イーダ : 映画評論・批評

メニュー

イーダ

劇場公開日 2014年8月2日
2014年7月22日更新 2014年8月2日よりシアター・イメージフォーラムにてロードショー

美しい構図の陰で過去が発掘され、苦痛が変容していく 

四角い黒白画面の下部に人物の姿が沈められている。頭上には大きな空白が生まれる。まるで教会の内部にいるように見えるが、そうとは限らない。他の空間でも、この構図はしばしば出現する。それも固定ショットで。

すると、人物が小さく見える。小さいだけでなく、ぽつねんとした感じが漂う。身体と心の関節がどこかで大きく外れている。

画像1

イーダ(アガタ・チュシェブホフスカ)は最初、アンナと呼ばれている。18歳の戦争孤児で、ほどなく修道女になる予定だが、音信不通だった叔母ヴァンダ(アガタ・クレシャ)に会うと「イーダ」と呼びかけられる。イーダとはユダヤ人の名前だ。1962年、社会主義時代のポーランド。50年代初頭、叔母は人に恐れられる検察官だったが、いまは酒と煙草と束の間の情事に逃げ込んでいる。

そんなふたりが4日間の旅に出る。イーダの両親が命を奪われた経緯を探りにいくのだ。無垢で信仰心の厚い少女と、シニカルで無神論者の中年女。過去は発掘されるのか。ふたりの女が抱える不穏や苦痛は変容するのか。

監督のパベウ・パブリコフスキは、ドライヤーやブレッソンを思わせるタッチで、80分間のロードムービーを織り上げる。構図の美しさで観客の眼を惹きつつ、登場人物への感情移入を禁じつづけるのだ。抑制されたこの距離感が、ふたりが行動する小宇宙の後背地を際立たせる。そんなキャメラが映画の終盤、急に移動しはじめる瞬間は見逃さないでいただきたい。たとえかりそめの解放であれ、外気を胸に吸い込んだイーダは、新たな受難を恐れぬ覚悟を定めたのではなかったか。

芝山幹郎

関連コンテンツ

関連ニュース

関連ニュース

フォトギャラリー

DVD・ブルーレイ

映画レビュー

平均評価
3.5 3.5 (全11件)
  • イーダ 不思議な映画。ポーランドの歴史が影を落としたりするけれど、なんかアロイシスパーカーみたいなアルト吹きがnaimaをかましたり、ストレンジャーザンパラダイスを思わせるロードムービーみたいな瞬間があ... ...続きを読む

    ssspkk ssspkkさん  2015年10月9日 00:52  評価:3.5
    このレビューに共感した/0人
  • 覚悟。 ネタバレ! ...続きを読む

    ハチコ ハチコさん  2015年3月30日 20:47  評価:4.0
    このレビューに共感した/1
  • 沈黙と余白 沈黙と余白の映画。 優れたモノクロの写真集を見ているような美しい映像の連続。すべてのシーンが美しい。どのショットも静謐で寡黙なのに物語性がある。簡素なのに豊かな物語。 この映画その映像におい... ...続きを読む

    映録助 映録助さん  2015年2月25日 15:38  評価:4.0
    このレビューに共感した/0人
  • すべての映画レビュー
  • 映画レビューを書く
このページの先頭へ

最近チェックした履歴

映画の検索履歴

他の映画を探す

映画館の検索履歴

他の映画館を探す

特別企画

新作映画評論

新作映画評論の一覧を見る
Jobnavi
採用情報