たちは衣裳についても、この世界観をデザインしたことと同じアプローチを取りました。その時代からインスピレーションを得つつ、他の多くの時代からも着想を得ているような感じです。話し合いを始めたとき、ホリーは70年代の生地やボタン、プラスチックも起用しました。とてもユニークな生地を使い、大げさなシェイプにしました。

ある時点では、男性にパッド入りの衣裳を着せようともしましたが、少しやりすぎであることが分かりました。見慣れたものでありながら、独自である、この非常にユニークな世界を作り出そうとする探求は、常に続いています。

ラミー・ユセフは「毎回、完璧な演技を見せてくれる」

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――では、ラミー・ユセフさん(マックス・マッキャンドレス役)との仕事はどうでしたか?

ランティモス:ラミーはとても聡明で面白く、優しい人です。そのすべてが彼の演技に表れていると思います。正直、彼はこの役にぴったりだと思いましたし、シーンのラストショットを毎回ワンテイクで決めてくれる彼を頼りにしていました。

ストーン:彼は毎回、完璧な演技を見せてくれると分かっていましたから。

ランティモス:彼ならできると思っていましたし、毎回その期待をかけていました。彼は素晴らしい人です。一緒に仕事ができて光栄でした。

マーク・ラファロが何かをするたびに「笑わずにはいられなかった」

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――マーク・ラファロさん(ダンカン・ウェダバーン役)はどうでしたか?

ランティモス:私でさえ、彼がどれほど面白いか想像がつきませんでした。彼が面白い人だと分かっていたからこそ、彼にこの役を依頼しました。リハーサルの初日から彼はとても愉快で、彼が何かするたびに私たちは笑わずにはいられませんでした。とても面白かったです。彼は、私が彼に求めたり想像したりできなかった何かを見つけて、それを捉えてくれました。それは私を大いに楽しませてくれて、旅全体のとても大切な部分となりました。

ストーン:マークはとても献身的で面白い人です。マークと一緒にいるのはとても楽しかったです。彼はほとんどの場合、演じている人物のニュアンスを持ち合わせているので、プロセスを通じて彼が苦悩する瞬間がたくさんありました。時が経つにつれ、彼はダンカンの狂気とユーモア、私たちが一緒にしたすべてのことにどんどん傾倒していったのです。

ウィレム・デフォーは“何にでも挑戦する”「素晴らしいチームメイト」

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――ウィレム・デフォーさん(ゴッドウィン・バクスター博士役)についても教えてください。

ランティモス:ウィレムはセットにいることを好みます。ですから、撮影監督のロビー・ライアンは彼のことが大好きなのです。一緒に仕事をする俳優がいつもそこにいてくれますから。

ウィレムはいろいろな意味でとても面白い人ですし、何にでも挑戦します。彼の役柄については、必ずしもどうなるかは分かりませんでしたし、彼にはメイクアップの負担もありました。何時間も費やさなければなりませんでしたが、彼は決して文句を言いませんでした。私は彼の役柄を、とても穏やかで複雑なものにしたいと考えていました。彼が成し遂げたことをするのは、本当に難しいことだと思います。彼と一緒に仕事ができることは喜びでした。彼はいつもそばにいたいと思えるような人なのです。

ストーン:彼はとても楽しい人でもあります。遊び心があり、明るく、気楽な気持ちにさせてくれます。彼は業界で多くの経験を積んできましたし、何かを決めつけることもありません。とても自由ですから、一緒にいるととてもいいエネルギーになりますし、寛大で存在感のある俳優だと思います。素晴らしいチームメイトだと思います。

●音楽の重要性 ジャースキン・フェンドリックスが“もたらしたもの”とは

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――最後にサウンドドラックについての質問です。ジャースキン・フェンドリックスが作曲家として“本作にもたらしたもの”を教えてください。

ランティモス:初めてジャースキンのアルバムを聴いたとき、本当に素晴らしく、メロディからジャンルに至るまで、これまでにない音楽性だと感じました。この映画で作り出そうとしている世界と本能的に通じるものを感じました。直感的な何かが「もしかしたら彼こそが、私たちが作っているこの映画に合う音楽を作ってくれるかもしれない」と私に告げていたのです。

彼にアプローチしてみると、クラシック音楽の訓練も受けていることが分かりました。バイオリンやピアノを演奏し、さまざまな種類の音楽を作曲します。彼は映画の仕事をしたことがありませんでした。私は彼に脚本を読んでもらい、その後脚本を見ずに私たちの会話に基づいて音楽を書き始めるように頼みました。

当初、私たちは何も撮影していませんでした。リサーチから得たイメージと、いくつかのセットデザイン、衣裳があっただけで、何も撮影していなかったのです。

彼は音楽を書き始め、それを私たちが聴き始めると、私は映画を撮影するときに必要なものを想像するようにしました。このプロセスを何度か繰り返し、撮影に入るまでずっと続けました。その音楽をすべて使い、シーンに合わせて音楽を編集しました。結局、彼は新しい音楽を作る必要はありませんでした。彼が何も見ないうちに作曲したものを使ったのです。それが映画で使われています。

音楽は、映画の中のもう一人の登場人物のようなものです。私にとって音楽は、シーンやストーリーとは異なるものである必要があり、何かを付け加え、別のレイヤーとなるべきものです。たとえ矛盾するものであっても、あるいはそれを別の高みへと導き、予想外の形で引き立てるものであっても、です。ジャースキンは非常に優秀で、それを見事にやってのけました。

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