手描きアニメーションに世界が喝さい!ピクサーの堤大介監督に聞く
2014年6月5日 15:50
[映画.com ニュース] 米国在住の堤大介と日系人のロバート・コンドウが共同監督したショートフィルム「ダム・キーパー(The Dam Keeper)」が、東京と横浜で開催中の「SHORT SHORTS FILM FESTIVAL & ASIA 2014」で上映されている。2人は、「トイ・ストーリー3」や「モンスターズ・ユニバーシティ」など、ピクサー・アニメーション・スタジオ製作の劇場用アニメーション大作でアートディレクターを務めてきた注目の存在だ。堤監督は、「ダム・キーパー」をどのようにして生み出していったのか、話を聞いた。
「ロバートと一緒に何かを作ってみたいということしか考えていませんでした」と製作経緯を明かす堤監督。ピクサーでの製作を通じ、画風や哲学など、さまざまな点で気が合うと感じたコンドウとのタッグをもう一度実現したいという思いが、「ダム・キーパー」始動の原動力となった。
だが、周囲から冷やかされるほど仲がよかった2人でも、製作段階では激しく衝突した。「僕にとっていまだかつて、彼ほど『かなわない』と思わせられた人はいません。そんな劣等感から、知らず亀裂を生じさせてしまっていたんですね。そのことを、正直に彼にぶつけたんです。すると、実は彼も、僕に対して同じように思っていたと打ち明けてくれた」。その瞬間、両者のわだかまりは氷解、腹を割って話し合うことで解決するよう、共通見解が構築されたという。
しかし、2人にとって初の監督作業であり、完成までの道程には困難も多かった。手描きアニメーションでのノウハウもなく、すべてが手探りの状態。堤氏は「自分たちの知らないことを解明していく作業が一番楽しかったですね」とにこやかだ。また、現場を経験したことがなかったボランティアスタッフが急激に成長を遂げる様子から学ぶことも多かったという。「僕自身も、ここで停滞していてはいられない」
ストーリーが決定するまでには、3つの準備稿を経たという。ひとつは老鉱夫と犬の話で、老鉱夫が鉱山で不思議な石を見つけ、それによって富を手にするというもの。もうひとつは、大気汚染で自然が滅んでしまった世界が舞台。そんな世界に、ひとり樹木を育てている老人がいて、その謎を解明するために科学者の少女が会いに行くというストーリー。最後は、いつも煙が出ていている家に住む老人の話。人々から大気汚染の原因になっていると思われているが、実は街から出る汚れた空気を老人の家が吸い込んでいた、というものだ。「英語圏でいうアンサンヒーロー(評価されない英雄)のお話を描きたかったんです。『ダム・キーパー』でも核となっているテーマは同じです」と、堤氏は語る。
今後の展開としては、(これまでのオファーを含め)全世界32の映画祭に出品を予定。また「金儲けをしない」という理念のもと、ピクサーや映画プロデューサー・石井朋彦氏らと相談しながら、映画祭のみならず広く世に公開することも検討中だという。(トーキョーアニメニュース)
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