ベネチア金獅子はロイ・アンダーソン監督作!塚本監督「野火」は無冠
2014年9月8日 12:50
[映画.com ニュース] 第71回ベネチア国際映画祭が9月6日(現地時間)の授賞式をもって終了した。栄えある金獅子賞には、スウェーデンのロイ・アンダーソン監督作「A Pigeon Sat on a Branch Reflecting on Existence」が輝いた。スウェーデン映画がコンペティションに参加するのは25年ぶり、金獅子受賞は史上初となった。日本からコンペティションに参加した塚本晋也の「野火」は、無冠に終わった。
「散歩する惑星」「愛おしき隣人」など、その特異な映像スタイルで知られるアンダーソンは、「受賞にとても感動している。自分は特にビットリオ・デ・シーカの『自転車泥棒』から影響を受けた。素晴らしい映画の歴史を持つイタリアの映画祭に関われたことはとても光栄だ」と満面の笑顔で語った。本作も最近の作品同様、小話のようないくつかのストーリーの集積。セリフは少なく、クラシックな音楽をバックに、うらぶれた人々の日常がメランコリックかつユーモラスに描かれ、表面的なスタイルを超えてヒューマニティを感じさせる。
本作とともに金獅子の下馬評の高かったジョシュア・オッペンハイマーのドキュメンタリー、「The Look of Silence」は審査員グランプリに輝いた。“共産党狩り”と呼ばれたインドネシアの大虐殺で兄を殺された弟が、当時の加害者やその家族を訪ね、話を聞く。審査員のティム・ロスは、「とてもピュアな映画で見応えのある傑作」と絶賛。授賞式に参加できなかった監督はビデオでコメントを寄せ、「この事件についての共同責任を追求することは大切。ベネチアの観客の素晴らしいリアクションに、とても心を動かされた」と語った。
銀獅子監督賞に輝いたのは、映画祭の終盤に登場したアンドレイ・コンチャロフスキーの「The Postman’s White Night」。素人の人々のリアルな生活を追った様子は限りなくドキュメンタリーに近い。審査員のフィリップ・グレーニングは「ドキュメンタリーとフィクションの境界の曖昧さを思い出させてくれる。アンダーソンの作品もドキュメンタリーのようなクオリティがあり、受賞に関して特にドキュメンタリーとフィクションを分けて考えることはなかった」と述べた。
男優賞と女優賞はイタリア映画「Hungry Hearts」でカップルを演じたアダム・ドライバーとアルバ・ロルバケルにわたった。出産を機に精神を病んでいく妻と夫の確執が、ふたりの迫真の演技によって描写される。脚本賞はイラン社会の暗部をいくつかのエピソードによって語った「Tales」に、審査員賞はトルコの若手カーン・ミュデジの「Sivas」が獲得。新人俳優に送られるマルチェロ・マストロヤンニ賞にはフランス映画「The Last Hammer Blow」のロマン・ポールが輝いた。
審査委員長のアレクサンドル・デスプラは、今年のセレクションのレベルの高さに触れ、そのなかで突出したものが賞に輝いたこと、無冠に終わったものも優れた作品が少なくなかったことを強調した。「野火」に関しては、塚本監督の才能を称え、音楽が印象的だったことに触れながら、結果的に話し合いのなかで残らなかったことを明かした。一方、審査員のジョアン・チェンは本作にコメントし、「第二次大戦について日本は公式には遺憾の意を表明していないが、(そんな状況のなかで)この映画はとても大切な作品だと感じたし、とても心を動かされた」と語った。
オープニング作品として上映されたアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥの「バードマン」や、評価の良かった中国映画「Red Amnesia」が無冠に終わったことへの不満の声もあったものの、今年の授賞は結果的にインディペンデントを擁護する、サプライズの少ないものになった。(佐藤久理子)
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