松尾スズキ、大人計画をやっていなかったら「のたれ死に」
2015年3月30日 22:20

[映画.com ニュース] 松尾スズキが3月30日、東京・早稲田奉仕園で行われた監督作「ジヌよさらば かむろば村へ」の大学生向けトークセッションに出席。これまでの人生経験や映画人としての思いをたっぷりと語った。
「恋の門」以来、約10年ぶりに松尾監督と松田龍平がタッグを組んだ。松田との再タッグは「2枚目俳優に小ギレイにやられてしまうと、安っぽいB級に向かってしまうので、ふだんはそんなに笑いをやらない主役(級)がいいなと思った。10年ぶりというのも悪くないし、話題になるんじゃないかといういやらしい考えもあった(笑)」と実現。「恋の門」撮影時は「使い勝手のいい俳優ではなかったが、その分伸びしろがあるという感じ」だったそうで「10年経って、何もしなくても絵が持つし、そこはかとない色気がある。良い風に成長したな。生まれ持った、僕らには出せない存在感がある」と賞賛した。
映画ではお金恐怖症の元銀行マンが巻き起こす騒動を描いたが、「若いころ貧乏もしたし、身内も金で失敗した人もいた。大事だけど、諸刃の剣」としみじみ。大学卒業後、会社勤めを経て、劇団「大人計画」を設立した。退職後、早稲田のマクドナルドで働いたこともあるそうで、劇団の道を歩んでいなかったら「のたれ死にですよね。東京に出てきてサラリーマンをやって、つくづく自分は組織の中で生きていけない人間なんだと思い知らされた」と笑いを誘った。
監督をはじめ俳優、演出家など幅広く活動する原動力は、「のたれ死むまで追い込んで最後にたどり着いたところなので、背水の陣というかある種の妄念。それだけの根性がないとやっていけない」ときっぱり。そして「(監督作)3回目というのは、ひとつの区切りかなと思う。前2作は自分で企画を出して撮ったのですが、今回は持ち込み。そこそこプロの仕事ができたかなと思うので、映画に対する意識が変わるかな」と振り返った。
この日、学生からも質問が寄せられ、松尾監督は「今もっとやりたいこと」として、「テレビの演出をあまりやっていないので、テレビもやってみたい。アニメとか、通販番組とかね」とにやり。芝居と映画の違いについては、「映画はフィックスされてコンプリートしていき、最終的に演出したものが監督のものになるけれど、芝居の場合は演技の放流。やったら終わりという潔ぎ良さ、瞬間瞬間に消えていくものへのはかなさと喜びを感じてやっている」と持論を展開。そして、社会に飛び立つ前の学生に「必ず自分の落としどころ訪れる。どこかにガチッと一致することはなく、状況の変化で着地点は動いているんだということを認識していれば、不意の出来事にとらわれないのでは」とエールを送った。
「ジヌよさらば かむろば村へ」は、4月4日から全国で公開。
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