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製作のきっかけはポル・ポト時代を生き延びた母への思い カンボジア新鋭女性監督に聞く

2014年10月31日 14:40

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(右から)ソト・クォーリーカー監督、ディ・サーベット、マー・リネット
(右から)ソト・クォーリーカー監督、ディ・サーベット、マー・リネット

[映画.com ニュース]第66回カンヌ映画祭ある視点部門最優秀作品賞を受賞したリティー・パニュ監督の「消えた画 クメール・ルージュの真実」で話題のカンボジア映画界から、期待の女性監督のデビュー作「遺されたフィルム」が第27回東京国際映画祭・アジアの未来部門でワールドプレミア上映された。ポル・ポト派に蹂躙された母国の映画史を発掘し、新たな形の“再生”を試みる現代に生きる少女の物語だ。このほど新鋭ソト・クォーリーカー監督、サンクム時代から活躍する名女優ディ・サーベットと主演の若手女優マー・リネットらが来日。クォーリーカー監督は、つらい時代を経て女手ひとつで育ててくれた母親を思い、時折涙を浮かべながら、作品へこめた思いを熱く語ってくれた。

――監督にとって長編デビュー作です。映画に携わるようになったきっかけ、ポル・ポト時代を題材に選んだ理由を教えてください。
ソト・クォーリーカー監督:(以下、クォーリーカー監督):2000年を越えた頃から、カンボジアに海外からの情報がたくさん入ってくるようになり、とりわけポル・ポト時代のことが新聞やテレビで報道されるようになりました。そんな中で私は海外のジャーナリストたちと仕事をするようになり、ポル・ポトの兵士や幹部らにもインタビューし、通訳を務めました。クメールルージュに関する、あらゆる国からの依頼を一手に引き受けてきたのです。しかし、クメールルージュはカンボジアの話ですが、それを語るのはこれまで外国人ばかりでした。このような仕事を長年やってきて、自分自身で語りたい、表現したいという思いが強くなったのです。カンボジアの話なのですから、カンボジア人自身がカンボジアの言葉で語らなければならないと思ったのです。
――1973年生まれの監督ご自身はポル・ポト時代を経験していませんね。
クォーリーカー監督:私と妹は母親しか知りません。母しかいないということで、私たち姉妹がつらい思いをすることがないように育ててくれました。母は大きな愛情を持って私たちを育てましたが、昔どんなにつらいことがあったのか、私たちに話すことはありませんでした。娘たちは現代に生きているのだから、過去にとらわれてつらい思いをしないように、母は私たちを精神的に保護してくれたのです。ですので、私たちも母に昔はどうだったのか聞くことはしませんでしたし、母の方からも私たちに何も話はしませんでした。それは私たちを守ることだったと思うのです。
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――映画はポル・ポト時代の前後を含むカンボジアの歴史と文化、そして主人公の若者たちが生きる現代社会を映し出した作品ですね。
クォーリーカー監督:映画ではカンボジアの歴史と自分の家族の歴史、過去に自分の家族にどんなことが起きたか、ポル・ポト時代に何があったのかを深く知って、表現したいと思いました。今の若い世代はカンボジアの歴史をほとんど知りません。MTVだったり、インターネットなど新しい手段で、楽しむことばかりを考えています。ポル・ポト時代については、カンボジア人がカンボジア人を殺したということを恥じ、それ以上知識や理解を深めようとはしないのです。
私たちの国はポル・ポト時代から始まったわけではなく、その前にはアジアの広範囲を占めたアンコール時代が何百年も続き、大きな寺院が作られたり、芸術、文化、宗教が発展した時代が長くありました。そこを改めて見てほしかったのです。カンボジアの若者には良いことも悪いことも含め自国の歴史を知ってもらい、自分は何者なのか、どこから来たのかということを理解して、プライドを持ってほしいのです。
――名女優ディ・サーベットの起用について
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クォーリーカー監督:(ポル・ポトの前の)サンクム時代に女優として活躍し、現代では精神に問題を抱えた母親という設定から、ディ・サーベットをすぐにイメージしました。彼女はサンクム時代で一番有名な女優だったからです。私自身も、彼女が昔出た映画「怪奇ヘビ男」(1970)を見て非常に素晴らしい女優だと思っていたので、すぐに起用を決めたのです。彼女は脚本を読んで、非常にオリジナリティがあると言ってくれました。カンボジアで最近作られている映画は、外国のマネのようなものが多いからです。
――(女優ふたりに)どのような女優のキャリアを重ねてきましたか? また、今作に出演されていかがでしたか?
ディ・サーベット:ポル・ポト以前、16~17歳の頃に出演した作品は人生そのものを描いた作品が多かったですね。最初に映画に出ないかと誘われた時に私は断ったんです。でも、姉が熱心に勧めたので出演することになったのです。一番若いときに撮った作品は、人生の悲しみを題材にしたものでした。その最初の作品の撮影前に母親が亡くなったので、劇中の悲しい場面で母親のことを思い出して泣いたら絶賛されたのです。それ以来、悲しい役が来るようになりました。悲しい場面になると、役に入り込むと同時に母親のことを思い出すので、真に迫った演技になるのです。(今作は)タイトルが変わっていると思いましたが、脚本を読んだら、真実の話だと思えたので、演じるのが楽しかったです。本当に脚本に心から満足したので、全力で演じました。
マー・リネット:カンボジアの若い世代の役者として、この作品にかかわることができて非常にうれしいです。このおかげで、日本に来ることができ、日本の皆さんに作品を見ていただくことができたのですから。

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