オスカー受賞作「イーダ」ポーランド気鋭の映画批評家が解説
2015年6月7日 07:30

[映画.com ニュース]東京・京橋の東京国立近代美術館フィルムセンターで開催中の「EUフィルムデーズ2015」で6月6日、第87回アカデミー賞外国語映画賞を受賞したポーランド映画「イーダ」が上映され、グディニャ・ポーランド映画祭のアーティスティックディレクターで批評家のミハル・オレシュチク氏が来日し、作品について語った。
共産主義体制のポーランドを出て、英国を拠点にヨーロッパ各国で映画を撮り続けてきたパベウ・パブリコフスキ監督が初めて母国ポーランドで撮影した作品。60年代初頭の戦後ポーランドを舞台に、若い修道女の隠された過去と成長を、モノクロ&スタンダードの映像美で叙情的に描いている。
オレシュチク氏は、本作が「ポーランドの人々の戦争の記憶のトラウマが立ち返る」作品と言い、テーマは「ヒロインのアイデンティティ探しと、過去のポーランドと将来を探すポーランド」だと解説する。修道女イーダと酒におぼれ奔放な生活を送るおば、修道院や農家という戦前の建物と戦後のモダニズム建築、クラシックとジャズなど、劇中では対極の存在が映し出されることに触れ、「2つの極で揺れ動くのは、東のポーランドで生まれ、西側のイギリスで映画のキャリアをスタートし、そして本作でポーランドに戻ってきたパブリコフスキ監督そのもの」と語る。
ヒロインのイーダは、初めて会ったおばから自分がユダヤ人であることを明かされ、出生の秘密を知ることになるが、このエピソードは国民の大半がカトリック教徒であり、その一方で大規模なユダヤ人コミュニティを擁し、戦中は両者の間で緊張関係が生まれたポーランドの歴史を象徴している。オレシュチク氏は「この映画が訴えかけることがあるとすれば、対話の必要性ということではないでしょうか。これまで複雑だったポーランドとユダヤの関係をより良いものに変えていくこと。ポーランドでそうした対話はますます活発に行われていますし、その証拠がこの映画がつくられたこと」と力を込める。
また、観客から寄せられたラストシーンの解釈についての質問には「作品の大半は固定カメラで計算された構図で撮られているが、ラストは手持ちカメラで撮影している。イーダの揺れ動くようなアイデンティティを表現したのでは」と持論を述べ、パブリコフスキ監督の新作が、音楽家バッハの伝記映画かソ連で秘密警察を作ったポーランド人の伝記映画のどちらかになる予定だと明かした。
「EUフィルムデーズ2015」はヨーロッパの映画製作者の幅広い才能と、EUの文化的多様性を紹介する映画祭。東京国立近代美術館フィルムセンターでの会期は6月21日まで。7月1日より京都文化博物館に巡回する。上映作品は公式サイト(www.eufilmdays.jp/)で紹介している。
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