塚本晋也「野火」にベネチアが熱狂 加瀬亮は「自由が丘で」公式会見に臨む

2014年9月3日 12:25


レッドカーペットを練り歩いた塚本晋也監督(中央)ら
レッドカーペットを練り歩いた塚本晋也監督(中央)ら

[映画.com ニュース] 第71回ベネチア国際映画祭で9月2日(現地時間)、コンペティション部門に入った塚本晋也の「野火」が公式上映され、日本からかけつけた塚本監督、キャストのリリー・フランキー中村達也森優作、作曲家の石川忠がそろってレッドカーペットを歩いた。

すでに何度もベネチアに出席している塚本監督の人気は高く、前日のプレス上映で入場できないほどの混雑ぶり。冒頭のクレジットが出るとともに歓声や拍手が起こり、上映後も拍手が鳴り止まなかった。公式上映では、上映前こそ静かだったが、エンドクレジットが終わらぬうちに拍手が沸き起こり、ゲストの面々は感無量の表情となった。

大岡昇平の同名原作の映画化に20年来執着していたという塚本監督は、観客のリアクションに「もっとどーんと重い反応を覚悟していただけに、ほっとしました」と語った。リリーも「ベネチアの観客の映画に対する思い、理解、そして塚本監督へのリスペクトを感じました。監督のファンも、今回新しい塚本さんの顔を見たなという表情をしていたように思います」と現地のビビッドな反応に感動を隠せない様子だった。

第二次世界大戦の終戦を前に、フィリピンの孤島に取り残された兵士たちの壮絶なサバイバルを描いた「野火」は、すでに市川崑により1959年に映画化されている。市川版が精神的なモラルにこだわったのに対し、塚本版はよりダイレクトな映像描写を強調し、戦場のむごい殺りくシーンと、兵士を取り巻く自然の壮大さやスピリチュアリティを対比させ、愚かな存在としての人間の姿を浮き彫りにした。腕が飛んだり、内蔵がはみ出るバイオレントな描写もあるため、拒絶反応を示すジャーナリストがいた一方、「これほどパワフルな戦争映画は稀」と語る批評家も。とくに地元イタリアのプレスの評価が高かった。

「自由が丘で」チームも登場
「自由が丘で」チームも登場

オリゾンティ部門では、同日午後に、加瀬亮の主演するホン・サンス監督作「自由が丘で」の公式上映が行われ、監督、加瀬と相手役のムン・ソリらが参加。大好きな監督のひとりであるというサンス作品に念願かなって参加することができた加瀬は、上映後にこう語った。「サンス監督の映画は一見シンプルにみえてさまざまなことが表現されていると思います。欠点だらけの人間をそのまま受け入れているから、共感や感情移入をしやすい。自分で映画を見て、ちょっとした表情にもこれまでの自分にはなかったようなものが映し出されていて意外でした。弱さやだらしなさも含めて、この主人公は自分自身でもあると思わされるところがありました(笑)」(佐藤久理子)

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