田原総一朗、アラン・レネ「夜と霧」は「ヒトラーの恐ろしさが鮮烈に伝わる作品」
2015年3月2日 14:15
[映画.com ニュース]東京・千代田区の岩波ホールで3月1日、世界で初めてアウシュビッツでの大量虐殺を告発したフランスの巨匠アラン・レネ監督によるドキュメンタリー「夜と霧」(1955)が35ミリ上映され、ジャーナリストの田原総一朗氏がトークイベントに参加した。
田原氏は、同作について「僕だったら生き延びた人、元ナチスの人間に取材をする。しかしアラン・レネはそれをやらず、ストイックに収容所だけを映し、ナレーションだけで作った。ユダヤ人を皆殺しにしようと考えた、ヒトラーの恐ろしさが鮮烈に伝わる作品」と力強く語った。
また、同作製作年と自由民主党の結党が同年であることが興味深いと話し、「戦後70年、日本は戦争の総括をしないままにきてしまった」といい、「ドイツは戦争の総括がができたが、日本はヒトラーにあたるような人物がいなかったので、責任のなすりつけが起きた」と日本の戦後処理の問題を指摘した。
レネ監督の遺作で、大人の恋愛を扱った軽快なタッチの「愛して飲んで歌って」の感想は「コミックな作品。レネのペースに巻き込まれて、振り回された」といい、「二十四時間の情事」「去年マリエンバートで」など難解と言われる代表作の作風について「『夜と霧』がわかりやすい映画だったので、それが恥ずかしくてわかりにくい作品をつくったのではないか」と持論を語った。
今年は戦後70年、アウシュビッツ強制収容所解放70周年にあたり、同イベントは昨年死去したレネ監督の1周忌を追悼する目的で企画された。この日に行われた2度の上映はすべて満席となり、観客の関心の高さが伺えた。「愛して飲んで歌って」は公開中。