柳下毅一郎氏と原正人氏がトークイベントで“ホドロフスキー世界”を解析
2014年6月16日 14:00

[映画.com ニュース] 「エル・トポ」などでカルト的人気を誇る鬼才監督アレハンドロ・ホドロフスキーが企画し、“映画史上最も有名な未完の大作”と言われる「DUNE」を追ったドキュメンタリー「ホドロフスキーのDUNE」が6月14日、封切られた。公開を記念し、都内の劇場では映画評論家の柳下毅一郎氏と翻訳家の原正人氏がトークイベントを行った。
芸術家のダリやミュージシャンのミック・ジャガーら各界の才能を結集させ、映像化不可能と言われた米作家フランク・ハーバートのSF小説「デューン 砂の惑星」の映画化を試みたホドロフスキー。ドキュメンタリーは、関係者のインタビューや膨大な資料を交えて、その失敗のてん末を描く。
「DUNE」の企画がきっかけで誕生したメビウス作のバンド・デ・シネ(フランスの漫画の意)「アンカル」「メタ・バロンの一族」の翻訳を手がけた原氏は、映画について、ホドロフスキーの「人生で何か近づいて来たら“YES”と受け入れる」という言葉に「共感した」と語る。一方、柳下氏は数年前から同ドキュメンタリーの存在を知っていたが「見てみると、思っていたのと違う驚きがあった。こいつは本気だ! 頭がおかしい(笑)。何より面白かった」と打ち明けた。
なぜ「DUNE」は失敗したのか、ホドロフスキーは何を作りたかったのかという疑問に、原氏はチリ出身でフランス人のホドロフスキーとハリウッドの論理の違いを挙げ「しがらみや『こういう方法に落とし込む』というのがハリウッド的方法。彼はそういうのを考えずに『何が何でも作る』というタイプ。そりゃ失敗しますよ(苦笑)」と解説。柳下氏は「見る者の意識から変えたい」というホドロフスキーの言葉は、完成した映画のみならず、不可能に近いこの映画作りの過程をも含んでいると指摘し、「『意識を変える』というのはメタファーではなく、本気でそう言っている。彼にとってできあがるべき映画は宇宙SF超大作なんかではなく、もっと違ったもの――スクリーンに収まるものではなく、外側、現実を変えていくようなものだったんだと思う」と壮大過ぎるスケールに言及した。
原氏と柳下氏のトークは専門的な知識や推察、ホドロフスキーの人柄や印象までを交えながら、様々な方向へ及び、公開初日の客席を埋めた熱烈なホドロフスキーファンは大いに盛り上がった。「ホドロフスキーのDUNE」は現在公開中。渋谷パルコで「アレハンドロ・ホドロフスキー展『芸術に許可が必要だと?』」が6月30日まで開催中のほか、ホドロフスキー23年ぶりの監督最新作「リアリティのダンス」も7月12日から公開の予定だ。
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